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- 7章 -
- 子供達の救世主 -
しおりを挟む生徒たちが部活動に勤しむ時間帯、鈴橋は誰も居ない教室の窓からぼんやりとある一点を見つめていた。
所属する栽培部では他の部活動よりも早く終わる事はしょっちゅうで、そんな時は決まって教室から外を眺める。
校庭ではいろんな部活が行われている。そして鈴橋が見ているその先では、棒高跳びの生徒が生き生きと走ったり跳んだりを繰り返していた。
「本当、良くやるよな」
教室から棒高跳びの練習が見える事に気がついたのは入学してすぐだったと思う。別に高跳びが好きだったわけではないが、ぼんやりと校庭を眺めていた時、多分一年生だと思われる生徒の跳び方があまりにも綺麗で目に止まって以来、いつの間にか時間が出来ると練習を眺めるようになった。
後々、その生徒に自分がいつも見ている事に気がつかれてしまったわけだが…
「今日も馬鹿みたく元気だな、全く」
そう呆れたようにため息とともに吐き出した言葉とは裏腹、その顔にはうっすらと笑顔が浮かんでいた。
「よっしゃ新記録―っ!!」
緑の分厚いマッドの上に寝転びながら、植野はガッツポーズを空に向かって高々と上げて叫んだ。
「凄いじゃないかっ」
「まだまだっ! なんか今なら空だって跳べる気がするっ!」
「よーし、バー上げろー」
「先生ー!棒が足りないでーす!」
「何本か継ぎ足せ―」
そんな馬鹿なやり取りで部員全体が笑いに包まれている中、寝転がったままの植野の視線に見慣れた姿が映った。
鈴橋だ。
今日もまたいつもの教室の窓からのぞいている。
鈴橋が自分を見てくれている。最初こそは戸惑いもしたが、今ではその事実がくすぐったくもあり嬉しくもある。
自分が新記録をだせたのも、きっと彼のおかげだ。感謝を伝えようとこれでもかというくらい腕を伸ばし大きく手を振った。
それを受けた鈴橋は感謝を受け取るどころか大慌てでしゃがみ隠れ込んでしまったのだが…まったく本当に可愛くてどうしようもない。
テンションの下がらぬまま、植野はもう一度自己新記録を破る驚異を見せつけるのだった。
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