Pop Step ☆毎日投稿中☆

慰弦

文字の大きさ
上 下
73 / 1,055
- 8章 -

- 休日 -

しおりを挟む


「すいません、さっきの所で忘れ物したみたいです」

「え? 忘れ物?? 珍しいね」

「僕だってたまにはうっかりする事だってありますよ。では、気をつけて帰ってくださいね」

「うん、ありがと! あっきーもね」

「えぇ、ありがとうございます」


少し恥ずかしげに笑った班乃は、じゃあと片手をあげ今来た道を戻って行く。


「……」


そんな後ろ姿を見送りながら、不信感が募っていく。

さっきの人は本当は知り合いだったんじゃないか。

自分には知られては困るから、咄嗟に人違いだと話を合わせたんじゃないか。

自分を見たとたん、人違いだと認めた女性の不自然さ。

疑問を抱かずには居られなかった。

だとしたら、班乃と先程の女性はどう言った知り合いなんだろうか?

あからさまに同年代ではなく、大人であり、夜が似合いそうな独特な雰囲気をもつあの女性と、どんな知り合いかなんて…

もしかして班乃は……


嫌な考えに行きかけた思考を、頭を振って書き消した。そんな筈はない。班乃にかぎって。

さっきのはただの人違いで
班乃が忘れ物したのだってただの偶然。

そう結論付け、安積は自宅へと続くホームへと足を向けた。


その頃…


植野の首を突如容赦なく人一人分の体重が襲った。


「っ!!」

「こら紗千!」


それを見た鈴橋は慌て紗千、妹を植野から引き剥がした。


「やーっ!」

「やーじゃない!植野を殺す気か!」

「あらあら、うふふ」


植野達は映画鑑賞を終えたあと、今度は鈴橋の自宅へと来ていた。

仕事の都合上、一人で夕食を取る植野を、鈴橋は自宅に呼んだのだ。


お昼ご飯を貰った上に夕食まで…と遠慮したのだが、そんな事気にするな、きっと母さんも喜ぶ、と鈴橋に言われたら断る理由はない。なぜ自分が行くと学母が喜ぶのかは分からないが。

そんなこんなで、今は鈴橋の自宅に居るわけだ。

そしてこの状況。

何度か保育園の手伝いをしていたので、鈴橋家の人々とは面識もあったし、元々人当たりの良い植野は紗千に物凄くなつかれていた。

紗千にしてみれば、後ろから抱きついただけなのだが、それがソファーの上から、立っていて油断しきってる植野の、さらに背後から飛び付いたのだから話は別だ。

見事に首を閉められた形となった植野は数回むせ込んだ。


「悪い、大丈夫か?」

「っん、大丈夫大丈夫」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...