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森の聖域クルーラ
初めての買い物 5
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「さて、次はどこへ行く?」
「うんとね…」
オルガはヒナキさんと一緒に『クルーラ』を散策しながら買い物を楽しんだ。
そしていくつもの店を渡り歩き、石畳の道の終点、『クルーラ』の出入口であるの小屋と、宿屋が見えてきた。が、宿屋の手前、少し奥まった所に建物が見えた。
石畳の道から少し奥に入って、建物の両脇が木で囲まれ、あまり目立たないように建てられている。
「あの建物は何?」
「あれは湯場。来客向けの風呂屋だよ」
「お風呂?」
オルガは首を傾げた。
そう言えば、『白の館』にはお風呂場が有るから気にならなかったけれど…。
聞けば、宿屋は宿と食事だけの店なので、風呂場はない。
お湯を頼んで、身体を拭くだけでも良いが、ゆっくりと風呂に入って疲れを取りたい者達に取っては、不便だったそうだ。
なので、火を使うガラス工房や陶器屋、金物屋のそばにパイプを通してお湯を沸かし、風呂屋に引き込んでお湯を貯めているそうだ。
手前に足湯、奥に風呂場を作って、三日ごとに薬湯の種類を変えて運営し始め、今では薬湯だけに来る人もいると言う…。
そうなんだ…。
『クルーラ』の住人は入れないの?と、聞いてみると、入れるよ。と。
個室も有るけど、『白の館』の広い風呂場に、のんびりと入った方が、楽だと思うけどな…。
そう言われた。
よく考えたら、そうだ。
『クルーラ』の外から来る知らない人達と一緒に風呂に入るとなると、特に子供の僕は怪しまれる…。
うん。『白の館』だけで入ろう…。
『クルーラ』の出入口まで来てしまったので、オルガとヒナキは元来た石畳の道を戻り始めた。
午後から一緒に歩いて散策し始め、気がつけば、日は大分傾いていた。
長くなった二人の影が、石畳に映る。
「楽しかったか?」
不意にヒナキさんが聞いてくる。
「うん!楽しかった!」
オルガはニコニコと笑みを浮かべて答える。
アップルパイを買って、のど飴を買って、ガラス玉を買って、絵本を借りて…。
もらったお小遣いの半分ぐらい使ったかな?
「帰ったら、帳面を付けよう」
「帳面?」
オルガが首を傾げる。
「もらったお金。使ったお金をノートに書いて、今、どれだけのお金を持っているか、わかるようにするためだ。いつ、何を買ったかの覚えにもなるだろ」
そうか。
ただ買い物して終わりでは、何にいくら使ったのかは、いずれ忘れてしまうだろう。
ノートに書いて覚え書きをしておくことによって、いつ買ったのか、何に使ったのか、記録として残る…。
「うん。忘れないうちに書くね」
お買い物をするのも楽しかったが、ヒナキさんと一緒に『クルーラ』を散策出来たのも、楽しかった一つだ。
「また、一緒に買い物しようね」
オルガは自然とそう言っていた。
「…そうだな。また、一緒に買い物しよう」
ヒナキさんは一瞬驚いて、そして微笑んで、そう言って頭を撫でてくれた。
ヒナキさんも、僕と一緒に買い物をして…付いてきてくれただけだけど…楽しかったら嬉しいな。
オルガに取って、この日はとても楽しく充実した日だった。
そして、ヒナキさんと『クルーラ』を散策して、買い物を楽しんでから十日が過ぎていた。
「うんとね…」
オルガはヒナキさんと一緒に『クルーラ』を散策しながら買い物を楽しんだ。
そしていくつもの店を渡り歩き、石畳の道の終点、『クルーラ』の出入口であるの小屋と、宿屋が見えてきた。が、宿屋の手前、少し奥まった所に建物が見えた。
石畳の道から少し奥に入って、建物の両脇が木で囲まれ、あまり目立たないように建てられている。
「あの建物は何?」
「あれは湯場。来客向けの風呂屋だよ」
「お風呂?」
オルガは首を傾げた。
そう言えば、『白の館』にはお風呂場が有るから気にならなかったけれど…。
聞けば、宿屋は宿と食事だけの店なので、風呂場はない。
お湯を頼んで、身体を拭くだけでも良いが、ゆっくりと風呂に入って疲れを取りたい者達に取っては、不便だったそうだ。
なので、火を使うガラス工房や陶器屋、金物屋のそばにパイプを通してお湯を沸かし、風呂屋に引き込んでお湯を貯めているそうだ。
手前に足湯、奥に風呂場を作って、三日ごとに薬湯の種類を変えて運営し始め、今では薬湯だけに来る人もいると言う…。
そうなんだ…。
『クルーラ』の住人は入れないの?と、聞いてみると、入れるよ。と。
個室も有るけど、『白の館』の広い風呂場に、のんびりと入った方が、楽だと思うけどな…。
そう言われた。
よく考えたら、そうだ。
『クルーラ』の外から来る知らない人達と一緒に風呂に入るとなると、特に子供の僕は怪しまれる…。
うん。『白の館』だけで入ろう…。
『クルーラ』の出入口まで来てしまったので、オルガとヒナキは元来た石畳の道を戻り始めた。
午後から一緒に歩いて散策し始め、気がつけば、日は大分傾いていた。
長くなった二人の影が、石畳に映る。
「楽しかったか?」
不意にヒナキさんが聞いてくる。
「うん!楽しかった!」
オルガはニコニコと笑みを浮かべて答える。
アップルパイを買って、のど飴を買って、ガラス玉を買って、絵本を借りて…。
もらったお小遣いの半分ぐらい使ったかな?
「帰ったら、帳面を付けよう」
「帳面?」
オルガが首を傾げる。
「もらったお金。使ったお金をノートに書いて、今、どれだけのお金を持っているか、わかるようにするためだ。いつ、何を買ったかの覚えにもなるだろ」
そうか。
ただ買い物して終わりでは、何にいくら使ったのかは、いずれ忘れてしまうだろう。
ノートに書いて覚え書きをしておくことによって、いつ買ったのか、何に使ったのか、記録として残る…。
「うん。忘れないうちに書くね」
お買い物をするのも楽しかったが、ヒナキさんと一緒に『クルーラ』を散策出来たのも、楽しかった一つだ。
「また、一緒に買い物しようね」
オルガは自然とそう言っていた。
「…そうだな。また、一緒に買い物しよう」
ヒナキさんは一瞬驚いて、そして微笑んで、そう言って頭を撫でてくれた。
ヒナキさんも、僕と一緒に買い物をして…付いてきてくれただけだけど…楽しかったら嬉しいな。
オルガに取って、この日はとても楽しく充実した日だった。
そして、ヒナキさんと『クルーラ』を散策して、買い物を楽しんでから十日が過ぎていた。
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