涼宮くんの日常的生活

yuki

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第一話

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  「ということで、今回の入学手続きは終わりました。一年生の一学期の途中からですが、この私立真栄原まえばら高校の周りの生徒や先生たちとと仲良く過ごしてください」
  クラスの担任である一 遊佳にのまえ ゆうかがそう言って話が終わった。
  (明日から新しい生活が始まる…)
  と転校するのが初めての人は思うだろうが、涼宮 悠人すずみや ゆうとは違った。
  (どうせまた今回も同じだろう…)と。
  今の季節は梅雨。梅雨と言うぐらいだから月は六月である。
  なぜこんな時期に転校してきたのか。
 その理由は、『ただ単にその学校に飽きたから』ではなかった。前の学校で少しやり過ぎた暴行事件があり、それをきっかけに転校してきたのだ。詳しく言えば退学処分を受けたのである。
  もともと悠人はおとなしい性格だった。柔和で静かで。勉強などはいつも中の上くらい。成績などはいつも悪くはなかった。
  ではなぜ暴行事件が起きたのか。それは、『悠人が普通じゃなかったから』という風な内容で解決されている。だが、本当の理由は違った。ただ単に悠人が虐められていて心の傷が積もりに積もった後、爆発してしまったのだ。まぁ、それも言い訳でしかないのだが。
  結論からするとなぜか悠人だけが悪者になり、退学処分を受けたと言うわけである。
  前回、普通ではないと言う理由が引き起こした事件を気にして今回からは普通でいようとしたのだ。
  
 話は進み、次の日。
  
 「今回転校してきた涼宮くんです」
  と言われ、自己紹介を始める。
  「北中出身の涼宮 悠人です。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者とかがいたら、俺のところまで来い━━」
  もちろんこの台詞は映画化にもなった有名なアニメのヒロインの台詞のもじりである。名字が偶然そのヒロインと同じなので軽いジャブのつもりで言ってみたのだ。もちろんこの後に「━━みたいな台詞が有名な某小説のヒロインと同じ名字です」と続けるつもりだった。
  しかし現実はそう甘くなく、後に言う台詞までに五秒も間を開けてしまったのだ。台詞の続きを言おうとしたとたん、いきなり教室の前の方に座っていた少年がガタンと乱暴に席を立ったのだ。
  「超能力者はかかってこいだと?いいだろう。その挑戦、受けて立つ!」
  「は?」
  戸惑う悠人。少年に続き、今度は数名の男女が次々と立ち上がった。
  「こんな堂々と宣戦布告とはいい度胸だ」「腕が鳴るわね」「くくく、俺の最強の超能力で貴様など粉々にしてくれる!」「待て、最強の超能力者はこの俺だ!」
  口々に訳のわからないことを言い出したクラスメート達に、悠人はますます混乱する。
  「ククク、まさかこんなにも早く《儀式》の時が訪れようとはな……」
  突然入ってきた副担当の先生が騒ぎ立てる生徒たちを見て邪悪な笑みを浮かべた。
  まぁ、ホームルーム中だから入ってきても不思議ではないのだが。
  「貴様ら!今から臨時で戦いの時間だ!お前らの《能力》を我に見せてみよ!」
  「ええええ!?」
  驚きを隠せなかった悠人に何人もの生徒が迫ってくる。
  「ふふふ……覚悟するがいい……!死にたくなければお前の《能力》を見せてみよ!」
  生徒達が悠人を取り囲み━━、

 「━━なーんてな」


 恐怖で目を閉じかけた悠人の前で誰かが軽い口ぶりで言った。
 「へ……?」
 ぽかんとする悠人を取り囲み、生徒達が笑っている。
 「おいおい冗談だよ冗談!マジになってびびんなよ」
   副担任も笑いながら、
 「そろそろ席につけー。みんなノリがいい奴ばかりで嬉しいぞ!」といった。
 「じょ、冗……談……?」
 悠人は呆然として立ち尽くす。
 からかわれた━━自分のスベった自己紹介を逆手にとって、からかわれたのだ。

 その日の帰り道、
  「おーい!」
  突如として聞こえてきた声。その声の主はうちのクラスの委員長、一 かなえにのまえ かなえであった。どうやら担任とは血が繋がっていると噂されているが、実際のところわからない。
  「悠人くんの家はこっち側なんだね!」
  急に立ち止まってとてつもない笑顔でそう言われて、返す言葉に迷ってしまいただうんとしか答えられなかった。
  「ところで悠人くんは転校してくる前はどんな学校にいたのかな?」
  まるで天使の微笑みのように笑いながら話しかけてくる。いや、いっそのこともう天使なのではないか?と考えてしまうほど。
  「前の学校か?」
  そう聞くと、
 「うん。もし答えたくなかったら答えなくてもいいんだよ?」
  今にも泣きそうな目で訴えてくるその姿はまさに小動物に近いものを感じた。
  「まぁ、今はその話を話すことはできないよ。ごめん」
  そういったとたん、かなえはしょぼんとうつ向いた。そうなるとわかっていて聞いたはずなのにいざ聞いてみて話してくれなかった場合、かなえに対してのダメージがあることを一は忘れていた。
  「…………そうだよね。ごめんね。こんな話、しちゃって。お詫びになにかおごるよ?」
  かなえはあえて話をずらした。これ以上はダメージを受けたくなかったのだ。
  「そうか?なら遠慮なく」
  悠人はうなずき、帰り道を歩き始めた。

  その晩、悠人は不思議な夢を見た。
 周りには大きな箱がいくつもあり、その上に誰かわからない女の子が座っている。その子がいきなり杖を振りかざし、なにかをぶつぶつと唱え始めた。するとさっきまで彼女が座っていた箱が破裂し霧が出始めた。
というわけのわからない夢を見たのだ。
  その夢を同じ自分が見ていることを今の悠人は知るよしもない。

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