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俺達と一緒にこいよ

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 とある昼下がり、俺がリビングのソファーでリラックスしていると、フォルがススっと寄ってきて俺の膝の上に腰かける。まるで自分の定位置であるかのような振る舞いだな。他の子達の視線が痛い。

 そんな俺の落ち着かない心の内など一切構わずに、俺の首にぶら下がるように抱き着くフォル。俺に向けられている、みんなの抗議の視線が強くなる。いたたまれなくなった俺は、フォルに声を掛けた。

「おい、なんか用か?」
「ところで、リーゼロッテちゃんはいつまで放っておくつもりですか?」

「は? リーゼロッテはお前の策略で、ドラゴンになったから仕方なく殺したよ。その時に神剣ベイルスティングのソウルイーターのスキルで、魂を残らず喰い尽くして俺のレベルの足しになったんだ。天界からお前も見ていたんだろ?」

 リーゼロッテとの戦いを思い出すと、今でも胸の奥がギュッと締め付けられるように軋む。ところがフォルは意外なことを口にした。

「ええ見てました。ですが、私がリーゼロッテちゃんに授けた『ニーベルンゲンの指輪』のエネルギー量が、あなたの剣のソウルイーターの性能の上限を超えていたために、吸収しきれなかったんですよ」

「……何を言っているんだ?」

「つまり、リーゼロッテちゃんの魂は、ソウルイーターに喰われずに残っているということです。さらに言うと、リーゼロッテちゃんのこの世界に対する執着は想像以上のようで、私が彼女に渡した神器、神剣エターナルシャインに魂が縛り付けられている状態なのですよ」

「え、マジで?」
「はい、マジです」

 ってことは、復活させることも可能なのか? 俺の疑問に答えるようにフォルは続ける。

「ラプラスの記録の情報を使って、レイナちゃんがリーゼロッテちゃんの肉体を創り、魂を移し替えれば復活できるはずですよ」

 リーゼロッテか。あいつも前世で報われない人生だった。出来ることなら助けてやりたい。

「ノエル、レイナ、力を貸してくれないか?」

 レイナはいつものように「カイト様の仰せのままに」と俺に頭を下げる。でも、ノエルは「えー、また女増やすの?」とあからさまに不服そうだ。

「違うんだ。リーゼロッテは元は俺と同じ地球の人間だし、俺と同じように前世ではひどい人生だったんだ。せっかくこの世界に転生してきたのに、訳の分からない駄女神のせいで不本意な最期だったと思う」

「カイト、訳の分からない駄女神とは失礼ですよ」

 フォルが頬を膨らまして、俺の腕を抓るが無視して続ける。

「だから、出来ることならこの世界で幸せになって欲しいんだ。別に俺の物にしたいだなんて思ってない」

「でも、肉体を創って復活させたら、カイトに惚れるよね」

 マユはジト目で突っ込むので、俺は「それは、そうかもしれないね……」と視線を泳がせる。周囲から口々にため息や小言が聞こえるが、リーゼロッテを復活させる協力はしてもらえるようだ。



 * * *



 みんなで手分けしてダンジョンを巡って魔石をかき集めた。集めた魔石を使ってレイナは一晩でリーゼロッテの肉体を創ってくれた。

 ノエルとレイナが創ってくれた肉体は、以前見たリーゼロッテと全く同じ姿だった。きちんと衣装も再現されていた。

 髪はつやつやで、肌もきめ細かでスベスベだ。あ、まつ毛長いなぁ。唇もぷるんとして柔らかそうだ。この前は戦うのに必死で、じっくりと眺めるなんて出来なかったけど、こいつ、かなり美人だな。

「カイト、いつまでそんな舐めるような目つきで、リーゼロッテちゃんの体を眺めているつもりですか?」

 フォルに冷やかされて我に返る。そうだ、ここで眺めていてもしょうがない。早く復活させて動くところを見たいな。

 レイナがリーゼロッテの体を持ち、俺はフォルをお姫様抱っこしてみんなで出発した。 
 


 俺とリーゼロッテが戦った場所に到着した。未だ大地は引き裂かれ、激しい戦いの跡がそのまま残されている。意識を集中すると、神剣エターナルシャインのものと思われる波動を感じた。

 波動をたどり歩くと、地中から波動を感じる。埋もれているのか。俺がライトボールを地面に向かって撃つと、地面に穴が開いて深い紫色の剣が姿を現した。

 俺はそれを手に取って意識を集中する。

 リーゼロッテの魂の波動を確かに感じる。彼女の魂はこの剣に強く結びついているのか。

「じゃあノエル、頼むよ」
「ん、分かった」

 ノエルが儀式用の台座をアイテムボックスから出すと、レイナがその上にリーゼロッテの肉体を寝かせたので、俺もその隣に神剣エターナルシャインを置いた。

「それじゃ、始めるね」

 ノエルは神剣エターナルシャインに手をかざすと、呪文の詠唱を始めた。すると、神剣エターナルシャインから眩い光が放たれて、リーゼロッテの肉体が光に包まれる。

 しばらくして、光は収まった。上手くいったのか? 俺がリーゼロッテの肉体を眺めていると、目が開いた。

「ん、ここは……? 私は何を……」

 俺が「おはよう、目が覚めた?」と声を掛けると、リーゼロッテは「あ、あんたは!!」と、よろけながら俺から距離を取ろうとする。

 リーゼロッテは、俺の恋人たちに囲まれていることに気が付く。そして、その中にフォルの姿を見つけた。

「女神、フォルトゥナ様? どうして……」

「リーゼロッテちゃん、お久しぶりですね。色々あって私は人間になってしまいました。あなたに与えた使命はもう果たす必要はありません。これからは自由に生きてください」

「そんな! ……そんなことを突然言われても、私はこれからどうすればいいの?」

「なら、取りあえず俺達と一緒に来いよ。衣食住は保証するからさ」

「なんであんたなんかと一緒に行かなきゃいけないのよ!? 私とあんたは殺し合った敵同士でしょ!!」

「その使命を与えた女神が自由にしていいって言ってるし、そもそも今のこいつは神の力を失って人間になったんだ。もう俺達が殺し合う理由は無いと思うけど」

「でも……」

「俺はお前とも仲良くしたいと思ってるんだけどなぁ」 

 俺がリーゼロッテの目を見ながら手を差しだすと、彼女はサッと目を逸らす。そして、少し黙ってから口を開いた。

「あんたがそう言うなら、ついて行ってあげてもいいんだからね……!」

 おぉ、これは俺のモテモテスキルが効いている! この反応が欲しかったんだよねー!

 俺が軽く感激していると、ノエルがゴホンと咳払いをする。

「こんなところでいつまでも話してないで、さっさと屋敷に帰るよ!」

「あ、ああ、そうだな。リーゼロッテ、生き返ったばかりだから力をうまく使えないんじゃないか? 良かったら、俺がお姫様抱っこで屋敷に飛んでやろうか?」

「仕方ないわね! 抱っこされてあげるわ!」

 そんなべたにデレるか? リーゼロッテの分かりやすい態度に、つい俺の口から笑みがこぼれる。するとノエルが語気を強める。

「カイト! 大量の魔石を使ってその子の体を創ったのを忘れたの? その子のレベルは優に200を超えている。飛ぶのなんて造作もないはずでしょ!?」

 すると、リーゼロッテはわざとらしく声をあげる。

「あーん、魔力の操作が上手くいかないよー。なんでだろー」

 おいおい、棒読みすぎるだろ……。周囲から湿った視線がリーゼロッテに集中する。このままじゃ埒が明かないので、俺はリーゼロッテを抱き上げて屋敷に向かって飛び立った。

 俺の後を追うようにみんなも飛び立つ。ちなみにフォルはレイナに抱えられていた。



 * * *



 そして屋敷に到着。リビングにて、レイナが用意してくれた紅茶とお菓子を、みんなで囲んでいる。

 俺やリーゼロッテがこの世界に召喚された本当の理由や、俺がこの世界てやってきたこと、それに女神を倒したことなどを説明した。

 最初は戸惑った様子だったが、話を聞いているうちに事態を飲み込めたようだった。

「そうだったのね。頼れる人もいないし、しばらくあんたの世話になるわ。よろしく、カイト」

「ああ、よろしくな! リ―ゼロッテ」

「リーゼでいいわよ」

 頬を染めて、やや俯いて手を差しだすリーゼ。俺はその手をとって握手を交わした。こいつ、やっぱり可愛いなぁ。

「じゃあリーゼ、俺が屋敷を案内するよ」

 リーゼは素直に俺の後ろについてきた。空いている部屋をいくつか案内すると、彼女の気に入った部屋があったようだ。

「魔王城と比べるとたいしたこと無いけど、この部屋にしてあげるわ」

 リーゼは顎を上げ気味で腕を組んでいる。はいはい。いちいちツンを入れなくてもいいですよー。だが可愛いから許す。

「必要な物があったら言ってくれ。大体なんでも買えるし、売っていないものでもレイナが作ってくれる」

「別に物なんていらないわよ」

 リーゼはアイテムボックスから次々と家具を取り出す。

「お前もアイテムボックスを持っていたんっだっけ。それじゃ、あとは自由にしていいからな」

 俺が部屋を出ようとすると、リーゼに腕を掴まれて呼び止められた。

「ちょっと、まちなさいよ」

「ん? どうかしたか?」

「……するんだけど」

「は?」

「だから、ムラムラするって言ってるの!!」

 リーゼは顔を真っ赤にして視線を落としている。いつも思うが、俺のモテモテスキルは最高の神スキルだよな。俺はつい頬を緩めてしまう。

「な、なにニヤニヤ笑ってるのよ! 私がこんなことを言のがおかしいの!?」

「おかしくないよ。ただ嬉しいだけ」

 俺はリーゼを抱き上げてベッドに運び、優しく寝かせる。するとリーゼは俺の首に手をまわして抱き着き体を密着させる。

 俺がリーゼの唇に顔を近づけると、彼女の方から唇を押し付けてくる。さらにリーゼの舌が入り込んできた。一気に燃え上がった俺達は、そのまま体を重ね合った。



 * * *



 リーゼは俺の腕の中で、くたっとなって体を預けている。俺が頭を撫でてやると潤んだ目で俺の目をじっと見つめた。

「あんたに触れていると、なんでこんなに満たされた気持ちになるんだろう」
 
「そりゃ、俺が素敵だからじゃないのか?」

「どう見ても、おバカでクズなハーレム野郎なのに……」

 なんて酷い言いようだ。別に隠しているわけでもないので、本当のことを言っておくか。

「……実は、この世界に転生した時、女の子にモテモテになる体質にしてもらったんだ。だから、俺が好きになった女の子は、強制的に俺に惚れるらしいよ」

「そっか、あんたは私のことが好きなのね」

 リーゼはそう言って微笑むと、俺の胸に顔を埋めた。



 しばらくして部屋を出ようとドアを開けると、部屋の前にみんなが集結していた。全員俺に湿った視線を送っている。ノエルが代表して、圧力を感じる笑みを浮かべながら俺に詰め寄った。 

「屋敷の案内、長かったわね?」

 俺は圧力に屈して半歩下がる。

「ちょっと熱が入ってしまって……」

「まぁ、いいよ。カイトだし。その代わり、その子だけに夢中になったら許さないからね!」

「分かってるって! ここにいるみんなの事、同じくらいに大切に想っているから!」

 

 * * *



 こうして異世界に転生した俺は、可愛い恋人達と幸せに暮らしている。

 村娘、聖女、奴隷、公爵令嬢、勇者、メイド、元女神、元魔王。いろんな属性持ちの女の子達を堕として、俺のものにできるなんて前世じゃ考えられなかった。

 でも、俺はこの世界でハーレムの夢を実現できた。今後の事は何も考えていないけど、これからもみんなと楽しく暮らしていきたいなぁ、と思うのだった。

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