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- 8章 -
- 出会い -
しおりを挟む植野がこの学校に入学を決めたのは、棒高跳びで推薦を受けたからだ。
受験がないというのもあったが、なにより大好きな棒高跳びを高校でも出来ると言うのが嬉しかった。
部活を初めてどれぐらいだろうか…恐らく1ヶ月ほどたった頃。校舎から自分を見ている人物に気がついた。
最初は気のせいかとも思ったが、毎日となるいくら鈍感な人だとしても気のせいではないと分かる。
「なんなのあいつ…ってかあれって俺のクラス?」
夕日が反射し光る窓枠は、まるでそこだけ切り取られた様に見え、散って風にのる桜の花びらがより一層一枚の絵のように見せた。
それから更に1ヶ月ほど。その人物は飽きずに頬杖をつき髪を靡かせながらこちらを眺めている。まるで日課とでも言うように。
「…男子校ならではのってヤツ?」
別に差別はないが、自分が?と考えると少しだけ抵抗があるのは事実。
どちらにせよ、毎日見られているのでは気になって仕方がない。同じクラスでもあるし、今ではそれが誰かも分かっている。部活中ではあるが、トイレに行くフリをして思い切って教室へと向かった。
足音を殺しながら教室に向かった植野は、気づかれないように中を覗く。窓側には以前から自分を見ている人物が静かに佇んでいた。
しかしその視線は外でなく、机に置いてある教科書へと向いている。
鈴橋と言っただろうか。周りとはしゃぐタイプでなく、いつも一人で勉強に専念する様ながり勉タイプといった印象だ。だからといって浮いてる分けでなく、そこそこの社交性は持っている…と思う。
いかんせん植野もクラスの行事や提出物などでしか話したことがないので良くは分からないのだ。
ただ、なんとなく話かけるなというオーラが出ているようで、鈴橋の半径1mは体感気温が2度は下がっている気はする。
『そんな奴がなんで俺を?』
いつもはグラウンドから見ているせいか、窓辺に座る鈴橋を教室の中から見るとまるで一枚の絵から抜け出してきた様な感覚に囚われる。
気持ち良さそうな風に髪を靡かせながら、鈴橋は一度グラウンドへと視線を流し、再び机に視線を戻すと何事もなかったかのように徐に目を閉じた。
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