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- 8章 -
- 休日 -
しおりを挟む「…そんな事よりっ、母さん寝てないで大丈夫なの?今日も仕事だろ?」
「今日は同伴してから出勤だからもう直ぐでるのよー」
「食われんなよー」
「まっかせといてよっ☆」
ニカッと笑い息子の頭をがしゃがしゃと撫でた若子は、“ 準備準備~♪ ” と陽気に一人言を声にしながら自室へと帰っていった。
まるでライブ会場から外へ出た後のような静けさが辺りを包み、どちらともなく溜め息をつく。
「いつも大変そうだな、若子さん」
「ん?あぁ、まぁね」
鈴橋には言ってないが、若子は夜の蝶だ。おいそれと誰かに言えはしないが、誇りとプライドを高く持ち、30半ばになってもまだまだ現役で働いてる。そんな母を誇らしくも思ってもいた。
とはいえ、これで騒がしい人物から解放されるのは間違いない。せっかくの鈴橋母の弁当を落ち着いて食べれなかったのは 残念だが、気を取り直して映画鑑賞のために部屋の灯りを消し雨戸を閉じた。
映画自体の内容なんてどうでも良かった。植野にとって鈴橋となにかする事に意味があるのだから。
暗い部屋でソファーに並んで座り、静かに映画に引き込まれていく鈴橋を横目で見ながら、直ぐ側にある手を繋げたい衝動を押さえるのであった。
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