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女神襲来
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ノエルが体を取り戻してから一月ほどたった。アルパリス王国にいる理由もないので、ナロッパニア王国に帰ってきて、屋敷は元のあった場所へ戻してある。
俺は毎日可愛い恋人たちと、甘々のまったり幸せライフを満喫していた。
今日は、庭でバーベキューを楽しんでいる。
「うわーっ、このお肉美味しいですよ! カイト様どうぞー」
「本当ね! とっても柔らかいわ」
「こっちのエビも美味しいよ」
「貝も開いたから、そろそろいいんじゃない?」
「野菜も食べなきゃダメだよ」
恋人たちが笑顔で、俺に焼けた食材を差し出してくる。
俺がデレデレしながら食べていると、突然ありえないほど強大な波動を持った存在が、庭に降り立ったのを感じた。
俺は思わず立ち上がってその方角を見つめると、金髪金眼の美人さんが立っていた。ノエルは微かに震えた声で「女神が来た」と俺に告げる。さっきまでのリラックスモードからから一転、緊張した面持ちになっている。
女神様が何しに来たんだろ。まさか一緒にバーべキューしたいとか? んなわけないか。俺は庭に降り立った女神様に歩いて近づく。
「女神様、お久ぶりです! 俺にモテモテスキルを授けてくれてありがとうございました!」
にっこり微笑む女神様。
「喜んで頂いているようで、良かったです」
せっかくの機会なので、俺の能力で疑問に思っていたことを質問してみた。
「ところで、俺のモテモテスキルって効果は絶大だけど、他のスキルみたいにステータスには載ってないですよね? だからずっと、不思議に思っていたんですけど……?」
俺の質問に、優しく微笑んだまま答える女神様。
「それは魔力で世界の理を改変させたり、精神に作用する力ではなくて、理のまま生物の肉体に作用する生理的な反応だからです」
ん? どういうことだ? 俺がポカンとしていると、女神様は続ける。
「簡単に言うと、あなたは女性にモテる体質なのです。極めて整ったその容姿は視覚から、体中から放出される異性を誘引する物質は嗅覚と味覚から、独特の波長のその声は聴覚から異性の本能に働きかけ恋愛感情を強力に刺激します」
「あなたが好きだと目を付けた女性は、生物の反応として強くあなたに惹かれるのです。ノエルちゃんが、肉体を手に入れたとたんあなたに惚れたのはこの為です。また、肉体のないレイナちゃんがあなたに強烈に惚れないのも同じ理由なのですよ」
「そうだったんだ……」
俺が感心していると、突然女神さまの口調が厳しくなった。
「そうだったんだ。ではありません!」
「カイト、あなたにはせっかく強大な力を与えたのに、もうひと月もの間、イチャイチャ、パコパコとずーっとヤっているだけなんですよ? 天下統一とか、世界征服とか、全国制覇とか!! いろいろやりたいことがあるでしょ!!」
それ、全部同じじゃないのか? それに、あんまり興味ないなぁ。
「いやー、恋人達とこのまま楽しく過ごせたらいいなーと思って」
俺の答えに、女神さまは怒りを露わにする。
「それじゃ私が楽しく無いんです! もっとこの世界をかき回して私を楽しませてください!!」
「そんなこと言われたって……」
女神様はフゥー、と長い溜息をつく。
「分かりました。いいでしょう。必死にして差し上げます」
「え?」
「魔王を召喚します。地球の神に言って、魔王にぴったりな人材の魂を、この世界に転生させます」
「なんだって?」
「地球の神は私の眷属ですからねぇ。私の娯楽の為に、時々地球の適当な魂をこの世界に転生させていたんですよ。あなたも、ノエルちゃんも、魔王もそのうちの一人です」
「レベルは……そうですねー350くらいにしますね。人間を超越した強さを得られるようになり、モンスターを自在に使役できるようになるチートスキル『魔王』を授けましょう。そうそう神器も忘れずに渡さなくては」
「魔王には勇者を殺し、人間を滅ぼすという使命を与えます。魔王は勇者であるノエルちゃんを殺しに来ますよ? それが嫌なら頑張って魔王を討伐してくださいね」
「もちろん、私を倒すというのなら、いつでも相手になりますよ。実は待っていたんですけどねー。あなたがノエルちゃんと一緒に私を殺しに来るのを」
「くっ、そんなことさせるか! 今この場で倒す!!」
「うふふ、いいですねー、その目。でも私は神なんですよ。勇者ならともかく、今のあなたごときでは傷一つつけられません」
女神は言い終わると、あっさりと俺の間合いに入り込んでデコピン。俺は反応さえできずに吹っ飛ばされ地面に叩きつけられて大怪我を負った。
「セイグリッドヒール……」
俺が呟くと傷は即座に完治するが、体が痺れて動かせない。
「よくもカイトを!!」
ノエルが聖剣ラングザードを握り女神に跳び掛かる。だがノエルの攻撃を容易く躱した女神はノエルにもデコピンをして、吹き飛ばした後でカラカラと笑う。
「ノエルちゃん、日和っているんじゃないですか? 昔のあなたの方が強かったですよー」
ノエルですら赤子扱いとは……。いや、そんなの関係ない! 俺がみんなを守る!
俺が気合を入れて立ち上がり、魔剣ベイルスティングを取り出して魔装術を発動させようとすると、レイナの声が聞こえる。
「カイト様、ここは私にお任せを」
女神の背後に瞬間移動したレイナが大鎌を振り下ろす。刃が女神の首に当たるも、そこで止まって傷つけることができない。
「ふふふ♪ 女神と精霊とでは存在の格が違いすぎるのですよ」
女神は首に大鎌の刃を押し当てられたまま、微笑みながらレイナにもデコピンをする。やはり派手に吹っ飛ばされた。
くっ、レイナまでも……!
ノエルでさえ何もできずにやられたんだ。マユ達は下手すると殺される。そう思って、みんなの方を見ると、四人とも両手を地について動けないでいた。
「あらあら、私の神気にあてられて、動くこともできませんか。あなた達はもっと頑張って強くなってくださいね。それではごきげんよう」
女神フォルトゥナは笑顔で手を振りながら、光に包まれて消えていった。
* * *
女神フォルトナの視点。
ふう、さすがに下界に行って直接人間に関わると、大きく力を消耗してしまいますね。ですがこれでカイトも頑張って活躍してくれるでしょう。さて、地球からはどんな魂が来たのか確認しますか。
……なんですか、これは? よりによって女の子!? これではカイトに惚れてしまって試練にならないではありませんか!
「もしもし? 地球の神? 魔王にふさわしい人材送れって言ったのに、女の子とか送ってんじゃね―よ!」
「お気に召しませんでしたか? 地球では可愛い女の子の魔王とか結構流行っていまして……」
「ふざけんな! そんなの知らねーよ!!」
ガチャン!!
しかし困りましたね。……とりあえず会って話してみますか。
女神たるこの私は、召喚された少女の前に立ち、いつも通りに立ち振る舞うと、その子は嬉しそうに目を輝かせている。それを確認しながら私は説明を続けた。
「貴方には魔王となって、腐敗した世界を滅ぼす存在となっていただきますが、何か希望はありますか」
「魔王……世界を滅ぼす? ふふっ、私そういうのやってみたかったんですよ。希望ですか……。私、前世では男との出会いが無かったので、かっこいい男にチヤホヤされたいです」
カイトといいこの娘といい……、こんな奴ばかり送ってきやがって……。
「例えば、来世では男性の肉体になったりとかはどうでしょう? 素敵な女性に囲まれてハーレムとかはどうですか?」
「いえ、女として男にモテたいです。イケメンを配下にして人類を蹂躙したいです」
(チッ、やれやれですね……)
こうなったら、カイトの超絶モテモテ体質の効果を打ち消す神器を装着して頂きます。神器の名前は……ニーベルンゲンの指輪とでもしましょうか。
女神も色々大変なのです。人間を使って暇つぶしをするなら尚更に。
俺は毎日可愛い恋人たちと、甘々のまったり幸せライフを満喫していた。
今日は、庭でバーベキューを楽しんでいる。
「うわーっ、このお肉美味しいですよ! カイト様どうぞー」
「本当ね! とっても柔らかいわ」
「こっちのエビも美味しいよ」
「貝も開いたから、そろそろいいんじゃない?」
「野菜も食べなきゃダメだよ」
恋人たちが笑顔で、俺に焼けた食材を差し出してくる。
俺がデレデレしながら食べていると、突然ありえないほど強大な波動を持った存在が、庭に降り立ったのを感じた。
俺は思わず立ち上がってその方角を見つめると、金髪金眼の美人さんが立っていた。ノエルは微かに震えた声で「女神が来た」と俺に告げる。さっきまでのリラックスモードからから一転、緊張した面持ちになっている。
女神様が何しに来たんだろ。まさか一緒にバーべキューしたいとか? んなわけないか。俺は庭に降り立った女神様に歩いて近づく。
「女神様、お久ぶりです! 俺にモテモテスキルを授けてくれてありがとうございました!」
にっこり微笑む女神様。
「喜んで頂いているようで、良かったです」
せっかくの機会なので、俺の能力で疑問に思っていたことを質問してみた。
「ところで、俺のモテモテスキルって効果は絶大だけど、他のスキルみたいにステータスには載ってないですよね? だからずっと、不思議に思っていたんですけど……?」
俺の質問に、優しく微笑んだまま答える女神様。
「それは魔力で世界の理を改変させたり、精神に作用する力ではなくて、理のまま生物の肉体に作用する生理的な反応だからです」
ん? どういうことだ? 俺がポカンとしていると、女神様は続ける。
「簡単に言うと、あなたは女性にモテる体質なのです。極めて整ったその容姿は視覚から、体中から放出される異性を誘引する物質は嗅覚と味覚から、独特の波長のその声は聴覚から異性の本能に働きかけ恋愛感情を強力に刺激します」
「あなたが好きだと目を付けた女性は、生物の反応として強くあなたに惹かれるのです。ノエルちゃんが、肉体を手に入れたとたんあなたに惚れたのはこの為です。また、肉体のないレイナちゃんがあなたに強烈に惚れないのも同じ理由なのですよ」
「そうだったんだ……」
俺が感心していると、突然女神さまの口調が厳しくなった。
「そうだったんだ。ではありません!」
「カイト、あなたにはせっかく強大な力を与えたのに、もうひと月もの間、イチャイチャ、パコパコとずーっとヤっているだけなんですよ? 天下統一とか、世界征服とか、全国制覇とか!! いろいろやりたいことがあるでしょ!!」
それ、全部同じじゃないのか? それに、あんまり興味ないなぁ。
「いやー、恋人達とこのまま楽しく過ごせたらいいなーと思って」
俺の答えに、女神さまは怒りを露わにする。
「それじゃ私が楽しく無いんです! もっとこの世界をかき回して私を楽しませてください!!」
「そんなこと言われたって……」
女神様はフゥー、と長い溜息をつく。
「分かりました。いいでしょう。必死にして差し上げます」
「え?」
「魔王を召喚します。地球の神に言って、魔王にぴったりな人材の魂を、この世界に転生させます」
「なんだって?」
「地球の神は私の眷属ですからねぇ。私の娯楽の為に、時々地球の適当な魂をこの世界に転生させていたんですよ。あなたも、ノエルちゃんも、魔王もそのうちの一人です」
「レベルは……そうですねー350くらいにしますね。人間を超越した強さを得られるようになり、モンスターを自在に使役できるようになるチートスキル『魔王』を授けましょう。そうそう神器も忘れずに渡さなくては」
「魔王には勇者を殺し、人間を滅ぼすという使命を与えます。魔王は勇者であるノエルちゃんを殺しに来ますよ? それが嫌なら頑張って魔王を討伐してくださいね」
「もちろん、私を倒すというのなら、いつでも相手になりますよ。実は待っていたんですけどねー。あなたがノエルちゃんと一緒に私を殺しに来るのを」
「くっ、そんなことさせるか! 今この場で倒す!!」
「うふふ、いいですねー、その目。でも私は神なんですよ。勇者ならともかく、今のあなたごときでは傷一つつけられません」
女神は言い終わると、あっさりと俺の間合いに入り込んでデコピン。俺は反応さえできずに吹っ飛ばされ地面に叩きつけられて大怪我を負った。
「セイグリッドヒール……」
俺が呟くと傷は即座に完治するが、体が痺れて動かせない。
「よくもカイトを!!」
ノエルが聖剣ラングザードを握り女神に跳び掛かる。だがノエルの攻撃を容易く躱した女神はノエルにもデコピンをして、吹き飛ばした後でカラカラと笑う。
「ノエルちゃん、日和っているんじゃないですか? 昔のあなたの方が強かったですよー」
ノエルですら赤子扱いとは……。いや、そんなの関係ない! 俺がみんなを守る!
俺が気合を入れて立ち上がり、魔剣ベイルスティングを取り出して魔装術を発動させようとすると、レイナの声が聞こえる。
「カイト様、ここは私にお任せを」
女神の背後に瞬間移動したレイナが大鎌を振り下ろす。刃が女神の首に当たるも、そこで止まって傷つけることができない。
「ふふふ♪ 女神と精霊とでは存在の格が違いすぎるのですよ」
女神は首に大鎌の刃を押し当てられたまま、微笑みながらレイナにもデコピンをする。やはり派手に吹っ飛ばされた。
くっ、レイナまでも……!
ノエルでさえ何もできずにやられたんだ。マユ達は下手すると殺される。そう思って、みんなの方を見ると、四人とも両手を地について動けないでいた。
「あらあら、私の神気にあてられて、動くこともできませんか。あなた達はもっと頑張って強くなってくださいね。それではごきげんよう」
女神フォルトゥナは笑顔で手を振りながら、光に包まれて消えていった。
* * *
女神フォルトナの視点。
ふう、さすがに下界に行って直接人間に関わると、大きく力を消耗してしまいますね。ですがこれでカイトも頑張って活躍してくれるでしょう。さて、地球からはどんな魂が来たのか確認しますか。
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ガチャン!!
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カイトといいこの娘といい……、こんな奴ばかり送ってきやがって……。
「例えば、来世では男性の肉体になったりとかはどうでしょう? 素敵な女性に囲まれてハーレムとかはどうですか?」
「いえ、女として男にモテたいです。イケメンを配下にして人類を蹂躙したいです」
(チッ、やれやれですね……)
こうなったら、カイトの超絶モテモテ体質の効果を打ち消す神器を装着して頂きます。神器の名前は……ニーベルンゲンの指輪とでもしましょうか。
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