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第29章
光 ~後編~
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愛剣が消失したというショックは大きかったが、それよりもクレイドルとライトだ。ソードブレイカーがこちらに来たということは、クレイドルが抜かれたという事。やられたとは微塵も思っていなかったが、奥を見るとベルドが復帰している。ライトはまだ倒れている。ライトが何故ここに来たのか。何故俺を標的にしたのか。それは分からない。
だが、ここで剣が折れたからと、立ち止まるわけには行かない。
即座に左手を開く。地面を転がり汚れた左手に金色の光。
エクスカリバー。
「……エクストラ・スキル」
そう言いながら、しっかりとその柄を掴み、立ち上がる。
「マルチ・マテリアル……発動」
その瞬間に、エクスカリバーの柄。その中央に鎮座する宝玉が、七色に光り始める。
【全属性超活性状態】に入ったエクスカリバーは、攻撃性能において他の刀剣を遥かに凌駕する。
「おい、それは……エクスカリバーか……?」
呆然としたような呟きは、バックステップで俺に並んだクレイドルから発せられた言葉だ。
「どっちがいい?」
「俺に大剣相手にしろと? 冗談はよせ」
「……潰す」
低く呟いた俺はボロボロのソードブレイカーに狙いを定める。
二刀流専用ソードスキル。ダブルノヴァ。八連撃技のこのスキルに、マルチ・マテリアルによる強制属性付与を使えば、敵の弱点を割り出せる。
体が高速で移動し、両手を振る。右の剣による突き、その直後に飛ぶのは左手からの往復水平斬り。水と風を纏わせた剣が大剣によって弾かれると、右手の剣で思い切り側面を叩きつける。
「なっ……」
その衝撃によってソードブレイカーの大剣はその手から離れ、宙を舞う。
そのまま右手の剣を突き入れ、左手による上からの振り降ろし。炎を纏った剣がその身体を深々と切り刻む。身体を右に捻り、二刀の回転流し切りを放つ。氷属性の斬撃も思ったようには入らない。
深い火傷を上から強引に凍結させた事で、酷い激痛を持っているであろうソードブレイカーは、その印象に合わないような悲鳴を出しながら地面を転がっていく。だが、ここで終わる事はない。
右側に流しきった剣の右側。ガルバリオンが即座に前に移動すると、一瞬強く光る。
二刀流専用キャンセル技。エッジブレーキ。
硬直を脱した俺はそのまま左手の剣を高く掲げ、前へと振り降ろす。
「タイダルサンダー!!」
雷鳴が鳴り響き、ものの0.3秒ほどで集まってきた黒雲から蒼い稲妻が迸り、敵の身体を灼く。
「あ……があぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴は出ている。だが、本当に効いているのかは甚だ疑問が残る。
これらの中で最も効果が出ているのは風と雷。だが、いやだからこそ、信用できない。
二刀を構える。右手の剣を身体に巻きつけるように左腰側に、左手の剣を担ぐように肩の上へ。
「お前らと最後まで殺り合うつもりはねぇよ! クソったれ!」
そう言いながら、ベルドが煙幕を張ったらしく、辺りが煙に包まれる。即座に視界が奪われるが、目を瞑る。気配を探り、そこに一撃を放つ。
しかし、遮るものがいた。
撃とうとしていた技を慌てて止める。そこには、たった今意識が回復したライトが居た。
「う、う~ん……」
「あっっぶな……撃ってたら終わってた……」
「……なんとも悪いタイミングだな、騎士長」
いや、おそらく違う。目覚めるであろうことを知覚して、その状況を利用した。完全に逃げられた。
しかも……
「折られたな。……その……」
「別に……。まだ戦える」
俺のその声に少し驚きながら、こちらを見るクレイドル。しばらく俺の顔を見ていたが、何かを察したのか(恐らく何かしら勘違いしているとは思うが)、溜息を一つ零して、背中を向ける。
「次は荒々しくない事を祈る」
そう呟き、去って行った。クレイドルは、やはり何かを狙ってアルタイルにいる。別に世界に絶望しきったわけではない。少なくとも俺はそう思うのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ほんっっっとに迷惑かけた!」
「いいよ。首1つで許すよ」
「それ……許したって言わない」
今、俺達は騎士団長室に来ている。ライトの一件は遠方に出張に行っていたというカバーストーリーを流布している。
街中に二人ともいるときに起きたらどうするのか、その一つの懸念点を解決するために来ている。
「取り敢えず、今まで起きなかった事が起きているのは理由がある筈だ」
「だな。心当たりは一つある」
「なんだ?」
そう聞くと、ちょっと呆れたような顔で俺を見る。
「……お前だよ。ゼクル」
「俺、なんかしちゃいました?」
「黙れ。シンプル無職」
「え? 火力エグない?」
傷付いた俺の心と、それに対する反抗の一種として出した声の両方を無視したライトは、そのまま話を続ける。
「お前が最近、ドラゴンの力を使い始めたからだ。龍属性は光と闇と共鳴しやすい」
「まぁ、確かに文字の響き的にはそんな感じもするけど」
もし、それが本当なら、宝玉の行方もすぐさま追わなくてはならない。龍属性が周りに及ぼす影響を、俺は今、全くと言っていいほど知らないんじゃないのか?
「龍属性争奪戦が、始まるのか」
隣のレナがこぼした一言が、これから起きる悲惨な物語を簡潔に想起させた。
だが、ここで剣が折れたからと、立ち止まるわけには行かない。
即座に左手を開く。地面を転がり汚れた左手に金色の光。
エクスカリバー。
「……エクストラ・スキル」
そう言いながら、しっかりとその柄を掴み、立ち上がる。
「マルチ・マテリアル……発動」
その瞬間に、エクスカリバーの柄。その中央に鎮座する宝玉が、七色に光り始める。
【全属性超活性状態】に入ったエクスカリバーは、攻撃性能において他の刀剣を遥かに凌駕する。
「おい、それは……エクスカリバーか……?」
呆然としたような呟きは、バックステップで俺に並んだクレイドルから発せられた言葉だ。
「どっちがいい?」
「俺に大剣相手にしろと? 冗談はよせ」
「……潰す」
低く呟いた俺はボロボロのソードブレイカーに狙いを定める。
二刀流専用ソードスキル。ダブルノヴァ。八連撃技のこのスキルに、マルチ・マテリアルによる強制属性付与を使えば、敵の弱点を割り出せる。
体が高速で移動し、両手を振る。右の剣による突き、その直後に飛ぶのは左手からの往復水平斬り。水と風を纏わせた剣が大剣によって弾かれると、右手の剣で思い切り側面を叩きつける。
「なっ……」
その衝撃によってソードブレイカーの大剣はその手から離れ、宙を舞う。
そのまま右手の剣を突き入れ、左手による上からの振り降ろし。炎を纏った剣がその身体を深々と切り刻む。身体を右に捻り、二刀の回転流し切りを放つ。氷属性の斬撃も思ったようには入らない。
深い火傷を上から強引に凍結させた事で、酷い激痛を持っているであろうソードブレイカーは、その印象に合わないような悲鳴を出しながら地面を転がっていく。だが、ここで終わる事はない。
右側に流しきった剣の右側。ガルバリオンが即座に前に移動すると、一瞬強く光る。
二刀流専用キャンセル技。エッジブレーキ。
硬直を脱した俺はそのまま左手の剣を高く掲げ、前へと振り降ろす。
「タイダルサンダー!!」
雷鳴が鳴り響き、ものの0.3秒ほどで集まってきた黒雲から蒼い稲妻が迸り、敵の身体を灼く。
「あ……があぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴は出ている。だが、本当に効いているのかは甚だ疑問が残る。
これらの中で最も効果が出ているのは風と雷。だが、いやだからこそ、信用できない。
二刀を構える。右手の剣を身体に巻きつけるように左腰側に、左手の剣を担ぐように肩の上へ。
「お前らと最後まで殺り合うつもりはねぇよ! クソったれ!」
そう言いながら、ベルドが煙幕を張ったらしく、辺りが煙に包まれる。即座に視界が奪われるが、目を瞑る。気配を探り、そこに一撃を放つ。
しかし、遮るものがいた。
撃とうとしていた技を慌てて止める。そこには、たった今意識が回復したライトが居た。
「う、う~ん……」
「あっっぶな……撃ってたら終わってた……」
「……なんとも悪いタイミングだな、騎士長」
いや、おそらく違う。目覚めるであろうことを知覚して、その状況を利用した。完全に逃げられた。
しかも……
「折られたな。……その……」
「別に……。まだ戦える」
俺のその声に少し驚きながら、こちらを見るクレイドル。しばらく俺の顔を見ていたが、何かを察したのか(恐らく何かしら勘違いしているとは思うが)、溜息を一つ零して、背中を向ける。
「次は荒々しくない事を祈る」
そう呟き、去って行った。クレイドルは、やはり何かを狙ってアルタイルにいる。別に世界に絶望しきったわけではない。少なくとも俺はそう思うのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ほんっっっとに迷惑かけた!」
「いいよ。首1つで許すよ」
「それ……許したって言わない」
今、俺達は騎士団長室に来ている。ライトの一件は遠方に出張に行っていたというカバーストーリーを流布している。
街中に二人ともいるときに起きたらどうするのか、その一つの懸念点を解決するために来ている。
「取り敢えず、今まで起きなかった事が起きているのは理由がある筈だ」
「だな。心当たりは一つある」
「なんだ?」
そう聞くと、ちょっと呆れたような顔で俺を見る。
「……お前だよ。ゼクル」
「俺、なんかしちゃいました?」
「黙れ。シンプル無職」
「え? 火力エグない?」
傷付いた俺の心と、それに対する反抗の一種として出した声の両方を無視したライトは、そのまま話を続ける。
「お前が最近、ドラゴンの力を使い始めたからだ。龍属性は光と闇と共鳴しやすい」
「まぁ、確かに文字の響き的にはそんな感じもするけど」
もし、それが本当なら、宝玉の行方もすぐさま追わなくてはならない。龍属性が周りに及ぼす影響を、俺は今、全くと言っていいほど知らないんじゃないのか?
「龍属性争奪戦が、始まるのか」
隣のレナがこぼした一言が、これから起きる悲惨な物語を簡潔に想起させた。
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