眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう

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森の聖域クルーラ

魔力紙(マリョクシ)3

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 僕は『魔力紙』で『ツル』を折り始めた。
 今度はゆっくりと、手が覚えているモノをしっかりと見て、確実に記憶するように…。
 
 『魔力紙』を折っている僕の隣にヒナキさんが座り、『魔力紙』を一枚手に取り、ヒナキさんも折り始めた。
 気になってチラリと見ると、僕と同じように『ツル』を折っているようだ。
 ヒナキさんも、折り方を知っている…?
 そしてふと思う。
 さっき、『懐かしい』って、言っていたよね…?
 もしかしてヒナキさんも、僕と同じように『迷い人』だった…?
 疑問に思い、ヒナキさんの方を見て、聞いてみようと声をかけようとしたら、リーンさんが、熊族のアレクさんを連れて戻ってきた。
「折っただけの『魔力紙マリョクシ』が、属性魔力を維持するだと?!」
 熊族のアレクさんは興奮気味に聞いてくる。
「みたいだね」
 ヒナキさんが魔力を込めて、未だに空中に浮いている『ツル』と、光を放ち浮いている『ツル』を指差す。
 熊族のアレクさんは唖然とソレを見る。
「普通の『魔力紙マリョクシ』に、魔力を流しても、属性魔力は維持できないよね」
 そう言ってヒナキさんが一枚『魔力紙マリョクシ』を手に取り、一瞬光ってフワリと浮いて、直ぐにヒラヒラとテーブルの上に落ちてきた。
「「…。」」
「…折った線が、魔法陣の魔力循環の役目を果たしているとか…」
 リーンさんが、ふと思い付きを口にする。
「そんなことがあり得るのか?」
「オルガが折ったから…?」
「検証すべき事だね」
 三人が色々と言い始め、オルガはよく意味が分からなくて首を傾げた。
 何か大変な事になったみたいだが、何が起こっているのかよく分からない…。
 そんなオルガに気が付いたリーンが微笑んで言う。
「『魔力紙マリョクシ』の新しい活用法が出来そうだから、興奮しているんだよ」
「新しい活用法?」
「ああ、今まで色々な魔道具を考えたけれど、手軽に使用出来て、生活に密着したモノが出来なくてね」
 オルガが首を傾げるとヒナキが言う。
「これなら、小さい光の魔力があれば、魔石を使わなくても、明かりを灯せる」
「部屋に有る魔道具を使わなくても?」
 オルガはどういう意味が分からず、不思議に思って聞いてみる。
「どれだけの魔力で、どれだけの時間、明かりを保てるか、これから検証しなくてはいけないけれどね」
 それでも意味が分からず首を傾げると、リーンさんが苦笑いして説明してくれる。
「魔石は高価なものなんだ。『クルーラ』では簡単に手に入るが、街ではなかなか手に入らなくて、一般家庭にはあまり普及されていないんだよ」
 魔石が高価なモノ…。
「…魔道具じたいが普及されていないからな」
 熊族のアレクさんも頷いてそう言う。
 …エッ!?
 て、事は、普通は、『白の館』のような便利な魔道具が、無いって事…?
「…。」
 もしかして、『クルーラ』の魔道具の便利さに慣れてしまうと、後が大変なのかな…。
「『クルーラ』では、これが普通なんだけどな…」
 ヒナキさんがそう言うと、リーンさんは肩をすくめて言う。
「『クルーラ』ではね。グオルクでも中心街は比較的に魔道具を使っているけれど、町外れや地方にまでは、それほど普及はされていないよ」
「俺の故郷である熊族の集落でも、かろうじて光の魔道具は有るが、洗濯の魔道具や、保冷の魔道具は一部の家の者しか所持していないぞ」
「そうなんだ…」
 でも、ソレとこの『魔力紙マリョクシ』と、どう関係があるのだろう…。
「…光の魔石が無くても、明かりを灯せる…?」
 確かそう言っていた…。
「そう!あまり魔力を使わず、夜でも明かりを灯せれば、光の魔石やランプなどの燃料を節約できる!」
 アレクさんは興奮気味に言う。
「そうすればね、夜、勉強したい子供達が、ランプの燃料を気にせず勉強出来るからね」
「ああ、本を読めるくらい明るければ、最速で普及するだろう」
 それくらい、価値が有ることなのだと…。
 だが、オルガには、何となくしか分からない。
 きっと今、『白の館』で不自由無く、暮らしているからだろう。
「…役立つの?」
「ああ、役立たせてみせる。他にも何か折り方を思い出したら、折ってみてくれ」
 そう言ってアレクさんがオルガの頭を撫でる。
「…うん。思い出したら、折ってみる」
「よろしく。オルガ」
 リーンさんが微笑んで言う。

 何か思い出したら折ってみよう。
 僕が『魔力紙マリョクシ』を折って、ソレが誰かの役に立つかも知れないのなら…。
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