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5章 冬休み。
158.涙
しおりを挟む(海斗side)
午後3時。
「だいぶ遊んだなー!このあとどうする?」
「疲れた…!休憩する!」
澪が限界だったのか、いつもより大きめな声で訴えた。
飲み物を買って、ベンチで休む。
「もう乗りたいものも特に無いし……あと何かすることあるかな」
そう郁人が言うと、
「俺観覧車乗りたい!!」
って優馬が提案した。
……1つのベンチには5人入らなくて、とりあえず疲れてる澪と体が弱い郁人、あと何故か俺が座らせられた。
「じゃあ3人2人で分かれようよ、あれ確か4人乗りだったし………今座ってる人と座ってない人でいい?」
「「「わかったー」」」
澪だけはぐったりしていて、ぼーっと頷くだけだった。
ーーー
数十分並んで、ようやく乗れた。
「あのさ海斗……海斗がヘタレだってことは分かってるけど、いい加減こっちも見てられないんだよね、なんなら僕達で言うけど」
「っ……」
向かいでうとうとしている澪を抱き枕のようにちゃっかり抱きしめて澪の頭の上に顎を置く郁人。
それで説教されるのもなんか少しあれだけど、確かに俺ももう限界だった。
……あの人の前からいなくなってしまう。それを理解すると、未来斗の一言一言で苦しくなる。
「3学期もこんなこと出来たらいいな」
「冬休み明けのテスト分かんないから今度教えて」
今まではあまり気にしていなかった未来のこと。
当たり前に出来ると思っていたから。
(けど………もう、出来ない)
きっと、未来斗と遊べるのは今日で最後。
『海斗ー!』
「……っ…!」
1つ前のゴンドラから未来斗が手を振っていた。
(なんで………こんなに苦しいのに)
未来斗なら理解してくれるって、信頼してるはずのに、
(言ったらあの人が悲しんでしまうかもなんて、)
どうしても、言えない。
ーーー
(未来斗side)
観覧車から降りて、真っ先に海斗のところに行く。
「楽しかったなー!海斗はどうだった?」
「あ……うん、楽しかったよ」
こっちは優馬がいろいろふざけたりしてなかなか面白かった。
………けど、海斗は楽しくなさそうだった。
「………?」
すると郁人が、
「ねえ、ご飯食べない?ちょっと早いけど………」
「だな…!俺もうお腹すいた!!」
そんな感じで……まだ4時半だけど、ご飯を食べることにした。
ーーー
「カレー美味しい…美味しい……」
「澪、口の周りにカレーついてる」
「海斗!これ一口食べる?焼きそば!」
「あ…うん、ありがと」
フードコートでご飯を食べていると、やっぱりいつもの組み合わせになってしまって、
「あ、そうだ海斗!3学期になったら勉強の息抜きにまたなんか食べに行こうよ、俺奢るから!」
2年生の時はよく2人だけでご飯を食べに行ったりしていた。
なんの悪びれもなく………3学期の約束をすると、
「……………ぁ………」
………驚いた。
「海斗………?」
ふいにテーブルが水一滴分濡れて、顔を上げる。
「なんで………」
………泣いてる。
「…え、あれ…、なんで」
海斗も無意識だったのか、頬をつたって落ちていく涙を不思議そうに見ていた。
他の3人も、驚いて手を止めてこっちを見ている。
「あ……ごめ」
急いで涙を拭こうと袖で目下を擦る海斗。
「………あの、ちが」
………………
(やっぱり、俺が悪いか)
「………ごめん海斗、意地悪しすぎた。」
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