眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

ヤッコ 3

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 『クロス』の方が変化し始めた事に気が付き、ヒナキさんの服をクイクイと引っ張った。
「変わり始めた」

 そう言った僕の声に反応して、全員の視線がテーブルの上に置かれた『クロス』に向く。
 ゆっくりと黒い光が収まり、ソレと同時に模様が浮き出てくる…。
 『ヤッコ』と同じように、中心に向かって渦を巻いているが、今度は左回り…。
 『ヤッコ』とは逆を向いている…。
 でも、飛び出ている部分は、四ヶ所共に『ヤッコ』と同じ模様…。
「「「「「「…。」」」」」」
 なんとも言えない沈黙が続いた。

「左回りの渦は『放出』…。『ヤッコ』とは逆だ…」
 一ヶ所を変えただけで、反対の逆向きになるなんて思いもしなかった。
「…こいつは『盾』だな…」
 『クロス』を見て、そう言ったのはシュウベルさん。
 『盾』?
 シュウベルさんは、何か疲れたような顔をして言う。
「『ヤッコ』が『吸収』で、こっちが反対の『放出』を模様を示すならばコレは『盾』だ。魔法で攻撃された時、ソレを跳ね返し『放出』する『盾』だと思う。…俺達、警備の者が持っている魔道具に近い…ような気がする…」
 そう言って、服の襟元を触り、苦笑いする。
「警備の制服の襟元に、飾りに見える魔道具の釦が付いて、魔法の攻撃に反応して、魔法が当たる直前に、軌道を回避してくれるすぐれ物だ」
 もしかして、制服を着ていると思って、襟元に触った?
「この『クロス』を『青の館』の者達で試しても良いか?同じように使えれば、魔道具を壊さずに済む…」
「おまえ達、壊しすぎ!」
 ヒナキさんがそう言って、シュウベルさんの方を睨み付けると、シュウベルさんは苦笑いしていた。
 もしかして、ヒナキさんが作った魔道具?
 それはヒナキさん、怒るよ…。


「話は反れてしまったが、『ヤッコ』は攻撃を受けた時、替わりに衝撃を受け取ってくれる『移し身』の可能性が有る。『個人』で模様が変わるのなら、魔力を入れた者の『移し身』として、攻撃を『吸収』してくれ、当人は助かるのかも…」
 カヤックさんが難しい顔をして言う。
「そうで有れば、一回きりの、本当の御守りになるかもな…」
「…。」
 話の内容が、魔法で攻撃されるとか、攻撃を受けるとか、ちょっと殺伐とした内容になってきた。
 コレって、生活するのに役立つのではなく、警備とか争いに役立つって事なんだよね…。
 今の僕にはちょっと付いていけない…。
 もし、本当にソウならば、『ヤッコ』と『クロス』は、あまり外に広めない方が良いよね…。
 『クルーラ』を守るために使うのなら良いけれど、盗賊とか悪いことをしようとする人に渡ってしまうと、悪用されかねない…。
 不安になって隣にいるヒナキさんの方を見ると、ヒナキさんは微笑んで僕の頭を撫でてきた。
 なんかコレで誤魔化されているような気もするけれど、嫌じゃないんだよね…。

 最終的な話では、『ヤッコ』と『クロス』の件については、『青の館』の方で責任を持って性能を確かめる事と管理をする事。
 コレは『クルーラ』の警備、護衛関係のみで試してみて、報告書を提出する事。
 その結果から、今後の事を考えよう。と、言うことになった。
 僕はとりあえず、『ヤッコ』と『クロス』を量産する事に…。
  
 少し疲れた様子のカヤックさんが、属性を入れていない『クロス』を少し欲しいと言ったので、僕はカバンから折り魔紙マシを取り出し、その場で『クロス』を五枚折る。
 そしてカヤックさんが、土属性の魔力を入れると茶色に変化した。
 『ヤッコ』の時には闇属性にしか反応しなかったのに…。
 少し形が変わるだけで、他の属性にもなる?
「土属性の『放出』『盾』ならば、植物園の方で使えないかと思ってね…」
 どうやって使うつもりなのか分からないが、カヤックさんも何か思い付いたのだろう…。
 カヤックさんが僕に茶色になった『クロス』を手渡してくる。
 魔力を入れるって事だよね。
 オルガは『クロス』を受け取り、少しづつ魔力を入れ、茶色に光った段階で魔力を止め、テーブルの上に置いた。
 さあ、次はどんな反応になるのだろう。
 模様が浮き出る?
 土属性の模様なのかな?
 ちょっとワクワクしながら見ていると、今度はヒナキさんが『クロス』を水属性の青色に変えて、渡してきた。
 もう、『クロス』のお試しが始まっているんだね。
 オルガはニコニコと微笑みながら、受け取った『クロス』に魔力を入れる。
 『ヤッコ』は試しているけれど、『クロス』は今、ココで形になったばかりだもんね。
 オルガは五人が見守るなか、『クロス』に魔力を入れて、変化を待った。





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