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廃墟探索1

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 拠点にしている宿屋の食堂で朝食をとっている。
 俺と共にテーブルを囲う四人の美少女達。ああ、ハーレムだ……。異世界転生最高……! 

 ハーレムの夢は実現したといってもいいだろう。となれば次に来るのは……家だな。

 いつまでも宿屋で声を抑えながらイチャつくのもなんだし、やっぱり家は欲しいよなぁ。ノエル、いい物件無い? 広くて庭付きがいいな。

「以前スタークと戦った、この街の南西部に広がっている荒地をさらに進むと、昔この地方の領主だった貴族の屋敷があるんだけど、そことかどう?」

「貴族の屋敷? そんなとこ買えるのか」

「悪霊が憑いて誰も住み着かずに放置され、今では廃墟になっているから無料だよ」

 事故物件か……。

「カイト達なら浄化できるからね。修繕の手間は掛かるけど、一から建てるよりは安く早く豪邸が手に入るし、今はもう誰も近づかないから税金も掛からなくてお得だよ」

 ふーん、ならそこにするか。俺は四人に向かって言う。

「この街の南西にある、廃墟の屋敷って知ってる?」

 アイリは知っているのか、頷きながら答える。

「ああ、ギィバード侯爵の幽霊屋敷でしょ? もちろん知っているわよ」

 クレアも知っているようだ。

「その屋敷は異界化していて、まるでダンジョンみたいに、モンスターが出現するらしいです」

 マユも知っているのか、詳しく解説を始めた。

「実体のないレイスが多いから、神聖魔法が使えないとまともに戦えないんだって。そのせいで冒険者もほぼ近寄らない」
「その昔、神殿から高位の神官が何人も浄化に行ったけど、うまくいかなかった、って話はこの街を拠点にしている冒険者ならほとんどが知っているわ」

 そんな、いわくつきの場所なのか。

「そこを浄化して、俺達の住処にしようと思うんだけどどうかな?」

「普通の人がそんなことを言いだしたら、頭がおかしくなったのかと思うけど、カイトだからね……。いいよ。行ってみよう」

 マユ……。それって褒めているんだよな? 俺はクレアとフィリスとアイリに視線を向けて意見を求める。

 クレアは元気よく「カイト様がしたいことに異存なんてありません」と答えてくれた。
 微笑みながらフィリスも「私も同じ意見よ。どこだって付いて行くわ」と同意してくれた。
 アイリは少し困っているようにも見えたが「カイトに任せるよ……」と頷いてくれた。
 
 よしっ! 決まりだな。朝食を終えた後、さっそく南西に向かうことにした。



 * * *



 アーリキタの街の南西ゲートから外に出て、屋敷に向かって歩いていると、アイリは不安そうな顔で俺に話しかける。

「カイトは神聖魔法を使えるから行く気なんだろうけど、かなり強力なレイスらしくて、過去に何人もの神官が行ったけど浄化に失敗しているんだよ」

「心配ないよ。マユは、20年前に勇者と一緒に魔王と戦ったっていう、聖女と同じくらい強力な力を持っているから、どんなレイスでもきっと浄化できるよ」

「聖女って、さすがにそれは盛りすぎでしょ?」

 アイリの言葉にマユはピクリと反応した。

「私のことをどう思おうとあなたの勝手だけど、カイトが嘘を言っているみたいな言い方は許せないかな」

 マユは聖杖ケルラウスを取り出して、神聖魔法を開放すると周囲が清浄なオーラで満ちる。アイリはマユの迫力に押されて一歩下がった。

「なんて底知れない強大な魔力……。そんなに凄い人が、なんでカイトのパーティーメンバー兼恋人なんかをやってるのよ?」

 マユは微笑みアイリに答える。

「そんなの簡単よ。カイトは私よりも凄い人だからだよ」

 アイリはまたも不安そうに眉を寄せて俺を見ている。うーむ、どうしたものか。とりあえずは笑顔を作ってごまかしておいた。

 アイリの不安を取り除くためにも、 手早く浄化してマイホームゲットといこうか。



 * * *



 荒地を進むと、次第に木々が増えて行き、気が付くと周囲は深い森になっていた。

 森の中は薄暗く、太陽の光も差し込まない。カラスの鳴き声が不気味さを醸し出している。構わずどんどん進んでいくと、荒れ果てた屋敷が見えてきた。

 門扉は劣化して傾き外れているので、そのまま敷地内に足を踏み入れる。
 敷地内に入った途端、違和感があった。なんかダンジョン内みたいな感じがする。なるほど、これが異界化しているってことか。

「悪霊の怨念が長年にわたって淀んだ魔力を呼び寄せて、この敷地内が疑似的なダンジョンになっているよ。モンスターも出現するからね」

 ノエルの解説を聞きながら敷地内を歩いていると、どこからともなく不気味な声が聞こえる。

「帰れ……」

 おぉ、雰囲気は満点だ。

 こんな時、大体お化けの苦手な子が一人はいて大騒ぎになりそうだが……。俺は四人を見るが、特に怖がるでもなく平静を保っているな。

「あのー、みんなはお化けとか、幽霊とか苦手だったりしない?」 
 
 四人はハッとして俺に次々飛びついてきた。

「カイト、お化け怖いっ!」「カイト様、わたし、お化けは苦手です!」「幽霊苦手!」「私だってお化けは怖い!」

 四人は思い出したかのように口々に言いながら、豊満で柔らかい部分をぎゅうぎゅう押しつける。幸せだ。どうやら、お化けが苦手な子はいないようなので安心だ。

「女にもてる男……。許せん!!」

 再び不気味な声が聞こえ、今度は殺気も感じる。瞬時にマユが神聖魔法の障壁を展開すると、ガキンと衝撃音が響いた。

 俺達の正面で、鎖の付いたトゲトゲ鉄球が障壁にぶつかっている。

 鎖を握っているのは、半分透けている騎乗した騎士風のモンスターだ。鉄球につながっている鎖を引いて頭上で振り回す。

 うめき声のような不快な音が響き、地面からスケルトンが何体も這い出してきた。

「どう見ても雑魚だけど、みんな油断しないで!」

 俺たち全員で肩慣らし程度に暴れると、瞬く間にモンスターの群れは全滅した。

「もてる男は許せん!!」

 先ほどよりも大きな声が聞こえる。さっきのスケルトンよりは強そうな、半分透けたモンスター達に囲まれた。神官に騎士に冒険者の姿をしている。きっとここを浄化しようと訪れて返り討ちにあった犠牲者なんだろう。

「別に悪霊なんかに許しを請う気もないよ」

 俺が手のひらをモンスターに向けグロージャベリンを放とうとすると、マユの聖光の光が増幅し、辺りのモンスターを一気に浄化した。

「おおっ! マユってもう完全に聖女様だよね!」

「やめてよ。聖女なんて言われても柄じゃないし、嬉しくもない」

 そうか、じゃこれならどうだ?

「マユは最高に可愛いくて頼りになる!」

 マユに近寄りハグすると、頬を染めて嬉しそうに笑ってくれた。

「こんなところでイチャついていないで、さっさとボスを倒しに行こうよ」

 アイリが俺の腕をつかんで引っ張る。

「分かってるって、先に進もうか」

 俺はアイリに微笑みかけるも、そっぽを向かれてしまった。アイリの不機嫌そうな顔も可愛いけど、笑ってる方が可愛いな。

 そんなことを思いながらアイリに腕を引かれて先へと進むのだった。
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