ゆうみお

あまみや。旧

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2章 夏休み。

103.指輪

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(優馬side)




しばらくの間言葉無しに花火を見上げていた。





「………すごいね、綺麗だね。」

「うん……また来年も、見れたらいいな」







卒業したって離れ離れになったって、






きっと………一緒に見れるはずだ。








「………あの、さ……澪」
「……なに?」






名前を呼ぶと少し前にいた澪は俺の方に振り返った。







「その……流石に調子に乗りすぎだし、イタいだろうってのは分かってるんだけど…………」


「…?何?」






柄にもなくもじもじしてしまって、段々澪は不機嫌そうに目を細めていった。






「別に優馬がイタいのは元からだし、今更何したって引いたりしないよ、」


「……!あ、あの………本当にイタいんだ!!骨折するんじゃないかってくらいイタい!!」
「意味わかんないけど焦らさないでよ!!!」






……………っ………







あぁ……






(せっかく買えたのに………渡すのはこんなに緊張するなんて………)






珍しくかなり緊張してしまい、すぐにでも逃げ出したくなってしまっていた。






……………でも、俺だって………男だ。








「あ……あの!!もう俺何やってもイタいから!!もうイタいのが俺でいいから………その……………










………これ……………」









顔が真っ赤になっているのが自分でもわかって、すごく恥ずかしかった。



あんまり顔は見ないでくれと祈りながら………買ったものを、渡した。










「………………それっ、て………………………」






四角い白の小さい箱。



半分に裂けて中には、









小さな指輪が…………入っていた。











「ゆ……びわ………?」




時折光る小さな宝石。




 

イミテーションではあるけど…………









「今は安いものしか買えない学生だけど…………








その………いつか、…………本物を、渡してもいいです…か……………………?」










出会った頃からずっと言ってきた。







言いすぎて軽い意味にとらえられていたと思う、けど………それでも、今日は








「その…俺と、……………結婚、しよ………?」









本当にそう思ってるって、伝わって欲しかった。









ーーー


(澪side)






本格的な箱に入れられてはいるけど、中身は偽物のダイヤ。



リングのサイズは少し大きめで、僕の指にはぴったり入りそうに無い。





買う前に指のサイズも聞いてこないような指輪の持ち主から………告白、されてしまった。







……………まあ、でも何より






「気が……早すぎるよ」





「だ……だよな……」







本当………馬鹿だな………









でも、まぁ………





「……あ…じゃあ「待って、」…え?」









「う………受け取ってやらないなんて、言ってないじゃん……………」








ーーー




「え……と、じゃあ………告白は………」





……………!







「か……考えさせて、欲しい」








ーーー







(そっか……優馬は本当に、僕の事が好きなんだ………)





また隣に座って、優馬はご機嫌そうに花火を見て、僕は受け取った指輪を見ていた。




(本当なら人から好意を持たれること、大嫌いなはずなのに………)
















………………どうして、嫌じゃ………なかったんだろ。

















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