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熊族の町ベイエル
帰還 ~シュウベル~
しおりを挟む それからアラカとシュウベルは、現在確認されている、魔素溜まりの印を地図上に記し、今朝、巡回したときの状況報告を照らし合わせ、唸った。
「地図外の可能性が有るな…」
「この奥地には、誰も行かないからな…」
地図上に記した場所は、毎日巡回していて、多少変化があっても魔素濃度もそれほど高くない。
と、なれば、巡回ルートの外から、三つ眼の獣が来た可能性が有る…。
「リーン様に来てもらった方が良さそうだな」
『森の守り人』であるリーンならば、『風使い』や『土使い』を使って、離れた場所も捜索することが出来る。
「それも要請に、書いておく」
アラカとシュウベルは大きなタメ息を付いた。
オルガを迎えに来ただけなのに、大変な事になってしまったな…。
討伐隊が出ていってから、一時間は経っていないが、外がザワザワとし始めた。
詰所の応接室からアラカとシュウベルが、外に顔を覗かせると、門が開き、討伐隊が戻ってきた処だった。
シュウベルは慌てて詰所を出る。
オルガは無事なのか?
詰所から出ると、討伐隊の一人がオルガを抱え、そのそばに、心配そうについてくるアレイの姿が見えた。
「オルガ!」
シュウベルが駆け寄ると、オルガは討伐隊の腕の中で、青い顔をして眠っていた。
顔色は悪いが、大きな怪我をした感じはしない…。
「…魔力切れを…起こしたんだ…」
そばにいたアレイが泣きそうな顔で、そう答える。
「魔力切れ…」
シュウベルはホッとして力を抜く。
「医務室で、寝かせておけ」
後ろに付いてきたアラカさんがそう言うと、オルガを抱えた討伐隊が、詰所の中へ入って行き、アレイがあとに続いて入って行った。
オルガの事も気になるが、三つ眼の獣の事も気になる。
シュウベルは一瞬迷って、アラカと一緒に帰還した討伐隊集まる場所に向かった。
五匹の三つ眼の獣は討伐され、解体小屋に運ばれたらしい。
魔素を多く取り込んだ三つ眼の獣は、食べることは出来ないが、解体して薬や衣料などの生活用品として活用される。
討伐隊の半数は、マロイ湖周辺の調査に向かい、異変がなければ、犬族側の街道の通行を再開をするようだ。
注意をするように警告を出して…。
アラカが警備隊に指示を出して、動き始めたので、シュウベルは詰所の医務室に眠るオルガの元に向かった。
オルガが魔力切れのままだと、明日、帰れないかもしれないな…。
シュウベルは悩んだ。
熊族の町ベイエルは魔素濃度が『クルーラ』に比べて薄い。
空気中の魔素を吸収して、身体に魔力が戻ってくるのには時間がかかる…。
普段『クルーラ』にいるオルガは、『クルーラ』の濃い魔素に身体がなれてしまっているので、余計に時間がかかるだろう…。
『魔力譲渡』でもして、意識だけでも浮上させておかないと、眠ったままになって、後々大変そうだ。
医務室に入ると、オルガが眠るベッドの横のイスにアレイが座り、泣きそうな顔をしてオルガの手を握りしめていた。
ああ、こいつの為にも『魔力譲渡』をして、意識を取り戻させておいた方が良さそうだ。
「マロイ湖で何が有ったか話せるか?」
シュウベルがそう訪ねると、アレイはシュウベルの方を向いて頷いた。
アレイは、だいぶ落ち着いたみたいだ。
シュウベルは、隣の部屋にいた、警備隊に声をかける。
ココは熊族の詰所なので、シュウベルが聞くわけにはいかない…。
熊族の警備隊の一人が頷いて医務室に入り、アレイに当時の状況を話してもらった。
二人で釣りに行って、なかなか釣れなくて、マロイ湖周辺の場所を移動して、今日は釣れないから帰ろうと、帰り出したとき、背後から襲われて、オルガの護身用のブレスレットが光って、その隙に逃げ出したそうだ。
持たせた、対物用のブレスレットは効果を発揮したみたいだな。
逃げるとき、オルガが風魔法を使って飛び上がって、そのまま木の上に避難し、『ヒコウキ』を熊族の警備隊に向けて飛ばしたのだと…。
そう言えば、ベイエルに着いたとき、オルガの魔力を少し感じる『ヒコウキ』が、シュウベルの元に飛んできたと伝えると、アレイは眼を丸くして驚いていた。
アレイいわく、木の上に避難したとき、オルガが落としてしまった『ヒコウキ』ではないかと言うことだった。
「…。」
オルガには『ヒコウキ』を二個持たせていた。
もしかしたら、『ヒコウキ』に魔力を込めて風属性にしたのが、シュウベルだったから、なのかもしれない…。
向かう場所を設定しなかったので、近くにいた俺の所に戻って来たのかもしれないな…。
アレイの話が終わり、シュウベルは言った。
「さてと、『魔力譲渡』でオルガの意識を戻すか…」
「「…。」」
アレイと話を聞きに来ていた警備隊員が目を見開き、シュウベルを見る。
「うん?」
俺、なんか変なことを言った?
◇◇◇◇◇
~シュウベル~は、もう一話で終わる予定です。
なんだかんだ言って、シュウベルも過保護です。
「地図外の可能性が有るな…」
「この奥地には、誰も行かないからな…」
地図上に記した場所は、毎日巡回していて、多少変化があっても魔素濃度もそれほど高くない。
と、なれば、巡回ルートの外から、三つ眼の獣が来た可能性が有る…。
「リーン様に来てもらった方が良さそうだな」
『森の守り人』であるリーンならば、『風使い』や『土使い』を使って、離れた場所も捜索することが出来る。
「それも要請に、書いておく」
アラカとシュウベルは大きなタメ息を付いた。
オルガを迎えに来ただけなのに、大変な事になってしまったな…。
討伐隊が出ていってから、一時間は経っていないが、外がザワザワとし始めた。
詰所の応接室からアラカとシュウベルが、外に顔を覗かせると、門が開き、討伐隊が戻ってきた処だった。
シュウベルは慌てて詰所を出る。
オルガは無事なのか?
詰所から出ると、討伐隊の一人がオルガを抱え、そのそばに、心配そうについてくるアレイの姿が見えた。
「オルガ!」
シュウベルが駆け寄ると、オルガは討伐隊の腕の中で、青い顔をして眠っていた。
顔色は悪いが、大きな怪我をした感じはしない…。
「…魔力切れを…起こしたんだ…」
そばにいたアレイが泣きそうな顔で、そう答える。
「魔力切れ…」
シュウベルはホッとして力を抜く。
「医務室で、寝かせておけ」
後ろに付いてきたアラカさんがそう言うと、オルガを抱えた討伐隊が、詰所の中へ入って行き、アレイがあとに続いて入って行った。
オルガの事も気になるが、三つ眼の獣の事も気になる。
シュウベルは一瞬迷って、アラカと一緒に帰還した討伐隊集まる場所に向かった。
五匹の三つ眼の獣は討伐され、解体小屋に運ばれたらしい。
魔素を多く取り込んだ三つ眼の獣は、食べることは出来ないが、解体して薬や衣料などの生活用品として活用される。
討伐隊の半数は、マロイ湖周辺の調査に向かい、異変がなければ、犬族側の街道の通行を再開をするようだ。
注意をするように警告を出して…。
アラカが警備隊に指示を出して、動き始めたので、シュウベルは詰所の医務室に眠るオルガの元に向かった。
オルガが魔力切れのままだと、明日、帰れないかもしれないな…。
シュウベルは悩んだ。
熊族の町ベイエルは魔素濃度が『クルーラ』に比べて薄い。
空気中の魔素を吸収して、身体に魔力が戻ってくるのには時間がかかる…。
普段『クルーラ』にいるオルガは、『クルーラ』の濃い魔素に身体がなれてしまっているので、余計に時間がかかるだろう…。
『魔力譲渡』でもして、意識だけでも浮上させておかないと、眠ったままになって、後々大変そうだ。
医務室に入ると、オルガが眠るベッドの横のイスにアレイが座り、泣きそうな顔をしてオルガの手を握りしめていた。
ああ、こいつの為にも『魔力譲渡』をして、意識を取り戻させておいた方が良さそうだ。
「マロイ湖で何が有ったか話せるか?」
シュウベルがそう訪ねると、アレイはシュウベルの方を向いて頷いた。
アレイは、だいぶ落ち着いたみたいだ。
シュウベルは、隣の部屋にいた、警備隊に声をかける。
ココは熊族の詰所なので、シュウベルが聞くわけにはいかない…。
熊族の警備隊の一人が頷いて医務室に入り、アレイに当時の状況を話してもらった。
二人で釣りに行って、なかなか釣れなくて、マロイ湖周辺の場所を移動して、今日は釣れないから帰ろうと、帰り出したとき、背後から襲われて、オルガの護身用のブレスレットが光って、その隙に逃げ出したそうだ。
持たせた、対物用のブレスレットは効果を発揮したみたいだな。
逃げるとき、オルガが風魔法を使って飛び上がって、そのまま木の上に避難し、『ヒコウキ』を熊族の警備隊に向けて飛ばしたのだと…。
そう言えば、ベイエルに着いたとき、オルガの魔力を少し感じる『ヒコウキ』が、シュウベルの元に飛んできたと伝えると、アレイは眼を丸くして驚いていた。
アレイいわく、木の上に避難したとき、オルガが落としてしまった『ヒコウキ』ではないかと言うことだった。
「…。」
オルガには『ヒコウキ』を二個持たせていた。
もしかしたら、『ヒコウキ』に魔力を込めて風属性にしたのが、シュウベルだったから、なのかもしれない…。
向かう場所を設定しなかったので、近くにいた俺の所に戻って来たのかもしれないな…。
アレイの話が終わり、シュウベルは言った。
「さてと、『魔力譲渡』でオルガの意識を戻すか…」
「「…。」」
アレイと話を聞きに来ていた警備隊員が目を見開き、シュウベルを見る。
「うん?」
俺、なんか変なことを言った?
◇◇◇◇◇
~シュウベル~は、もう一話で終わる予定です。
なんだかんだ言って、シュウベルも過保護です。
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