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ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

52.箱庭の楽園

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 9月1日、長い夏休みも終わり今日から学校だ。今年の夏休みは、時間を加速した箱庭にいた日数も入れると、3カ月だったのだから相当長かった……。

 始業式が終わりクラスに戻ると、担任の先生が転校生を紹介した。

「鳴海久奈です。よろしくお願いします!」

 元気よく挨拶するのは、見知ったポニーテールの美少女だ。クラスの男子どもは沸くが残念だったな、と変な優越感を感じてしまう。転校生がくる際のお約束なのか、俺の隣に何故か空いてる席があり久奈はその席に座る。

「よろしくね! 樹!」

 久奈が微笑んで声を掛けてくる。この学校の制服もよく似合っていて可愛い。

「よろしく。久奈」

 俺は笑顔で応える。親しそうに名前で呼び合う俺に周りの男子からの視線が痛い。



 HRが終わり久奈と結月が俺に近づいてきた。

「「樹、帰ろ」」

 二人の美少女が俺に親し気に声を掛けたことで、クラス中の男子のヘイトが俺に集まる気がした。その上二人は俺の腕を抱き付く。

 箱庭では普段からこんな感じではあるが、学校内では他の人の目があるので正直恥ずかしい。二人は全く気にしていないのか、柔らかい部分を容赦なく押し付けてくる。

「今日はどうする?」

 結月が聞いて来る。そういえば、ルイさんから話があるってメッセージが来ていたな……。

「ルイさんに箱庭に呼ばれてるから、着替えたら箱庭のログハウスに集合ね」

「「りょうかーい」」



 箱庭に転移するとルイさんが待っていた。

 いつも通り、リビングのソファーに座る。ルイさんが高級そうなお菓子と紅茶を出してくれた。

「教団は殲滅したが、おそらくまだ全て終わっていない。これからも地球にモンスターが転送される可能性はある」

「え、またあのドラゴンと同じ強さのとか?」

「いや、あれほど強大な魂力のモンスターは、レジーナ全てを探してもそう見つけられないだろう」

「それに、仮にあの強さのモンスターが転送されても今の君達の魂力は約50000。魂力差の大きな格上のモンスターを倒したことにより魂力が大きく上昇している。固有スキルの成長もあるので、次は楽に倒せるだろう」

「そういえば、あのモンスターを倒した報酬だが……。高校生の君達にあまり高額な現金を渡すのもどうかとは思ったのだが、命がけで倒してくれたからな。100万円ずつを渡しておくよ。仮に君達が負けていれば1~2カ月ほどで地球は壊滅していただろう。それを考えれば安いものだ」

 ルイさんがニタリと笑う。

「将来の結婚資金の足しにでもしてくれ」

「「樹、結婚資金だって」」

 久奈と結月は俺の方を見てニッコリ笑う。この人、こうなることが分かってて言ってるよな……。

 俺が言葉を出せずに苦笑いをしていると、ルイさんが話題を変える。

「君達の魂力は、今やレジーナの人と比べても最上位の強さだ。将来、私の会社に来ないか? 大学に進学し卒業した後でもいい」

「はい、考えておきます」

 その後、多少の雑談をした後、ルイさんは転移ゲートで去っていった。



 俺達は――。

 久奈が待ってましたとばかりに俺に抱き着く。

「じゃあさっそくしようかー」

 結月も既に上気した表情で俺に抱き着く。 

「今日は、朝からずっとしたかったんだ。もう初めてじゃないから、三人でもいいよね?」

「え?、あ、……うん」

 呆気に取られている俺の腕を二人はガシッと掴み、俺の部屋まで引っ張って連れていかれた。



 久奈と結月。俺の大事な人。二人はこんな俺の事を心から慕ってくれている。

 この箱庭に転移させられていなければ、久奈と再会する事も出来なかっただろう。結月とだってクラスメイトとはいえ仲良くなるどころか、ろくに話す事も無かっただろう。

 雲の上の存在だと思っていた二人の美少女と仲良くなれた。今までの人生で、……いや、これからの人生を全部見通すことが出来たとしても、これ以上の幸運は無いだろうと思える。


 だからこの箱庭は、俺にとっては本当に楽園エリシオンなんだ。

 この楽園で経験したいくつもの奇跡に感謝して、これからも二人の女神の事を、命を懸けて守っていくと俺は決意するのだった。
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