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いち

5 友達に

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「わあぁぁぁ……~っ!!」
「……怜、君?」


僕は今、すごく、すっっごく幸せです。



「まさか……今日の給食が…ココア揚げパンだったなんて………!」


兄さんが春巻きが好きなのと同じくらい……いや、それ以上に僕はココア揚げパンが好き!!


ココア揚げパンのためなら、何されてもいい……



「ほんと、いくらでも食べられるよね~…!いっただっきま………」



ふと、視線を感じた。




「……………陽太君?」
「…っ!」


給食の時は皆で机をまとめて班になって食べるから、隣の席の人が前になるシステム。

いつもは隣にいる陽太君は、今僕の前にいる。


ちなみに、葵君は僕の後ろの席だから、今は隣。

「どうか、した…?」
「……あ、いや…おれ、お腹空いてないからもし良かったらって思って……」


……っ!?


「いいの!!?」
「うん!はい、どうぞ。」


ココア揚げパンゲット!!
嬉しすぎて爆発する~~




……じゃ、なくて




「本当にいいの……?これ、滅多に出ないし……」
「うん!おれそんなに揚げパン好きじゃないから……それにココア揚げパンもきっと、怜君に食べてもらえた方がいいよ。」
「な、なにそれ…面白いこと言うね。」

まぁ、嬉しいから貰っちゃうけど……



ずっと顔が緩み切っている僕を、陽太君は嬉しそうに見ていた。



「………れ、怜君、俺のも食べます、か?」
「え?」

見ると、隣の葵君が悔しそうな顔をしていた。
……?

「い、いいの…?」
「も、勿論…!俺ココア揚げパンアレルギーだから……!!」

いや何そのアレルギー…!?
初めて聞いた……



(……陽太君だけずるい。俺だって、俺、だって………あれ……俺、なんで張り合って……)

「じゃ、じゃあ……ありがとね。」

変な葵君だなー。
まぁ、嬉しいからいいんだけど…!


「わーい、ココア揚げパンが3つも~~」
「良かったなー!」
「うん!ほんとありがとね、陽太君。」
「……!」


ん?

「……あの、さ」


陽太君が少し眉を下げて、恥ずかしそうに提案した。

「そ、その、君付け…やめない?おれ、普通に呼び捨てで呼ばれたいなーー、なんて。」

確かに君付けで呼びあってるけど……そんなに気になることなのかな。


「全然構わないよ、ね、葵。」
「えっ、俺まで…!?」







「よかったら友達になろうよ、よ…うた。」


葵の時はあんまり緊張せずにさらりと言えたけど、

やっぱ立場が違うだけで、陽太の名前を呼ぶのは緊張するなー……

てか、僕の立場で友達になろうなんて、失礼じゃ………


なんてことを考えていると、



陽太はすごく嬉しそうに、目を輝かせてぽかんと口を開けていた。



「…………いいの?」


「う、うん勿論!」
むしろそう聞きたいのはこっちだよ……



「………う、うれ、しい。」


予想外の反応。

この子、人当たりもいいし友達も沢山いるだろうに、こんな反応するなんて………





あ、そっか






「広く浅く」、だもんね。






「よ、よろしく…お願いします!」
「こ、こちらこそ…!」


以外に律儀な陽太に少し驚く。


「ほら、葵も!」
「え!?え、と……」
「よろしくお願いします!葵!!」
「…っうぅ……よ、ろしくお願いします………」



何はともあれ、また友達が出来て嬉しい。



ていうか繋がりがココア揚げパンって…流石ココア揚げパン様……食べるだけじゃなく友達まで………
もう、どう感謝すればいいか……


「よかったら帰りも一緒に帰らない?」
「う、うん!いいよ!確か同じ方向だった、よね……?」





まあそんな感じで、また新しい友達が出来ました。






ーーー


「うぅ……怜が心配だ……だからこれはストーカーではない、断じて。」
「電柱の後ろに隠れながら小学生の男の子をつけてる時点で、立派なストーカーなんだけどね。」

「…っ、何でいるんだよ……!水野和樹!!」
「いや、方向が一緒だから……あと、お前怖いし。」
「な……っ」




「まぁ……これ以上怜に友達なんて、できたら、きっと俺は失神してしまうんだろうな。」
「それくらいで失神て……涼って面白いな。」

水野和樹のことは無視して、怜達が昇降口から出てくるのを待った。

数分後。


(……怜!良かった、今日も可愛い………
隣にあいついるけど。)


いつも通りの様子の怜に安堵したが、次の瞬間。


「……え?」


怜のもう片方の隣に、褐色肌の男の子。

3人は、すごく仲良さげに……


ナカ、ヨサゲニ……………












「増えてるうぅぅぅあぅッ!!!!???」




俺は……失神した。





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