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ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

37.自分との戦い

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 朝目覚めると、久奈か結月のどちらかを抱き枕にしているのは、三人で寝るようになってからは恒例となっている。

 今日の被害者は久奈だ。俺は寝ているときに何をしたのか全く憶えていない。

 ただ柔らかくていい香りのする滑らかな肌触りの抱き枕を、頬ずりをしながらギュっと抱きしめて心地良く寝ている……という自覚はある。

「久奈ゴメン、大丈夫? やっぱり一緒に寝ると迷惑かけちゃうよね?」

 久奈は白い肌をほのかに赤く染め、汗ばみ、息を乱している。

「ん……、大丈夫。今日もすごく良かったよ。迷惑どころか嬉しい。樹は夜と朝とでは別人みたいだね」

 久奈は蕩けた表情で俺に唇を合わせる。そして抱き枕にしなかった方、――今日は結月だが。

「いいなぁ、明日は私を抱きしめてよ」と言ってキスをしてくるのであった。



 朝食をとりながら話をしている。俺は久奈と結月に言う。

「今日はルイさんが”PvPしないでプレイヤーを攻撃するとアラートが出る問題”を何とかする為に来るよ」

 久奈が「いつ来るんだろうね」と呟くと、結月は「大体三人揃って外に出ると転移ゲートが出現してルイさんが現れるよね」と言った。

 確かにそうだよな……。

 朝食を食べ終わり、準備を済ませて三人揃って外に出ると、思った通り転移ゲートが出現してルイさんの登場だ。

「いつもタイミングばっちりですよね」

「監視者だからな。君達が濃厚にイチャついてるときに現れても嫌だろう?」

「え、イチャついてるのも監視してるんですか?」

「さあ? そんなことより、君達限定でPvPしない状態で攻撃してもアラートが出ないようにしておいたよ」

 ルイさんは俺の質問をさらりとスルーして本題に入る。

「もちろん、防御フィールドと箱庭のセーフティー機能は保持しているから、思い切り打ち込んでも大丈夫だ」

「せっかくだから、私が少し剣技の指導をしてあげようか?」

 俺はちょっと勘弁してほしいな、と思っていると……。 結月はやる気のようで気合を入れて「お願いします!」と礼をする。

 ルイさんは、ミスリル刀を片手に余裕たっぷりだ。

「三人同時に掛かっておいで」

 最初にルイさんに会った時より俺達も強くなっている。一撃くらいは入れる事が出来るかも? と思い、自身を奮い立たせてルイさんに挑戦することにした。 

 ところがすぐに、その考えは甘いことを思い知らされてしまった。しばらく戦ったが全く歯が立たない。

 久奈と結月が高速で連携しても、軽くいなされてしまう。当然俺が一人で切り込んでもあっという間に一撃入れられてしまう。

 三人で囲んで同時に攻撃しても、全て切り払われ反撃される。速いうえにすべての行動が完全に読まれているようだ。結月でさえ息が上がっている。上には上がいるんだな。

 しばらく戦って俺たちがバテたところで、ルイさんは褒めてくれた。

「君達は本当に強いな。すごくいいね」

 息も乱さず、汗もかかずに強いと言われてもな……。

「私も長い年月鍛錬し続けていたから今があるんだよ。君達も諦めずにに頑張れば、そのうち私を超えられるだろう」

 超えられるかどうかはともかく、頑張ろうとは思う。

「次のモンスターは少し趣向を変えてみようか。休憩したら挑戦してみて」

 言われた通り少し休憩してから転移ゲートに入ると、薄暗い空間に大きな鏡が3枚あった。近づくと俺の姿が鏡に映る。

 なんで鏡? 俺は自分の姿が映っている鏡に、手のひらをぺたりとあてると鏡が砕け散った。

 反射的に後ろに跳んで退避し、鏡のあったところを見ると、俺が立っていた。二人を確認すると、久奈と結月も自分と対峙していた。

 自分自身に打ち勝てって奴か。大体こういうのって、本体と同じ強さなはず……。

 偽物が一歩前に出て刀を振る。くっ、速い「俺こんなに速くないだろ!」と文句を言いつつ何とか躱す。

 クソッ本体より強いパターンか! 再び斬撃が鋭く俺に迫る。それを刀で受けて押し合うと、力負けせずに拮抗している。

 何度か打ち合っていると偽物の速さに慣れてきた。俺よりいくらか強いようだが、結月よりはかなり弱いな。徐々に冷静になってくる。

 よく動きを見ると、攻撃パターンは単調で何とかなりそうだ。結月が教えてくれたことを思い出しながら攻撃に転じる。

 何度か刀を打ち合った後、俺の刀が偽物をとらえ勝利できた。

 久奈と結月はとっくに終わっていたようだ。俺が偽物を倒したところで自動で庭に戻ってきた。ルイさんはまだ庭にいて、戻った俺達に問う。

「どうだった? 久奈さんと結月さんは物足らなかったかもしれないが」

「俺より強くて慌てたけど、何とか勝てました」

「いや、魂力は本物と同じだよ。技量は少々低いけどね。樹君はもう少し自信を持ってもいいよ。ということだ」

「……はい」

「久奈さんと結月さんは樹君よりずっと強いけど」

 ガクッと両手を地面につく。この人絶対わざと言ってるよな……。



 ルイさんは転移して帰ってい行ったが、まだ日が暮れるまでには時間もあるし、せっかくなので三人で剣技を磨くことにした。

 久奈と初めて刀のみで手合わせしてみた。俺からすると結月と同じくらい強いのでは? と思うほどだ。そのうえ魔法まで強いんだよな、チートだね……。

「久奈は刀だけでもかなり強いね。俺では全く勝てる気がしないよ」

「えへへ、私も結月に鍛えてもらってるからね」

 俺が息を切らしながら言うと、久奈は胸を張って得意げだ。その様子を見ていた結月が大まかな強さを教えてくれた。

「剣技のみで強さを測った場合、私が10だとすると、ルイさんは15以上、久奈は9~8、樹は5……じゃなくて7くらいかな」

 今、5って言ったよね……。気を使わせてごめんね。

 というわけで、少しでも強くなれるように、日が暮れるまで必死に鍛えたのだった。
 


 * * *



 今日は刀の練習をしっかりやって疲れたな。早めに寝るか……。

 今日も俺の部屋に一緒に寝に来た久奈と結月。格好はセクシー路線じゃなくて普通のパジャマだ。残念なような、ほっとしたような。

 久奈が俺の手を引きベッドに乗りながら言う。

「あんまり樹をいじめたらかわいそうになって……」

 結月も手を握って擦り寄りながら言う。

「樹がその気になるまで焦らず待つよ」

 二人に「おやすみ」とキスしてから瞼を閉じた。俺は二人の優しさに甘えてばかり。感謝してばかりだ。

 ところで毎日三人で寝てるけど、仮にすることになったら初めてなのにいきなり三人でするんだろうか……? その時考えればいいか……。
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