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- 8章 -
- 休日 -
しおりを挟む「・・・・・・」
「気持ちは分かるけど、風呂場は滑りやすくて危ないから走っちゃ駄目だ。わかったか?」
言い聞かせる様に妹の両肩に手を乗せると、唐突に鈍い痛みが手首周辺に走った。どうやら打ち所が悪かったらしい。
『骨折、程じゃないけど…これは結構腫れるやつだ…』
「ごっ、ごめんなさいっ。ごめんなさいお兄ちゃんっ、ごめんなさいぃーっ」
痛みに一瞬ゆがんだ兄の顔を物凄く怒っていると捉えた紗千は、今にも泣きそうになりながら謝罪を繰り返す。
「ちゃんとごめんなさい出来て偉いな。次からは気を付けろよ? じゃぁ、体拭いてお風呂でよう。湯冷めするから」
「うん。ごめんなさい…お兄ちゃん」
なおも申し訳なさそうに謝罪を口にする妹の頭を撫で、共に脱衣所まで来たのは良いが思いのほか痛みが強い。いつもはこのまま着替えを手伝って髪の毛を乾かして布団まで連れて行くところなのだが…
「紗千、今日は一人でお着替えしてみようか?」
「…今日は一緒にお着替えしてくれないの?」
「紗千ももうすぐ5才だろ。もう立派なお姉さんだ。ちゃんとお着替えできたら、今日は特別に寝る前にデザートを一緒にたべよう?」
「デザート!?うんっ!1人でお着替えする!!」
助かった…子供が単純で良かった。
もぞもぞと苦戦しながら着替えをする紗千を横目に、自身も着替えながら次の手を考える。
『申し訳ないけど…母さんに乾かしてもらうか』
リビングからは楽しそうな声が聞こえていたため申し訳なく思うが、背に腹はかえられない。そんな事を考えて居ると不意にノックの音が響いた。
「がっくーん! 入って平気ー? トイレ借りたいんだけどー」
トイレは脱衣場からつながっている為、2人が着替えているこの場所に入らなければ行くことは出来ない。
返事をする前に妹を見ると、一応着替えは終わっていた。…裏表が逆だが。
「あぁ」
短く返事をすると『しつれーい』と気の抜けた声と共に植野が脱衣所に入ってきた。
「あれ?紗千ちゃんパジャマぎゃ・・・」
逆じゃない?
と言い掛けた言葉は、鈴橋の眼力によってさえぎられた。
「さっさと用済ませよ」
「うぃ」
トイレへと姿を消した植野を見送ってから、小さくため息をつく。初めての1人でお着替えでこうなってしまうのはしょうがない。
「紗千おいで。上着逆。手伝ってあげるから」
「えっ!本当だっ…! でもデザート…」
「大丈夫。ちょっと惜しかっただけだ。よく頑張ったな。着替え終わったら一緒に食べよう」
「うん!」
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