結~ゆい~ ソレを愛と呼ぶならば。

ゆう

文字の大きさ
9 / 29
学生時代

朝倉紅緒

しおりを挟む
 朝、いつものように修司を迎えに行くと、家から出てきた修司の顔色が悪かった。
 体調管理を気にしている修司にしては珍しいことだ。
 気だるそうな、風邪を引く直前のような様子だ。
 修司とは、子供の頃から一緒にいる幼馴染みであり、婚約者でもあった。
 修司の事は幼い頃から好きだったし、婚約者としての立場から、大人になっても、ずっと一緒にいることが出きると信じて側にいた。
 それくらい、修司を見てきているのだから、どういう状態なのかも分かっている。
「…体調が悪いなら、休んだ方が良いわよ」
「…少し怠いだけだ…」
 修司はそう言って苦笑いしている。
 そんな筈無いのに…。
 でも、言い出したら聞かない頑固さを持っているのも知っている。
「…。」
 今は、何を言っても無駄だと思った紅緒は、口を閉ざした。
 そして学校に付き、別々の教室に入る前に、一言、忠告した。
「倒れる前に、保健室に行きなさい」
「ああ。分かってる…」
 紅緒はため息をついて、教室に入っていった。
 自分の顔色の悪さに気付いていない…。
 紅緒は次の休み時間に、修司の様子を見に行こうと思いながら、自分の席に着いた。

 休み時間になり、すぐに修司の様子を見に行こうとしたが、先生に呼ばれて足止めされてしまった。
 こういう時は、クラス委員になど、なるものではないと、思ってしまう。
 宿題のプリントを、明日、集めて持ってくるようにとの、事だった。
 いつもの事だから、今さら…そんな事を言わなくても…と思ってしまう。
 と、クラスの仲の良い女子が駆け寄ってきた。
「紅ちゃん!!如月君が保健室に連れて行かれたよ!!」
 紅緒はスッと、血の気が下がり、彼女達にお礼を言うと、足早に保健室に向かった。
 
 紅緒が保健室に入ると、ベッドに横たわる修司の側に、男子生徒がいた。
 修司を連れてきてくれたのだろう。
「お前、かなり熱があるぞ」
「修司!!」
 紅緒が駆け寄ると、その男子生徒が、こちらを向いた。
 …石塚、和也…?
 紅緒は不思議そうに石塚を見た。
 石塚は、紅緒と同じクラスだ。
 なぜ、その石塚が、隣のクラスの修司を保健室に連れてくることが出来る?
 疑問に思いながらも紅緒は修司に近付いた。
「…休んだ方が良いって、言ったでしょう」
「…そう…みたいだな…」
 修司が弱々しく返事する。
 こんな姿の修司は、久しぶりに見る。
 熱があるのだろう、顔を赤くして目を閉じ始めた。
 起きているのも、辛いのかもしれない。
 紅緒は取りあえず、ハンカチを濡らすと、修司の額に乗せた。
 今日に限って、保健の先生が居ない!
 紅緒は石塚の方を向くと、所在無しげに呆然と立っていた。
「…修司の事、連れてきてくれて、ありがとう」
「…別に…半分、俺のせいだからな…」
 石塚は苦笑いして、修司を見る。
「…どういう事!?」
 紅緒は石塚を睨み付けた。
 今まで、二人の接点はなかった筈。
「…俺の親父の事務所の別室に如月がいた。…あいつらはこいつが何者か知らなかった」
「それで!?」
「…俺がもらった」
「…。」
 なぜ、石塚の父親の事務所に修司が居たのか、分からないが、…石塚がもらった?
「…あいつらに、危害を加えられる前に、俺が引き取った」
 危害を加えられる前に、引き取ったなら、なぜ、修司は熱を出しているの!?
「…それで、修司のこの状態と何の関係が有るの!?」
「…色々有って、如月に無理させた…」
 石塚はバツが悪そうにそう、言いよどむ。
 …何があったか分からないが、反省はしているみたい…。
「…いいわ。修司の事、心配して手を貸してくれたのだもの…」
 紅緒がため息をついて、修司を見ると、チャイムが鳴った。
「授業始まるわ。教室に戻りなさい」
 紅緒がそう言うと、
「あんたは?」
「修司を迎えに来るように、手配する。病院か、家かは聞いて見ないと分からないけど…」
 熱が下がらないようだったら、病院に連れていくしかない。
「…ああ。…家で療養の方が良いかと…」
 石塚が何か知った風に、そう言ってくるので、紅緒は石塚を睨み付けた。
「…何を知っているの?」
「…言えない」
「…分かったわ、家に連れて帰る」
 …石塚が知っていて、私に知られたくない事とは何?
 それより、修司を連れて帰らなくては…。
 如月家だったら、家に医者を呼んで、診察してもらうことは、出来るはず。
 紅緒は保健室を出て、早退の手続きをするため、職員室に向かった。








 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

処理中です...