上 下
457 / 462
二人の旅の始まり

再会 1

しおりを挟む
 リーンとルークは、のんびりとヤマツカ町の屋敷で暮らしていた。
 ほんの少しピンク色に染まった『桜』の蕾は、そろそろ開花を教えてくれる。
 マークは各地に連絡を入れ、気候により数日後には咲き始めるだろう事を伝えていた。
 誰が最初に来るだろう…。
 リーンは屋敷にある、薬草園の手入れを手伝いながら子供達が来るのを待っていた。


 屋敷の正門の方から馬車が止まる音がした。
 リーンは作業中の手を止めて、屋敷内に入ると、玄関の方からバタバタと足音が響いてきた。
「「リーン!!」」
 少し身長が伸びたキースとニーナが廊下を走ってきて、リーンに抱きついてくる。
 リーンはよろけながら二人を受け止め、身長がリーンの胸の高さくらいまで伸びた二人を抱き締める。
 大きくなったな…。
 二人の様子は、こっそりと見ていたが、ココまで身長が高くなっているとは思わなかった。
「元気そうで良かった」
 リーンが微笑んで言うと、二人は顔を上げてリーンを見て来て、再びギュッとリーンにしがみつく。
 寂しい思いをさせてしまったな…。
 リーンは二人の頭を撫でてあげ、部屋の中に入るよう促した。
 驚くだろうな…。
 リーンに引っ付いたままのキースとニーナと一緒に部屋の中に入ると、二人は急に固まって動かなくなってしまった。
 そっと二人を見ると、目を丸くして一点を凝視して見ている。
 その視線の先に居るのは、ソファーに寄りかかりながら、書類を広げて読んでいるルーク。
 ルークはこちらに気が付き、ニコリと微笑んだ。
「おっ、よく来た。キース、ニーナ」
「「…。」」
 二人はリーンにギュッとしがみつき、じっとルークを見ている。
「…少し若返ったから、俺の事が分からない…か…」
 ルークは苦笑いしてリーンを見る。
「少しではないよ」
 キースとニーナ達が産まれる前の姿なのだから…。
「…お父…様…?」
 ニーナがぼそりと呟く。
「おう。ニーナとキースのお父様だ」
 ルークはそう言って笑う。
「…お父様…?」
 キースもぼそりと呟いて、リーンを見上げる。
「そうだよ。だいぶん若返ったけれど、ニーナとキースのお父様だよ」
 リーンもそう言って微笑むと、再びルークの方を向いて、リーンにしがみついていた手を緩めた。
「「お父…様…」」
 二人はルークに向かって駆け出し、ソファーに座るルークの両サイドからしがみつく。
 ルークは書類をテーブルに置いて、二人の頭を撫でてあげる。
「しばらく会わない間に、また、大きくなったな…」
 ルークは嬉しそうに二人を抱き締めていた。

 ニーナとキースがルークにしがみつき、二人の気持ちが落ち着くまで、しばらく待っている間にリーンは、テーブルに置いてあった書類をまとめて別の机に置いた。
 そこへ二人の付き添いで来たカズキが部屋に入って来て、ルークと二人の様子を見て微笑んだ。
「やっぱり、そうなりましたね」
「ああ。二人には理由と、これからの事を話さないとな」
 そう。
 ルークは亡くなった事になっているのだから、表だって姿を見せないことを…。
 
 キースとニーナが少し落ち着いて、でも、ルークの側から離れずにソファーに座っているのを微笑みながら見て、温かいミルクを渡した。
 二人はホゥと息をつきながらミルクを飲んでいた。
 そしてルークが若返ったのは、体内の魔力変動不調のため、特殊な時間を戻す魔法を使って戻ったのだと説明した。
 だけどこれは秘密の事なので、誰にも言ってはいけない事。
 そしてルークは亡くなった事になっているから、生きている事も秘密なのだと説明した。
 二人は首を傾げながら聞く。
「…お父様の事は秘密なの?」
「ああ。秘密だ」
「ずっとココに居るの?」
「リーンと一緒にいる」
 二人がリーンを見る。
「リーンと一緒にいるの?」
「そうだよ。一緒に各地を回って、森を守るんだよ」
「「…。」」
 キースとニーナは顔を見合せ、ルークとリーンを見てくる。
「「もう会えないの?」」
「会えるよ。こっそりと会いに行くから」
「生きていると、ばれない様にしてな」
 ルークもそう言って微笑む。
「だから秘密な」
 ルークがそう言って二人の頭を撫でてあげると、二人はギュッとルークにしがみついた。
「「…うん。待ってる…」」
 とりあえずは、分かってくれただろうか…。
 時々と言うよりか、度々会いに行きそうな気がするけれど…。
 まあ、二人の側にカズキが居てくれるから、なんとかなるだろう…。
 ルークは久しぶりの再会を堪能した。
 




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・

相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。 といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。 しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・

処理中です...