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先生 挿絵有
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ダンジョンから出ると、もう日は傾きかけている。今からもう一度ダンジョンに潜ってもたいして狩れないな。お金には余裕があるし明日から頑張るか。
ザッコス達との別れ際、俺は「今後はくれぐれも無理しないでね」と三人に向かって声を掛けた。
モブーラとヨワーネは俺に頭を下げて礼を言ったが、ザッコスはそっぽを向いたまま不機嫌そうに黙っている。マユ抜きでやっていくのは苦しいだろうけど、彼らには頑張って欲しいものだ。
アーリキタの街に戻ってきた。夕食にはまだ早いし何しようかな? と考えるとノエルの声が聞こえる。
「クレアに剣技を仕込んだら?」
そうだな、クレアの戦力が上がれば、もっと深い階層を安全に探索できるだろう。
「クレア、俺と剣の練習をしよう」
「はい!」
クレアは嬉しそうに顔を緩ませて大きく返事をする。
フィリスも剣の練習に興味が湧いたのか、話に入ってきた。
「私もその練習にまぜて」
おっ、これはフィリスと仲良くなるチャンスだ。というわけで快く了解した。
ノエルによると冒険者ギルドの敷地内には訓練場があり、冒険者なら誰でも使用できるらしい。俺達は冒険者ギルドへと移動した。
訓練場はグラウンドっぽい広場で、隅にはギルド職員が木剣等を貸し出している小屋が建っている。
その広場を見ると、数人が木剣を持って戦っている程度でガラガラだ。訓練場に着くとマユは「私は魔法の練習してるね」と、俺達と別行動となった。魔法の訓練場はまた別の所らしい。
訓練場の空いているスぺースまで行って、木剣を2本取り出し1本をクレアに渡す。
オウデルさんに教わったことを思い出しながらクレアを指導した。しばらく基本的な動作を実演した後、反復練習して体に覚えさせる為に「教えた型を10回ずつ繰り返して」と指示した。
「はい! 分かりました!」と、クレアは素直に従って木剣を振りはじめた。一生懸命な感じがとても可愛い。見とれているとノエルが告げる。
「先生スキルを手に入れたよ。教え子の成長率が上昇するよ」
先生? そんなスキルもあるのか。これならクレアも早く剣技を身に付けられそうだな。ふと、フィリスを見ると俺とクレアのやり取りを興味深そうに眺めていた。
「フィリス、俺と組み手してみる?」
「面白そうね」と微笑むフィリス。
クレアから少し離れて、俺は木剣を持ちフィリスは木槍を持って向かい合い構える。心地良い緊張感だ。
「カイトからどうぞ」
「じゃ、遠慮なく」
俺が踏み込んで上段から振り下ろした一撃を、フィリスが軽く弾いて軌道を変える。木剣と木槍がぶつかって乾いた音が響く。
その一撃目を皮切りに激しい打ち合いとなる。何度も攻守が入れ換わりながら激しくぶつかっていると楽しくて仕方がない。フィリスも同様なのか真剣な表情の中にも口元には笑みを湛えている。
お互いに本気では無いけど、動きを読み合い技を繰り出し合った。俺の木剣がフィリスの木槍をいなし、胴へ寸止めしたところで楽しいひと時は終了した。
フィリスの動きは一朝一夕で身につくようなものでは無かった。相当鍛錬を積んでいるに違いない。天才スキルのおかげで、一朝一夕で剣技を身に着けた俺が言うのもなんだけど。
「フィリス強いね! 楽かったよ」
「カイトの剣技も素晴らしいわ」
「フィリスの槍術って我流じゃないよね?」
「それも秘密」
「そっか」
「聞かないのね?」
「秘密なんでしょ? でも興味はあるよ。フィリスの事好きだから」
「くっ、またそうやって……」
フィリスは赤くなって俺に抗議の視線を向ける。もう堕ちそうだよね……? 頑張れ、俺のモテモテスキル。
なんとなくフィリスといい雰囲気になっていると「カイト様ー! 終わりました」と呼ぶ声が聞こえる。振り向くと、クレアが俺の元に駆けてきた。
「よし、次はクレアとやろう」
「お願いします!」
日が暮れるまで訓練場で楽しく稽古を付けたのだった。
* * *
別行動だったマユと合流してテンプーレ亭で食事をしてから宿屋に来た。
今日も残念ながらフィリスは一人部屋だ。
「フィリス、おやすみ」と声を掛けると「うん、おやすみ」と微笑みながら手を振り一人部屋へと入って行った。
バタンとドアが閉まる。そろそろ堕ちて欲しかったなぁ。閉まったドアを眺めてそんなことを考えていると、クレアが俺の手を引きマユが声を掛ける。
「さあ、早く私達も部屋に入りましょう」
「うん、そうだね」と、三人で部屋に入った。
部屋に入ると俺はすぐにマユをそっと抱き寄せて頬にキスをした。
「ダンジョン内でマユが俺に言ってくれた言葉、凄く嬉しかった。俺もマユの事を愛してるよ」
マユは、はにかんでコクリと頷く。
すると、クレアが俺にすがる。
「私もカイト様の事を愛しています!」
「もちろん、クレアの事も愛してるよ」
クレアも抱き寄せて、頬にキスをした。
* * *
二人の恋人とたっぷりイチャつき、マユとクレアは俺の隣で寝息を立てている。
俺は天井を眺めながら考え事をしている。それにしても、フィリスって何者なんだろうなー。神器持ってたし。
するとノエルの声が聞こえる。
「知りたい? 全部教えてあげようか?」
「やめとくよ。女の子の秘密を暴くのは良くない気がする」
「そう? でもきっとすぐに秘密を知りたくなると思うよ」
意味ありげなノエルの言葉が多少気になりつつも、俺は眠りに落ちていくのだった。
ザッコス達との別れ際、俺は「今後はくれぐれも無理しないでね」と三人に向かって声を掛けた。
モブーラとヨワーネは俺に頭を下げて礼を言ったが、ザッコスはそっぽを向いたまま不機嫌そうに黙っている。マユ抜きでやっていくのは苦しいだろうけど、彼らには頑張って欲しいものだ。
アーリキタの街に戻ってきた。夕食にはまだ早いし何しようかな? と考えるとノエルの声が聞こえる。
「クレアに剣技を仕込んだら?」
そうだな、クレアの戦力が上がれば、もっと深い階層を安全に探索できるだろう。
「クレア、俺と剣の練習をしよう」
「はい!」
クレアは嬉しそうに顔を緩ませて大きく返事をする。
フィリスも剣の練習に興味が湧いたのか、話に入ってきた。
「私もその練習にまぜて」
おっ、これはフィリスと仲良くなるチャンスだ。というわけで快く了解した。
ノエルによると冒険者ギルドの敷地内には訓練場があり、冒険者なら誰でも使用できるらしい。俺達は冒険者ギルドへと移動した。
訓練場はグラウンドっぽい広場で、隅にはギルド職員が木剣等を貸し出している小屋が建っている。
その広場を見ると、数人が木剣を持って戦っている程度でガラガラだ。訓練場に着くとマユは「私は魔法の練習してるね」と、俺達と別行動となった。魔法の訓練場はまた別の所らしい。
訓練場の空いているスぺースまで行って、木剣を2本取り出し1本をクレアに渡す。
オウデルさんに教わったことを思い出しながらクレアを指導した。しばらく基本的な動作を実演した後、反復練習して体に覚えさせる為に「教えた型を10回ずつ繰り返して」と指示した。
「はい! 分かりました!」と、クレアは素直に従って木剣を振りはじめた。一生懸命な感じがとても可愛い。見とれているとノエルが告げる。
「先生スキルを手に入れたよ。教え子の成長率が上昇するよ」
先生? そんなスキルもあるのか。これならクレアも早く剣技を身に付けられそうだな。ふと、フィリスを見ると俺とクレアのやり取りを興味深そうに眺めていた。
「フィリス、俺と組み手してみる?」
「面白そうね」と微笑むフィリス。
クレアから少し離れて、俺は木剣を持ちフィリスは木槍を持って向かい合い構える。心地良い緊張感だ。
「カイトからどうぞ」
「じゃ、遠慮なく」
俺が踏み込んで上段から振り下ろした一撃を、フィリスが軽く弾いて軌道を変える。木剣と木槍がぶつかって乾いた音が響く。
その一撃目を皮切りに激しい打ち合いとなる。何度も攻守が入れ換わりながら激しくぶつかっていると楽しくて仕方がない。フィリスも同様なのか真剣な表情の中にも口元には笑みを湛えている。
お互いに本気では無いけど、動きを読み合い技を繰り出し合った。俺の木剣がフィリスの木槍をいなし、胴へ寸止めしたところで楽しいひと時は終了した。
フィリスの動きは一朝一夕で身につくようなものでは無かった。相当鍛錬を積んでいるに違いない。天才スキルのおかげで、一朝一夕で剣技を身に着けた俺が言うのもなんだけど。
「フィリス強いね! 楽かったよ」
「カイトの剣技も素晴らしいわ」
「フィリスの槍術って我流じゃないよね?」
「それも秘密」
「そっか」
「聞かないのね?」
「秘密なんでしょ? でも興味はあるよ。フィリスの事好きだから」
「くっ、またそうやって……」
フィリスは赤くなって俺に抗議の視線を向ける。もう堕ちそうだよね……? 頑張れ、俺のモテモテスキル。
なんとなくフィリスといい雰囲気になっていると「カイト様ー! 終わりました」と呼ぶ声が聞こえる。振り向くと、クレアが俺の元に駆けてきた。
「よし、次はクレアとやろう」
「お願いします!」
日が暮れるまで訓練場で楽しく稽古を付けたのだった。
* * *
別行動だったマユと合流してテンプーレ亭で食事をしてから宿屋に来た。
今日も残念ながらフィリスは一人部屋だ。
「フィリス、おやすみ」と声を掛けると「うん、おやすみ」と微笑みながら手を振り一人部屋へと入って行った。
バタンとドアが閉まる。そろそろ堕ちて欲しかったなぁ。閉まったドアを眺めてそんなことを考えていると、クレアが俺の手を引きマユが声を掛ける。
「さあ、早く私達も部屋に入りましょう」
「うん、そうだね」と、三人で部屋に入った。
部屋に入ると俺はすぐにマユをそっと抱き寄せて頬にキスをした。
「ダンジョン内でマユが俺に言ってくれた言葉、凄く嬉しかった。俺もマユの事を愛してるよ」
マユは、はにかんでコクリと頷く。
すると、クレアが俺にすがる。
「私もカイト様の事を愛しています!」
「もちろん、クレアの事も愛してるよ」
クレアも抱き寄せて、頬にキスをした。
* * *
二人の恋人とたっぷりイチャつき、マユとクレアは俺の隣で寝息を立てている。
俺は天井を眺めながら考え事をしている。それにしても、フィリスって何者なんだろうなー。神器持ってたし。
するとノエルの声が聞こえる。
「知りたい? 全部教えてあげようか?」
「やめとくよ。女の子の秘密を暴くのは良くない気がする」
「そう? でもきっとすぐに秘密を知りたくなると思うよ」
意味ありげなノエルの言葉が多少気になりつつも、俺は眠りに落ちていくのだった。
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