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ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

47.大事な人

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 昼食後は箱庭に転移して、準備運動の為に軽く刀を素振りして、モンスターの出現に備えることにした。

 15時を少し過ぎた頃、地球にモンスターが転移してきたようで、スマホに情報が送られてきた。

 スマホを操作して発生したモンスターのリストをタップすると「転移しますか?」と表示される。試しに行ってみるか……Yes。

 転移ゲートを抜けると既に他の人がモンスターと戦っていた。危なげなくモンスターを倒したのを確認すると、他に出現しているモンスターの所へ行こうとしたが、他も全てのモンスターは討伐されたようだった。完全に肩透かしを食らったな、まあ被害も無くて良かったけど。

「モンスターも全滅したみたいだし家に帰ろうか?」



 自宅に三人で転移して帰ってきた。俺は三人分アイスコーヒーをグラスに入れ、適当な菓子をトレイに乗せ自室に戻る。トレイを折り畳みのテーブルに乗せ話をする。

「モンスターも大した事なかったね。あれなら、俺達の出番は無さそうだね」

 結月は軽くため息をついて応える。

「そうだね。お金がもらえるから競って倒しているのかもね」

「それよりもさー、夏休みの間だけでいいから、寝るときは箱庭のログハウスで樹と一緒に寝たいな」

 久奈が上目で聞くので俺は笑顔で答える。

「いいよ、また一緒に寝よ。俺も一人で寝るのは寂しいと思っていたんだ」

「当然私も行くからね」

「もちろんだよ。結月も一緒に寝よ」

 今日から、また三人でログハウスで寝ることになった。というか一人だけで寝たのは1日だけなんだけどね。俺もだいぶあの二人に依存してしまっている。常に一緒にいたいと思うようになっていた。



 時刻は18時前だな、久奈がそろそろ帰るというので送っていくことにする。三人で話をしながら歩いている。

「そういえば、いちいち俺の家に来なくても箱庭のログハウスで集合すれば良かったのでは?」

 久奈が「だって、樹の部屋に入りたかったんだもん」と言うと、結月が「樹の部屋はこれからも行くつもりだけど?」と続く。

「それは別にいいよ」

 久奈と結月が俺の部屋に来てくれるのは嬉しいので了解しておく。他愛ない話をしつつしばらく歩くと久奈の家に着いた。俺は、久奈を抱きしめてキスをした。

「またね。寝るときに箱庭のログハウスで」

「うん、なるべく早く会いたいな」

 久奈に手を振り、今度は結月の家に向かって二人で手をつないで歩く。

「なんか不思議だよね。私達ってクラスメイトだけど、一学期はほとんど話もした事も無かったのに、今では樹は私の一番好きで、一番大事な人なんだから」

 結月が嬉しいことを言ってくれるのでつい頬が緩んでしまう。俺も思っていたことを言う。

「ゲーム、というか箱庭に転移しなければ、今でも結月は俺にとっては手の届かない高嶺の花だっただろうし」

「高嶺の花って……。そんな風に見てたの?」

「そうだよ」

「そうかー、夏休み前に樹と仲良くなるきっかけがあればなぁ……。簡単に堕とせたかもしれないね」

「そうすれば樹は私だけの物になっていただろうし、えっちだってもうしてくれてたかもしてないね」

「結月……」

「あっ、責めている訳じゃ無いんだよ。箱庭に行かなければ久奈と仲良くなれなかったし。今では久奈は私の一番の親友なんだ」

「そうか……」

「なんか、深刻な顔してるね……。樹は、私や久奈の事ばかり考えて遠慮してるけど、もう少し自分がやりたいようにやればいいのにって思うよ」

 俺はなんて言ったらいいのか分からなくて笑顔を作る。そんなやり取りをしていたら、結月の家に着いた。

 結月は俺に笑顔でキスをして「また、あとでね」と手を振る。

 俺も「うん、またね」と手を振ってから自宅に帰った。



 家に帰り夕食を両親と食べる。母親がいやらしい笑みを浮かべて、色々と俺に聞いてきた。

「ヒナちゃんとユヅキちゃんどっちがあんたの彼女なの?」

「……」

「二人とも凄い美人だったけど、どこで知り合ったの? 同じ学校の子?」

「……」

「あんた彼女いないって言ってなかった?」

「……」

 母親が質問攻めをしているのを見かねたのか、父親が口をはさんでくる。

「まあまあ、かあさん。樹も年頃なんだし放っておいてやったら?」

「でも二人ともそこらのアイドルとか女優なんかよりずっと綺麗だったのよ。とうさんにも見せてあげたかったわー」

「そんなに美人だったのか? 樹も大したもんだな」

 両親が騒いでいるのを聞きながら黙って夕食を食べる。久奈と結月も夕食中なのかなぁ……。



 夕食を食べ終わり俺が自室に戻ると、結月から三人のグループにメッセージが来た。

「お父さんにつかまったのでログハウスに行くのが遅くなりそう。樹と久奈は先に寝てて。私もそのうち行くから」

 俺は「了解」とスタンプを送った。お父さんに怒られてるのかな? 心配だ。

 特にやることも無いのでさっさと風呂に入り、歯を磨き、箱庭に転移する。ログハウスの玄関の前に転移した。中に入るとまだ誰もいない。リビングのソファーに座りボーっとしているとそのまま眠ってしまった。

 ふと、いい匂いがして唇に柔らかく気持ちのいい感触がしたので目を開ける。

 目を開けると久奈が俺にキスをしていた。

「えへへ、樹の寝込み襲っちゃった」

「久奈、今来たの?」

「うん、結月は遅くなるってメッセージが来てたね」

「そうだね」

 俺はソファーに座りなおす。久奈は俺の左側にぴったり密着して座り、頭を俺の肩にのせてもたれ掛かり、右手を俺の左手に絡めて繋ぐ。

 少しの間二人が沈黙した後、久奈が話し出す。

「私ね、中学校の卒業式の日に逃げる樹を追いかけて、捕まえて、その時樹と付き合っていたらなって思うことがあるんだ。そうすれば、きっと樹は私の事だけをずっと見てくれていたんだろうって」

 俺は二股を責められている気がして、ドキッとして久奈の顔を見るが、久奈は優しい微笑みを湛えながら続ける。

「あのときこうしたら良かったなんて、考えてもどうしようも無い事くらいは分かっているんだ」

「それに、もしそうしていたら結月と親友になることも無かっただろうし」

「うまく言えないけど、箱庭で樹と再会して好きになった事と、結月と会って親友になった事、両方とも私にとって凄く大事なことなんだ」

「だからね……、樹は私や結月に対して罪悪感とか持ったりしないでね」

 責めるどころか気遣ってくれているなんて……。久奈も結月も俺の事を本当に大事に思ってくれているという事を実感し涙が出そうになったが、心配を掛けてしまいそうなので、久奈を抱きしめて誤魔化した。

「久奈、ありがとう」

 俺は泣きそうなのをこらえながら、何とかこの言葉だけを口にすることが出来た。

 その後しばらく二人で黙ったまま手を繋いで座っていると結月が来た。

「あれ? まだ起きてたんだ。てっきりベッドでイチャつき疲れて寝てるかと思った」

「お父さんにつかまってたって、大丈夫だったの?」

「うん、まぁ大丈夫と言えば大丈夫、また明日話すよ。それより今日はもう寝ようよ。早く樹にくっついてベッドに入りたい」

 結月に急かされるまま俺の部屋に三人で行き、いつも通り仲良く三人でくっついて寝たのだった。
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