ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

最終話.「結婚しよう?」

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最終話後も後日談で3週間分程お話があります。長くなりましたがここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!


 
ーーー


「まだ卒業したくないな………なんか寂しい」
「同窓会とかしたいなー」


郁人と未来斗が話しているのを聞いてたら、



「あの……澪」




優馬に声をかけられた。




「……あ………、……うん、分かった。」





……緊張する。





ーーー




人気のない広場の所に来た。


「……あ…えっと、……ちょっとまだ寒いな、早めに終わらせるから」
「あ…うん……」



きっとこれが、高校生活最後の時間。




(正直まだ、もうちょっとだけいたいな)




………





「……ねぇ、優馬」
「うん…?」




こんな事言うのは恥ずかしい気もするけど、




「ちょっと座って話さない…?まだ…もうちょっとだけここに2人でいたい。」



目を逸らしつつ言ったら、数秒の沈黙の末に2回返事で頷かれた。





座るところがなかったから、部室前の段差に座って、



「ここ、秋になったらイチョウでいっぱいになるんだよね」
「うん……、たまに頭の上にイチョウ落ちてきたりしてさ、あれ気付かないよなー……」



話したのは他愛もないこと。


思い出とか、この学校で知ったこととか、



そして、将来の話もした。





「ほんとに大きなマンションに住んで、僕の事養う気なの?」
「当たり前だろ?!これは俺の夢!」
「……ふぅん」



それまで待っていればいい、多分そういう事だと思う。



「だから………マンション買った時は、その時はちゃんと、告白じゃなくて、結婚の申し込みをするから。」




………





「今からするのは………何?」




いつもみたいに求婚じゃないのなら、今からすることは、





「……結婚を前提にした告白、って感じかな?」





......





時間がゆっくりと流れていく気がした。


この熱には3月の少し冷えた空気が丁度いい。




「………ねぇ、優馬。」





いつも肌身離さず持っていた物を手に取った。




「……!」
「指輪。はめてくれない?」




夏祭りの日に優馬に貰った指輪。



毎日大事に持っていたけど、プールに落とした時に少しさびてしまった。




「……うん、うん。」

「少しさびたけど……ごめん」

「全然いいよ、もっと高くて綺麗で、澪に似合うものを買ってあげる。」





「とりあえずそれまではこれで」と笑って、渡した指輪を受け取ってもらった。







「………結婚式の真似事していい?」
「えぇ……まぁいいけど。」





僕達の他に誰もいないその場所で




「ふふ……、………病める時も健やかなる時も、」





左の薬指に、軽い鉄の感覚がした。







「永遠に、俺と一緒にいてくれますか?」







……………






……………




小さく微笑んだ。










「………はい…………!」











………






……………






ーーー




「これは………付き合ったということでいいのかな?」
「さっき優馬が結婚を前提にって言ってたし……とりあえず恋人同士って事じゃない…?」



指にはめられた指輪を見ながら、さっきとは少し違った空気に新鮮さを感じていると、




「………じゃあ待ってろよ、出来るだけ早く迎えに行くから!」
「はいはい……おじいちゃんになるまでは待たないからね」




その会話がおかしくって、2人で笑ってしまった。






「じゃあ……もう戻る?告白も終わったし」



なんて、返ってくる言葉は分かってるけど、




「ううん!もうちょっとここにいたい…!」
「……だよね、……僕も。」






まだ戻りたくなかった。




座り直して、今度は緊張も無くなりかけて雰囲気も柔らかくなった気がする。



「………ていうか優馬さ」
「うん?」



ふとこの前の事を思い出した。


あの………事故…とは言い切れないけど優馬が薬を奪おうと僕の口の中に舌を突っ込んできた事。



「あれが僕達の最初ってことでいい……?」
「えっ、駄目駄目駄目!!ちゃんとしようよ!今!」



……えっ




「今するの……?」
「あ、ごめん待って男子高校生相応の欲望が………、澪が良い時で」



……まぁ、





「僕は別に………今でも構わないケド」




恥ずかしくてやっぱり優馬から目を逸らした。





「………じゃあ、する?」
「ッ……、…しちゃう………?」




心臓の音がうるさい、優馬に聞こえてませんように。



「……しよ、…っか」




...





「「………」」



あの時はあっさりしてきたはずなのに、今回の優馬はすごく奥手だった。



「目瞑るのいつだろ……呼吸とか……勉強してこれば良かった………」



勉強なんてしなかった。するとも思わなかったし。




「………まぁ、とりあえずやってみればどうにかなるか!」
「う…うん、そうだね………」




もはや投げやり。


お互いにゆっくり深呼吸して、向かい合った。





そして、






「…………っ」




目を瞑って、口と口が重なった。




熱が伝わってきてすごく熱い。




「ん……、…ふ」




自然と声が漏れてしまった。






「……っふは!」





ようやく口を離して、随分長いと思ったそれは割と一瞬で終わった。




「………っ……あつ………」





体が熱い。






「これ……思ってた以上にやばいな………」
「うん……、………ねぇ、優馬」




離れる前に、これだけ伝えておきたかった。





「……ん………?」
「あの……、えっと、





………僕も、好きだよ」







………こんな事照れくさいから1回しか言わないけど。






「………ッ」





すると、



正面から強く、抱き締められた。



「………苦しいよ」
「ごめん……、ねぇ、待ってて、遠距離にはなるけど………気持ち変えないで待ってて……!」





………そんなの当たり前なのに。







「うん………ずっと、待ってるから。」








もう二度とこの熱が冷めないように、












……………ずっと、永遠に。













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