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希少種
リマ商会の二人
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「…カザンナ王国の第三王子、ルーク・スレイヤード・カザンナ。…えっと…私の魔力の番なんだ」
リーンがそう言うと、マークは苦笑いして、アズマとオヤジさんは目が点になり、動きが止まった。
うん。ビックリするよね…。
私も時々、思い出して驚く…。
「…ヤマツカ町に着いた報告をしないといけないし、アオに連絡を取ってもらうには、ルークに連絡するしかないから、その時に話してみるよ」
「…ちなみに…アオさんは、ルーク王子の側近です」
マークがアズマ達に耳打ちすると、アズマがゆっくりと動いてマークを見る。
「…お前は…知っていたのか…?」
マークは苦笑いして言う。
「…以前に長期休暇をもらって、リオナスにいるリーンさんの元に行ったときに知りました。…皆さん、気さくな好い人ばかりですよ」
マークがそう言うと、アズマとオヤジさんがソファーにドンと寄りかかり、大きなため息をつく。
「…リーンさんの、予想外の事にだいぶ慣れていたが…カザンナ王国の王子だと…」
「私も驚いてます」
リーンは素直に言う。
「マークの言うお屋敷の件は、屋敷と使用人もそのまま継続して維持していく方向で良いんだよね」
「はい。彼らの手に渡り、イワニおばさんの屋敷が維持できないのなら、僕が意思を受け継ぎ管理します」
リーンはマークの真剣な眼差しに微笑んだ。
この件が落ち着いたら、そのお屋敷に行ってマークにイワニおばさんの話を聞いてみよう。
もしかしたらイワニおばさんが、マークにしか教えなかった何か大切な場所なのかもしれない…。
「今度は私の方の話をするね。…タミネキ村に行こうと思っているんだけど、最近の様子を知らないから、聞いてから行こうと思って…」
ヤマツカ町に久しぶりに来るのと同じで、タミネキ村にも十年近く行っていない。
村の様子や変わったことが無いか、リマ商会が一番情報をもっている。
マークとアズマ、オヤジさんが顔を見合わせてリーンを見る。
「…『御神木』の木霊が、不思議な姿をしていると言われている」
「…僕も見たことはないけれど、羽が生えているって…」
「…それを確かめに来たのではないのか?」
…木霊に羽…?
リーンは首を傾げた。
今まで、見たことは無い…。
「…そうなんだ。…風霊が、ちょっと来て欲しいんだけど…と、呼んでいたから、こっちに来たのだけれど…」
もしかしたら、その事を伝えていたのかもしれない。
「マーク、ロキとは会ってる?」
ロキは狼の獣人で、ロキの村にマークはしばらく保護されて住んでいたから、よく知っている。
「はい。ロキさんに連絡を取るなら、タミネキ村のスバルさんの所に行けばすぐに連絡を取れますよ。薬草園、充実してますから見てあげて下さい」
マークはそう言って微笑む。
タミネキ村のスバルは療養所をしていて、村人が病院みたいに頭痛薬や傷薬などもらいに来るので、庭の畑に薬草を植えた方が良いよと、昔、宿泊させてもらう変わりに、リーンがジンと共に小さな薬草園を作ったのだ。
あれからどれだけの時間が過ぎているのだろう…。
…ジン。
リーンはふと、物思いにふける…。
「リーンさん。今日は、僕の部屋に泊まってください。たくさん話をしたい事があります」
マークにそう言われて、リーンはハッとしてマークに微笑んだ。
「良いのか?それなら、夕食の買い物をしていてから、長屋に行こう。お邪魔するよカムイ」
ずっと黙って話を聞いていたカムイにも声をかけると、頷いて言った。
「俺、肉が食いたい」
カムイが真剣な表情で言う。
「…夕食は肉にしよう。何処が良いか、案内してね」
リーンが笑うと、マークは青ざめてカムイの頭を押さえつける。
「何を言っているんだ!遠慮しろよ!」
「だってマーク、野菜ばっかり…」
拗ねるカムイは昔のまま…。
カムイの子獣人の時を知っているだけに、ほほえましく思う。
マークは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「肉も食わせてるだろ!」
「足りない…」
カムイのもの足りなさそうな顔に、リーンもアズマもオヤジさんも笑う。
「…リーンさん。カムイにたくさん肉を食わせてやってくれ」
「マークは倹約家だからな…」
アズマとオヤジさんは笑いながら言う。
「…無駄遣いしないだけです!」
マークはそう叫んでいた。
リーンがそう言うと、マークは苦笑いして、アズマとオヤジさんは目が点になり、動きが止まった。
うん。ビックリするよね…。
私も時々、思い出して驚く…。
「…ヤマツカ町に着いた報告をしないといけないし、アオに連絡を取ってもらうには、ルークに連絡するしかないから、その時に話してみるよ」
「…ちなみに…アオさんは、ルーク王子の側近です」
マークがアズマ達に耳打ちすると、アズマがゆっくりと動いてマークを見る。
「…お前は…知っていたのか…?」
マークは苦笑いして言う。
「…以前に長期休暇をもらって、リオナスにいるリーンさんの元に行ったときに知りました。…皆さん、気さくな好い人ばかりですよ」
マークがそう言うと、アズマとオヤジさんがソファーにドンと寄りかかり、大きなため息をつく。
「…リーンさんの、予想外の事にだいぶ慣れていたが…カザンナ王国の王子だと…」
「私も驚いてます」
リーンは素直に言う。
「マークの言うお屋敷の件は、屋敷と使用人もそのまま継続して維持していく方向で良いんだよね」
「はい。彼らの手に渡り、イワニおばさんの屋敷が維持できないのなら、僕が意思を受け継ぎ管理します」
リーンはマークの真剣な眼差しに微笑んだ。
この件が落ち着いたら、そのお屋敷に行ってマークにイワニおばさんの話を聞いてみよう。
もしかしたらイワニおばさんが、マークにしか教えなかった何か大切な場所なのかもしれない…。
「今度は私の方の話をするね。…タミネキ村に行こうと思っているんだけど、最近の様子を知らないから、聞いてから行こうと思って…」
ヤマツカ町に久しぶりに来るのと同じで、タミネキ村にも十年近く行っていない。
村の様子や変わったことが無いか、リマ商会が一番情報をもっている。
マークとアズマ、オヤジさんが顔を見合わせてリーンを見る。
「…『御神木』の木霊が、不思議な姿をしていると言われている」
「…僕も見たことはないけれど、羽が生えているって…」
「…それを確かめに来たのではないのか?」
…木霊に羽…?
リーンは首を傾げた。
今まで、見たことは無い…。
「…そうなんだ。…風霊が、ちょっと来て欲しいんだけど…と、呼んでいたから、こっちに来たのだけれど…」
もしかしたら、その事を伝えていたのかもしれない。
「マーク、ロキとは会ってる?」
ロキは狼の獣人で、ロキの村にマークはしばらく保護されて住んでいたから、よく知っている。
「はい。ロキさんに連絡を取るなら、タミネキ村のスバルさんの所に行けばすぐに連絡を取れますよ。薬草園、充実してますから見てあげて下さい」
マークはそう言って微笑む。
タミネキ村のスバルは療養所をしていて、村人が病院みたいに頭痛薬や傷薬などもらいに来るので、庭の畑に薬草を植えた方が良いよと、昔、宿泊させてもらう変わりに、リーンがジンと共に小さな薬草園を作ったのだ。
あれからどれだけの時間が過ぎているのだろう…。
…ジン。
リーンはふと、物思いにふける…。
「リーンさん。今日は、僕の部屋に泊まってください。たくさん話をしたい事があります」
マークにそう言われて、リーンはハッとしてマークに微笑んだ。
「良いのか?それなら、夕食の買い物をしていてから、長屋に行こう。お邪魔するよカムイ」
ずっと黙って話を聞いていたカムイにも声をかけると、頷いて言った。
「俺、肉が食いたい」
カムイが真剣な表情で言う。
「…夕食は肉にしよう。何処が良いか、案内してね」
リーンが笑うと、マークは青ざめてカムイの頭を押さえつける。
「何を言っているんだ!遠慮しろよ!」
「だってマーク、野菜ばっかり…」
拗ねるカムイは昔のまま…。
カムイの子獣人の時を知っているだけに、ほほえましく思う。
マークは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「肉も食わせてるだろ!」
「足りない…」
カムイのもの足りなさそうな顔に、リーンもアズマもオヤジさんも笑う。
「…リーンさん。カムイにたくさん肉を食わせてやってくれ」
「マークは倹約家だからな…」
アズマとオヤジさんは笑いながら言う。
「…無駄遣いしないだけです!」
マークはそう叫んでいた。
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