68 / 119
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?
69.スキルの成長
しおりを挟む
俺がアサカの向かったレジーナに転移すると、アサカはかなりのダメージを負わされていた。敵の姿は無く、気配も感じない。
俺が「アサカ、無事か?」と声を掛けると、アサカは俺の方を見て笑顔を浮かべたかと思うと崩れ落ちるようにその場に倒れてしまった。
倒れたアサカの元に駆け寄り、抱き起し魔力を込めてギュっと抱きしめる。アサカの傷は跡形もなく完治させることが出来た。
「イツキ、来てくれたんだね。ありがと。私の相手は逃げて行ったよ……」
それだけ言うと気を失ってしまった。身体の傷は俺が完治させたが、相当消耗しているんだろうな……。
「アサカ、頑張ったんだね」
アサカの頭を撫でて、キスをしてMPも回復しておいた。
俺は気を失っているアサカを抱き上げて、箱庭に転移した。
箱庭のログハウスに戻ると、久奈と結月はもう戻ってきていた。二人して「お帰りー、遅かったね」と俺に声を掛ける。結月は俺がアサカを抱きかかえているのを見て尋ねた。
「あれ、アサカどうしたの?」
「アサカは何とか勝てたみたいだけど、深手を負っていたんだ。傷は完治させたし、MPも全回復させたからそのうち目が覚めると思うよ」
久奈は、俺に抱きかかえられたアサカを見て言う。
「あの程度の奴らにやられてしまうなんて、もっと厳しく鍛えなきゃね」
口ではそう言っているが、表情からは久奈もアサカの事を心配していることが窺える。俺は「ああ、そうだね」と応える。
とりあえずアサカを部屋に連れて行きべッドに寝かせる。アサカはスース―と寝息を立てて眠っている。アサカの可愛い寝顔をじっと見つめていると、俺の鼓動が高鳴ってくるので、軽くキスをしてリビングに戻ることにした。
リビングに戻るとルイさんが来ていた。
「ピルローク達がちょっかいを出してきたようだな」
「はい。俺が孤島でダロスを倒した後に、ピルロークが転移してきたので相手をしました」
「ピルロークと戦ったんですけど、今思うと指導されたような感じでした。おかげで俺も刀を具現化できるようになったし……」
ルイさんは顎に手を当て考える。
「そうか、ピルロークも研究者気質だからな。樹の固有スキルに興味があるのかもしれない」
「ええっ、なんか嫌だなぁ……」
アサカが起きてリビングまで来た。
「イツキ、恋人が気絶したら目を覚ますまで付き添うのが普通でしょ!」
膨れっ面で文句を言うアサカに俺は言い訳をする。
「あ、ごめん。身体の怪我は完治させたし、MPも全回復させたから大丈夫だと思って……。それにアサカの可愛い寝顔を見ていてムラムラしちゃうと駄目だから……」
「駄目じゃないよ! ムラムラしたら寝込みを襲えばいいのに!」
アサカはいつも通り元気になったようだな。俺はアサカに近寄り抱きしめた。
「アサカが無事で良かった」
俺の腕の中でアサカは言う。
「……もうだめだと思ったとき、イツキの声が聞こえたんだ。そしたら力が湧いて来て凄い威力の魔法が使えたんだ……」
その言葉を聞いたルイさんはアサカをじっと見つめた。
「アサカの固有スキルが成長しているな……」
「大気の支配者か……。水と気流を自在に操れるようだな。おそらく天災規模の魔法を行使できるだろう。身体の怪我を治療する魔法は変わっていないようだ」
アサカはポカンと驚いた表情だ。
「私が、支配者クラスの固有スキル持ち……? 信じられない……。レジーナ全土でも数人しかいなくて、支配者クラスの固有スキルが覚醒した者は、文字通り国一つを支配することも可能なほど強大な力を得ることが出来るという……」
ルイさんは頷く。
「私の固有スキルの眼で識別したから間違いない。アサカの固有スキルの強さは紛れもなく支配者クラスだ」
「これで、ヒナとユズキを倒せる! ちょっと訓練用のフィールドに行って試してくるね!」
アサカは飛び跳ねて喜んだと思ったら、転移して行ってしまった。久奈と結月を倒すのはやめて欲しいが、嬉しそうでなによりだ。
「支配者クラスの固有スキルに成長したって事はアサカは死にそうなくらいピンチだったって事ですか?」
「そういう事になるな」
俺がピルロークと戦っている間にアサカは苦戦していたのか。
「……アサカの身に何かあったらと思うとゾッとするな。本当に無事で良かった」
「奴らは弱かった。でも魔導器を使用したんだろうね。私がシェイドを倒した後すぐにアサカの所に向かえば、アサカが危険な目にあうことも無かったのに……」
結月は深刻そうな顔で呟いた。久奈も曇った表情で俯いて黙っている。
「結月……、アサカは無事だったんだし、固有スキルも成長したんだから! 久奈も落ち込まないで」
俺は、久奈と結月を抱きしめ背中を撫でた。二人は「うん……」と頷いた。
しばらくして、アサカが戻ってきた。満面の笑みでご機嫌の様子だ。
「ヒナ! 私と勝負して!」
久奈はクスッと軽く笑った後、「いいよ」と答えた。俺達は全員で訓練用フィールドに転移した。
アサカと久奈は飛んで空中で向かい合っている。俺と結月は魔刃のオーラで障壁を作りガードすることにした。魔力をすべて魔刃に回しているおかげで以前よりも強力な障壁が出来ている気がする。
それと結月のオーラと俺のオーラが溶け合い混ざることで、素肌で密着して抱き合っているかのような気持ち良さを感じる。結月をチラリと見ると、顔が少し赤くなっている気がする。
「あの……、樹……? 私、すごく気持ちいいんだけど……」
「俺も……」
ルイさんがゴホンと咳ばらいをする。俺は慌てて誤魔化そうとする。
「い、今はアサカと久奈の手合わせに集中しないとね」
俺と結月が魔刃のオーラを絡めることで感じる快楽に耐えているのも露知らず、アサカと久奈の勝負が始まった。
久奈は余裕の笑みを浮かべてアサカを見ている。
「好きなように攻撃しておいで」
アサカは気合十分で応える。
「その余裕、すぐに崩してあげるよ!」
アサカは魔力を水に変化させて、槍の形に固める。かなりの魔力が込められている様で、魔刃のオーラで具現化した刀と似た威圧感を放っている。
それを右手に持ちおもむろに久奈に向かって投げつけた。風の魔法で加速しているのか、目では追えないほどの速さで飛んで行く。
久奈は表情を変えることも無く余裕で躱した。
「ヒナなら避けると思ったよ。でもこれならどう?」
アサカは自分の周囲に大量の槍を発生させた。一つ一つが先ほどの槍と同じ程度の魔力が込められているように感じる。
「よーし、なら私も真似するね」
久奈の周囲に炎の魔力を固めた赤い刀が大量に発生した。
二人が同時に手を振り下ろすと、次々と槍と刀が発射されぶつかり合う。はげしい閃光と爆音が辺りに広がり、衝撃波が俺達の方まで来るが、俺と結月が展開している魔刃の障壁はびくともしない。
アサカと久奈の魔法の槍と刀の威力は全くの互角だったようで、どちらにもダメージは無かったようだ。
「流石ヒナだね。でもまだまだ行くよ」
再び槍を作り出し、今度は両手で持ち構える。先ほどの槍よりも多くの魔力が込められており、圧縮され密度を増した魔力によってアサカの周囲が震えている。槍を捻りながら突き、圧縮された魔力を解き放った。
大気をねじ切るような轟音とともに螺旋の水流が一直線に撃ち出されると、その技によって巻き起こった暴風が周囲に吹き荒れる。螺旋の直径はアサカの身長の3倍はあり、込められている魔力は今までのアサカの技とは比較にならないほどの大きさだ。
久奈はそれを両手を前に出して正面から受け止めた。久奈の両手にも水と風の魔力が渦を巻いており、アサカの魔法を相殺しているようだ。
アサカの放つ螺旋の水流を久奈は難なく防ぎ切った。
「今の魔法は今までで一番強いね。ちょっと本気出したよ」
「く……、これならどうだ!」
アサカは水の塊を複数発生させて、久奈に向けて飛ばした。久奈はいくつもの水塊に囲まれる。そして、アサカが両手のひらを握る動作をすると、水塊が久奈に向かって押しつぶすように飛んで行き、久奈は水塊に閉じ込められた。
さらにアサカは巨大な竜巻を発生させ、久奈は水塊ごと竜巻に飲み込まれた。
「これだけすれば、ヒナでも身動きできないでしょ?」
「思いっきり、強力な奴を叩き込むからね!」
アサカは水と風の魔法を圧縮して固めた槍を作り出す。その槍に魔力を込められるだけ込めて久奈を閉じ込めている竜巻に投げつけた。
勢いよく竜巻に突き刺さり爆発が起こる。辺りに水煙が立ち込め真っ白になった。
「ヒナなら大怪我はしないとは思うけど……、やりすぎたかな?」
水煙が晴れていき、久奈の姿が現れる。久奈は無傷で何事も無かったような微笑みを浮かべている。
「まぁまぁだね。確かに強くはなっているよ」
アサカは怯み空中で後ずさりをする。
「げ、無傷!?」
久奈は笑顔のまま「次は私の番だね」と言い終わるのと同時にまばゆい閃光がほとばしる。
アサカは即座に反応して水の障壁を展開するも、久奈が次々に放つ光線に徐々に障壁は削られていき、貫いた光の矢がアサカに命中した。そして、訓練用フィールドに響くアサカの悲鳴……。
勝負がついたようなので、俺と結月は障壁を解いた。身体の芯に気持ちいい感覚が残っているが、何事も無かったかのようにしないと……。結月の顔を見ると頬はわずかに赤みを帯びている気もするが表情は引き締まっている。さすが結月だな。
涙目で俺の方に飛んでくるアサカ。
「イツキー、抱きしめて怪我を治してー」
しかし、久奈が瞬間移動をしたのかと思うほどの速さで飛んできてアサカを捕まえた。
「だから、私も治癒魔法は使えるって!」
久奈はアサカに治癒魔法を使いあっという間にアサカを完治させた。
「私はイツキに治してほしかったのに!」
「私を倒すんでしょ? もっとやろうよ」
「うっ、また今度で……って言うか、支配者クラス同士なのに強さが違いすぎるでしょ?」
アサカの抗議にルイさんが諭す。
「久奈と結月は支配者クラスに覚醒してからもずっと切磋琢磨していた。覚醒したばかりのアサカよりも能力を使いこなせるのは当然だ」
「しかし、アサカもさすがは支配者クラスの固有スキルだ。相当な強さだったよ。これから頑張れば
久奈と結月に追いつけるだろう」
「えっ? そうかな……じゃあ頑張るよ!」
さっきまで涙目だったのに、満面の笑顔になってやる気になっている……アサカはころころと表情が変わって可愛いな。
さて、お腹も空いたしログハウスに戻るとするか。
俺が「アサカ、無事か?」と声を掛けると、アサカは俺の方を見て笑顔を浮かべたかと思うと崩れ落ちるようにその場に倒れてしまった。
倒れたアサカの元に駆け寄り、抱き起し魔力を込めてギュっと抱きしめる。アサカの傷は跡形もなく完治させることが出来た。
「イツキ、来てくれたんだね。ありがと。私の相手は逃げて行ったよ……」
それだけ言うと気を失ってしまった。身体の傷は俺が完治させたが、相当消耗しているんだろうな……。
「アサカ、頑張ったんだね」
アサカの頭を撫でて、キスをしてMPも回復しておいた。
俺は気を失っているアサカを抱き上げて、箱庭に転移した。
箱庭のログハウスに戻ると、久奈と結月はもう戻ってきていた。二人して「お帰りー、遅かったね」と俺に声を掛ける。結月は俺がアサカを抱きかかえているのを見て尋ねた。
「あれ、アサカどうしたの?」
「アサカは何とか勝てたみたいだけど、深手を負っていたんだ。傷は完治させたし、MPも全回復させたからそのうち目が覚めると思うよ」
久奈は、俺に抱きかかえられたアサカを見て言う。
「あの程度の奴らにやられてしまうなんて、もっと厳しく鍛えなきゃね」
口ではそう言っているが、表情からは久奈もアサカの事を心配していることが窺える。俺は「ああ、そうだね」と応える。
とりあえずアサカを部屋に連れて行きべッドに寝かせる。アサカはスース―と寝息を立てて眠っている。アサカの可愛い寝顔をじっと見つめていると、俺の鼓動が高鳴ってくるので、軽くキスをしてリビングに戻ることにした。
リビングに戻るとルイさんが来ていた。
「ピルローク達がちょっかいを出してきたようだな」
「はい。俺が孤島でダロスを倒した後に、ピルロークが転移してきたので相手をしました」
「ピルロークと戦ったんですけど、今思うと指導されたような感じでした。おかげで俺も刀を具現化できるようになったし……」
ルイさんは顎に手を当て考える。
「そうか、ピルロークも研究者気質だからな。樹の固有スキルに興味があるのかもしれない」
「ええっ、なんか嫌だなぁ……」
アサカが起きてリビングまで来た。
「イツキ、恋人が気絶したら目を覚ますまで付き添うのが普通でしょ!」
膨れっ面で文句を言うアサカに俺は言い訳をする。
「あ、ごめん。身体の怪我は完治させたし、MPも全回復させたから大丈夫だと思って……。それにアサカの可愛い寝顔を見ていてムラムラしちゃうと駄目だから……」
「駄目じゃないよ! ムラムラしたら寝込みを襲えばいいのに!」
アサカはいつも通り元気になったようだな。俺はアサカに近寄り抱きしめた。
「アサカが無事で良かった」
俺の腕の中でアサカは言う。
「……もうだめだと思ったとき、イツキの声が聞こえたんだ。そしたら力が湧いて来て凄い威力の魔法が使えたんだ……」
その言葉を聞いたルイさんはアサカをじっと見つめた。
「アサカの固有スキルが成長しているな……」
「大気の支配者か……。水と気流を自在に操れるようだな。おそらく天災規模の魔法を行使できるだろう。身体の怪我を治療する魔法は変わっていないようだ」
アサカはポカンと驚いた表情だ。
「私が、支配者クラスの固有スキル持ち……? 信じられない……。レジーナ全土でも数人しかいなくて、支配者クラスの固有スキルが覚醒した者は、文字通り国一つを支配することも可能なほど強大な力を得ることが出来るという……」
ルイさんは頷く。
「私の固有スキルの眼で識別したから間違いない。アサカの固有スキルの強さは紛れもなく支配者クラスだ」
「これで、ヒナとユズキを倒せる! ちょっと訓練用のフィールドに行って試してくるね!」
アサカは飛び跳ねて喜んだと思ったら、転移して行ってしまった。久奈と結月を倒すのはやめて欲しいが、嬉しそうでなによりだ。
「支配者クラスの固有スキルに成長したって事はアサカは死にそうなくらいピンチだったって事ですか?」
「そういう事になるな」
俺がピルロークと戦っている間にアサカは苦戦していたのか。
「……アサカの身に何かあったらと思うとゾッとするな。本当に無事で良かった」
「奴らは弱かった。でも魔導器を使用したんだろうね。私がシェイドを倒した後すぐにアサカの所に向かえば、アサカが危険な目にあうことも無かったのに……」
結月は深刻そうな顔で呟いた。久奈も曇った表情で俯いて黙っている。
「結月……、アサカは無事だったんだし、固有スキルも成長したんだから! 久奈も落ち込まないで」
俺は、久奈と結月を抱きしめ背中を撫でた。二人は「うん……」と頷いた。
しばらくして、アサカが戻ってきた。満面の笑みでご機嫌の様子だ。
「ヒナ! 私と勝負して!」
久奈はクスッと軽く笑った後、「いいよ」と答えた。俺達は全員で訓練用フィールドに転移した。
アサカと久奈は飛んで空中で向かい合っている。俺と結月は魔刃のオーラで障壁を作りガードすることにした。魔力をすべて魔刃に回しているおかげで以前よりも強力な障壁が出来ている気がする。
それと結月のオーラと俺のオーラが溶け合い混ざることで、素肌で密着して抱き合っているかのような気持ち良さを感じる。結月をチラリと見ると、顔が少し赤くなっている気がする。
「あの……、樹……? 私、すごく気持ちいいんだけど……」
「俺も……」
ルイさんがゴホンと咳ばらいをする。俺は慌てて誤魔化そうとする。
「い、今はアサカと久奈の手合わせに集中しないとね」
俺と結月が魔刃のオーラを絡めることで感じる快楽に耐えているのも露知らず、アサカと久奈の勝負が始まった。
久奈は余裕の笑みを浮かべてアサカを見ている。
「好きなように攻撃しておいで」
アサカは気合十分で応える。
「その余裕、すぐに崩してあげるよ!」
アサカは魔力を水に変化させて、槍の形に固める。かなりの魔力が込められている様で、魔刃のオーラで具現化した刀と似た威圧感を放っている。
それを右手に持ちおもむろに久奈に向かって投げつけた。風の魔法で加速しているのか、目では追えないほどの速さで飛んで行く。
久奈は表情を変えることも無く余裕で躱した。
「ヒナなら避けると思ったよ。でもこれならどう?」
アサカは自分の周囲に大量の槍を発生させた。一つ一つが先ほどの槍と同じ程度の魔力が込められているように感じる。
「よーし、なら私も真似するね」
久奈の周囲に炎の魔力を固めた赤い刀が大量に発生した。
二人が同時に手を振り下ろすと、次々と槍と刀が発射されぶつかり合う。はげしい閃光と爆音が辺りに広がり、衝撃波が俺達の方まで来るが、俺と結月が展開している魔刃の障壁はびくともしない。
アサカと久奈の魔法の槍と刀の威力は全くの互角だったようで、どちらにもダメージは無かったようだ。
「流石ヒナだね。でもまだまだ行くよ」
再び槍を作り出し、今度は両手で持ち構える。先ほどの槍よりも多くの魔力が込められており、圧縮され密度を増した魔力によってアサカの周囲が震えている。槍を捻りながら突き、圧縮された魔力を解き放った。
大気をねじ切るような轟音とともに螺旋の水流が一直線に撃ち出されると、その技によって巻き起こった暴風が周囲に吹き荒れる。螺旋の直径はアサカの身長の3倍はあり、込められている魔力は今までのアサカの技とは比較にならないほどの大きさだ。
久奈はそれを両手を前に出して正面から受け止めた。久奈の両手にも水と風の魔力が渦を巻いており、アサカの魔法を相殺しているようだ。
アサカの放つ螺旋の水流を久奈は難なく防ぎ切った。
「今の魔法は今までで一番強いね。ちょっと本気出したよ」
「く……、これならどうだ!」
アサカは水の塊を複数発生させて、久奈に向けて飛ばした。久奈はいくつもの水塊に囲まれる。そして、アサカが両手のひらを握る動作をすると、水塊が久奈に向かって押しつぶすように飛んで行き、久奈は水塊に閉じ込められた。
さらにアサカは巨大な竜巻を発生させ、久奈は水塊ごと竜巻に飲み込まれた。
「これだけすれば、ヒナでも身動きできないでしょ?」
「思いっきり、強力な奴を叩き込むからね!」
アサカは水と風の魔法を圧縮して固めた槍を作り出す。その槍に魔力を込められるだけ込めて久奈を閉じ込めている竜巻に投げつけた。
勢いよく竜巻に突き刺さり爆発が起こる。辺りに水煙が立ち込め真っ白になった。
「ヒナなら大怪我はしないとは思うけど……、やりすぎたかな?」
水煙が晴れていき、久奈の姿が現れる。久奈は無傷で何事も無かったような微笑みを浮かべている。
「まぁまぁだね。確かに強くはなっているよ」
アサカは怯み空中で後ずさりをする。
「げ、無傷!?」
久奈は笑顔のまま「次は私の番だね」と言い終わるのと同時にまばゆい閃光がほとばしる。
アサカは即座に反応して水の障壁を展開するも、久奈が次々に放つ光線に徐々に障壁は削られていき、貫いた光の矢がアサカに命中した。そして、訓練用フィールドに響くアサカの悲鳴……。
勝負がついたようなので、俺と結月は障壁を解いた。身体の芯に気持ちいい感覚が残っているが、何事も無かったかのようにしないと……。結月の顔を見ると頬はわずかに赤みを帯びている気もするが表情は引き締まっている。さすが結月だな。
涙目で俺の方に飛んでくるアサカ。
「イツキー、抱きしめて怪我を治してー」
しかし、久奈が瞬間移動をしたのかと思うほどの速さで飛んできてアサカを捕まえた。
「だから、私も治癒魔法は使えるって!」
久奈はアサカに治癒魔法を使いあっという間にアサカを完治させた。
「私はイツキに治してほしかったのに!」
「私を倒すんでしょ? もっとやろうよ」
「うっ、また今度で……って言うか、支配者クラス同士なのに強さが違いすぎるでしょ?」
アサカの抗議にルイさんが諭す。
「久奈と結月は支配者クラスに覚醒してからもずっと切磋琢磨していた。覚醒したばかりのアサカよりも能力を使いこなせるのは当然だ」
「しかし、アサカもさすがは支配者クラスの固有スキルだ。相当な強さだったよ。これから頑張れば
久奈と結月に追いつけるだろう」
「えっ? そうかな……じゃあ頑張るよ!」
さっきまで涙目だったのに、満面の笑顔になってやる気になっている……アサカはころころと表情が変わって可愛いな。
さて、お腹も空いたしログハウスに戻るとするか。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる