1話30秒で読める140字小説集

睡眠の奪い合い/無理無理‼意味わかんない‼/星を掴む少女/5000ピースの白地に白文字の暗号‼/他にも「洗濯機係」や「ご機嫌伺い係」などある

#81『睡眠の奪い合い』

私たち姉妹はお互いの睡眠を肩代わり出来る体質を持っている

母方の姉妹に多い体質のようで
母と叔母も忙しい時は相手の代わりに睡眠を取っていたらしい

眠ることが好きな学生の妹
昼夜逆転の仕事に就いている姉
その二人に挟まれてブラック企業に入社した私

最後にいつ睡眠を取れたのか
私はもう覚えていない



#82『えっ‼怖い怖い‼意味わかんない‼　無理無理‼今すぐ別れたい‼‼』

彼氏とのデートで美術館に来ている
彼氏は展示物のうんちくを楽しそうに語っていた
しかし、ある展示物の前に来た時
彼氏の知識の吐き出しが止まる
そこは何も無い場所に『不可視の女神』と書かれた説明文が置いてあった

彼氏は何も無い空間をまじまじと眺め

「これ偽物だ……」

そうつぶやくと監視係を呼んだ



#83『星を掴む少女』

男は夜道を歩いていると
星空を見上げ
両手を掲げる少女を見かけた

少女は掲げた手を握り
笑い声を上げ
くるくると踊っている

男も夜空を見上げた
星が散らばり輝いている
その中で眩しさを放つ光に目を奪われた

少女は星に向けた手を何度も握りしめ
嬌笑と共に踊り続ける

そして、男を魅了していた星明が消滅した



#84『最高難度‼5000ピースからなる白地に白文字の暗号‼』

男は神に選ばれ
毎朝予言書が送られてきた

予言書には男が解決すべき危機が記され
危険度により解読難度が違っていた

解読した予言書を頼りに
何度も危機を解決していく

再び神が現れ、忠告を残した
「今までにない危機が迫っている」

そして朝、男は呆然とした
白1色のジグソーパズルが山のように積まれている



#85『他にも「洗濯機係」や「装束のご機嫌伺い係」などがある』

私達は神事に使用する
大切な装束を管理している

まず使用後の装束を聖水に浸し
次に精霊の風を存分に浴びせ
最後に大聖女の祈りで祝福を纏わせる

装束に触れられるのは
神が認める聖人聖女のみ

私達は役割分担をして
作業に勤しんでいる

私も聖女の誇りを忘れず
装束が風で飛ばされないよう
洗濯バサミ係を頑張る