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学生時代

朝倉紅緒

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 朝、いつものように修司を迎えに行くと、家から出てきた修司の顔色が悪かった。
 体調管理を気にしている修司にしては珍しいことだ。
 気だるそうな、風邪を引く直前のような様子だ。
 修司とは、子供の頃から一緒にいる幼馴染みであり、婚約者でもあった。
 修司の事は幼い頃から好きだったし、婚約者としての立場から、大人になっても、ずっと一緒にいることが出きると信じて側にいた。
 それくらい、修司を見てきているのだから、どういう状態なのかも分かっている。
「…体調が悪いなら、休んだ方が良いわよ」
「…少し怠いだけだ…」
 修司はそう言って苦笑いしている。
 そんな筈無いのに…。
 でも、言い出したら聞かない頑固さを持っているのも知っている。
「…。」
 今は、何を言っても無駄だと思った紅緒は、口を閉ざした。
 そして学校に付き、別々の教室に入る前に、一言、忠告した。
「倒れる前に、保健室に行きなさい」
「ああ。分かってる…」
 紅緒はため息をついて、教室に入っていった。
 自分の顔色の悪さに気付いていない…。
 紅緒は次の休み時間に、修司の様子を見に行こうと思いながら、自分の席に着いた。

 休み時間になり、すぐに修司の様子を見に行こうとしたが、先生に呼ばれて足止めされてしまった。
 こういう時は、クラス委員になど、なるものではないと、思ってしまう。
 宿題のプリントを、明日、集めて持ってくるようにとの、事だった。
 いつもの事だから、今さら…そんな事を言わなくても…と思ってしまう。
 と、クラスの仲の良い女子が駆け寄ってきた。
「紅ちゃん!!如月君が保健室に連れて行かれたよ!!」
 紅緒はスッと、血の気が下がり、彼女達にお礼を言うと、足早に保健室に向かった。
 
 紅緒が保健室に入ると、ベッドに横たわる修司の側に、男子生徒がいた。
 修司を連れてきてくれたのだろう。
「お前、かなり熱があるぞ」
「修司!!」
 紅緒が駆け寄ると、その男子生徒が、こちらを向いた。
 …石塚、和也…?
 紅緒は不思議そうに石塚を見た。
 石塚は、紅緒と同じクラスだ。
 なぜ、その石塚が、隣のクラスの修司を保健室に連れてくることが出来る?
 疑問に思いながらも紅緒は修司に近付いた。
「…休んだ方が良いって、言ったでしょう」
「…そう…みたいだな…」
 修司が弱々しく返事する。
 こんな姿の修司は、久しぶりに見る。
 熱があるのだろう、顔を赤くして目を閉じ始めた。
 起きているのも、辛いのかもしれない。
 紅緒は取りあえず、ハンカチを濡らすと、修司の額に乗せた。
 今日に限って、保健の先生が居ない!
 紅緒は石塚の方を向くと、所在無しげに呆然と立っていた。
「…修司の事、連れてきてくれて、ありがとう」
「…別に…半分、俺のせいだからな…」
 石塚は苦笑いして、修司を見る。
「…どういう事!?」
 紅緒は石塚を睨み付けた。
 今まで、二人の接点はなかった筈。
「…俺の親父の事務所の別室に如月がいた。…あいつらはこいつが何者か知らなかった」
「それで!?」
「…俺がもらった」
「…。」
 なぜ、石塚の父親の事務所に修司が居たのか、分からないが、…石塚がもらった?
「…あいつらに、危害を加えられる前に、俺が引き取った」
 危害を加えられる前に、引き取ったなら、なぜ、修司は熱を出しているの!?
「…それで、修司のこの状態と何の関係が有るの!?」
「…色々有って、如月に無理させた…」
 石塚はバツが悪そうにそう、言いよどむ。
 …何があったか分からないが、反省はしているみたい…。
「…いいわ。修司の事、心配して手を貸してくれたのだもの…」
 紅緒がため息をついて、修司を見ると、チャイムが鳴った。
「授業始まるわ。教室に戻りなさい」
 紅緒がそう言うと、
「あんたは?」
「修司を迎えに来るように、手配する。病院か、家かは聞いて見ないと分からないけど…」
 熱が下がらないようだったら、病院に連れていくしかない。
「…ああ。…家で療養の方が良いかと…」
 石塚が何か知った風に、そう言ってくるので、紅緒は石塚を睨み付けた。
「…何を知っているの?」
「…言えない」
「…分かったわ、家に連れて帰る」
 …石塚が知っていて、私に知られたくない事とは何?
 それより、修司を連れて帰らなくては…。
 如月家だったら、家に医者を呼んで、診察してもらうことは、出来るはず。
 紅緒は保健室を出て、早退の手続きをするため、職員室に向かった。








 


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