眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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熊族の町ベイエル

本屋

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「新しい本、いつもの場所に置いてあるぞ」
「ありがとうございます」
 オルガはそう返事して、入って右側の本棚に向かった。

 ここの本屋は熊族の町ベイエルの中で、一番たくさん本を置いている。
 初めてアレクさんに連れてきてもらった時、何処にどんな本が有るのかを見て回るだけで半日くらいかかってしまった。
 まあ、本のある場所を見るだけでなく、気になる本を手にとって、ペラペラと見たりしていたからだけど…。
 そんな僕に何も言わず、付き合ってくれたアレクさんには申し訳なかったが…。
 『クルーラ』の貸本屋さんに置いてある本は、店主の趣味に少し片寄っているので、ちょっと違う本を読んでみたかったのもある。
 
 きっかけはアレイの部屋にあった本。
 本棚に見たことのない大きさの本が並べられていたから気になった。
 『クルーラ』に有る本は主に『図鑑』『魔導書』『展開図』などの、魔力紙マリョクシに『複写魔法』を使って作られたもの。
 保存用とか、学校とか、主に専門職の人たちが欲しがるモノばかりだ。
 貸本屋では、それらの本の閲覧と、少しの娯楽小説。
 だからアレイの部屋にあった、いろんな国を冒険する物語はとても斬新でワクワクして、面白かった。
 こんな読み物も有るのかと…。
 この本のおかげで、僕の世界も少し広がった気がした。
 これらの本は、魔力紙マリョクシではなく、量産型の普通の紙だった。
 もろく破れやすいのが難点だが、価格は値ごろなので何冊でも買えそうだった。
 最初は、アレイの部屋に無かった本で、気になったのを集めようとしたら、冊数が増えていったので、アレクさんに止められた。
「毎月来るんだから、十冊まで。次に来た時の楽しみにすれば良いだろう」
 そう言われて悩んだ挙げ句、十冊選ぶのに時間がかかってしまった。
 
 そして選んでから気が付いたが、購入した十冊を、『クルーラ』まで、どうやって持って帰ろう。
 魔力紙マリョクシの本ほど大きくはないが、量産型の紙を使っているので、そこそこ厚みが有る。
 まず、アレクさんの家に持って帰って帰るだけでも、かなりの重量だ。
 それを懸念してアレクさんに相談したら、アレクさんが本屋のおじさんと話を付けてくれ、配達してくれるようになった。
 良かった。
 それで、配達の場所が『クルーラ』だと聞いて、おじさんは驚いていた。
 まさか僕が『クルーラ』に住んでいるとは思わなかったみたいだ。
 『クルーラ』に荷物を送る場合、いくつかの手続きが有るのと、獣馬車が『クルーラ』から来て、翌日の朝、出発するまでに荷物を乗せないといけないので、早めに配達所に届けないといけないそうだ。
 オルガは手続きの方法を教えてもらいながら、専用の用紙に『クルーラ』『白の館』『オルガ』と書き込んで、紙に魔力を流した。
 専用の紙に魔力を流すことによって、今、荷物が何処に有るのかを追跡することが出きるのと、荷物が行方不明にならないようにするためと、盗難の予防になるそうだ。
 これだけで届くのが、ちょっと不思議だが、『クルーラ』に住んでいる人数が少ないから出きることみたいだ。
 本の代金と、配達の代金を払うと、オルガはニコニコと本屋を後にした。
 

 そんな経緯もあって、おじさんは僕の事を覚えていてくれて、『クルーラ』へ送る準備を常にしておいてくれるようになった。
 本を買うのは、熊族の町に着いた日の方が、確実に一緒に『クルーラ』へ持って帰れると分かってからは、なるべく来るようにしている。
 タイミングが悪いと、次の便になってしまって、待ちきれなくなってしまうからだ。
 新しい本と、この間の続きの本。
 オルガは十冊選ぶと、カウンターのおじさんの所で、送る手続きを始めた。

「今日は可愛い護衛だな」
 手続きが終わると、おじさんがそう言ってきた。
 いつもはアレクさんと、たまにアレイが付いてくるくらいだが、今日はリキヤとリシトも一緒だ。
 そっか…。
 リキヤとリシトは僕の護衛も兼ねて来てくれたんだ。
 日中、町の中がある程度安全とはいえ、熊族に比べて小柄な人族は人目を引く。
 それも子供の僕だと余計にだ。
 熊族の子供三人と一緒にいれば、大人は客人の子供だと警戒する。
 それも、果樹園の主の子供達だと分かれば、危険な目に遭わないか、気をかけてくれるのだ。
「はい。ありがたい友人です」
 オルガはそう言って微笑んだ。

 そう言えば、二人は何処にいるのだろう…。
 アレイは僕と同じように本を探して閲覧していたのを見かけたから、本棚の方にいるはず…。
 オルガがキョロキョロと見回すと、おじさんがカウンターの奥の閲覧席を指差した。
 オルガが指差す方を見ると、リキヤとリシトは、図鑑を広げて覗き込んで見ていた。
 



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