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森の聖域 1

ルークの嫉妬

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 リーンがカザナの屋敷に住むようになって、三つ子が産まれて、仕事をなるべくカザナで出きるように手配した。
 リオナスは、側近のガーディが獣人とつがいになったのを気に、ガーディが安定して生活できるように、リオナスの管理を任せるようにした。
 とは言っても、ルークの管轄下に有るので、何かあれば、こちらから出向くことも有る。
 それでも、カザナはカザナですることが有るので、のんびりとはしていれない。
 だが、側にリーンがいてくれて、賑やかな三つ子達がいてくれれば、それで幸せだった。
 
 ルークは、なるべく食事を子供達とするようにしている。
 どうしても急ぎの書類や、視察などで不在な時は別として、食卓を囲んで食べるのも、楽しみのひとつでもあったからだ。
 そんな楽しい昼食を終え、執務室で書類を読んでいると、屋敷の結界が一瞬ビリっと振動した。
 …なにっ?!
 今までに経験の無い位、振動した!
 宿り木ミーネの結界が破られたのか?!
 ルークは緊張して部屋を飛び出した。
 リーンの部屋で昼寝をしている子供達と、リーンの事が気になったからだ。
 今のリーンに魔力は無い。
 何者かが侵入してきたら、魔力では対抗できない!
 同じことを思ったのか、リーンの部屋の前でキリト出くわして、二人でリーンの部屋の扉を開けた。
「リーン!」
 ルークとキリトが、眠る子供達の側に来ると、リーンの側に『魔女の抜け道』が突然出現して、そこから魔女王ソフィアが顔を覗かせた。
「なかなか連れて来てくれないから、来ちゃった」
 魔女王はそんな軽い感じて、微笑んできて、ルークもリーンもキリトも呆然として、ため息をついた。
 人騒がせな…。
「…よく、宿り木ミーネが結界内に入れてくれたな…」
 ルークがそう言うと、魔女王は微笑んで言った。
「…子供に会いたいと、言ったら入れてくれたわよ。…気づいているんじゃないかしら」
 …そうかもしれないな…。
 リーンのお腹に宿ったとき、ミーネはその光を見ている。
 それが、リーンとルークだけでなく、魔女王の魔力を帯びている事に気がついているだろう…。
 隣にいたキリトだけが、少し首を傾げる。
 事情は話していないからな…。
 今さらだがキリトには、ミーナの事を説明しておいた方が良いのかもしれない。
 成長するにつれて、魔女王と同じ能力を開花させるかもしれないからだ。
 と、もぞりとお昼眠しているミーナが動いて、目を覚ました。
 ミーナはリーンと魔女王の子供…。
 魔女王の気配に気が付いて、目覚めたのか…?
 ミーナは眠そうに目をこすり、身体を起こす。
 そんなミーナを見守っていると、目を開けて、リーンを見て、その横にいる『魔女の抜け道』から覗く魔女王を見た。
「…だれ…」
 何か感じるものが有るのか、ミーナは魔女王から目を離さない…。
「ソフィアよ」
「ソヒ…ア…」
 上手く発音できないミーナはそう言って首をかしげる。
 リーンがミーナの側に来て、ミーナを抱き上げると、魔女王に近づいた。
 ミーナはじっと魔女王を見ている。
「リーンにそっくりね」
「髪の毛の色が金髪な所は違うけどね」
 リーンはそう言って微笑んだ。
 ルークの胸がズキリと痛んだ。
 わかってはいたが、リーンと魔女王とミーナ、三人が並ぶと夫婦親子にしか見えない…。
 ミーナはリーンに似ているが、魔女王と同じ…俺と同じ金髪だ。
 …複雑な気分でも有る…。
 リーンがミーナを抱っこして、魔女王と話していると、ミーナが魔女王に向かって手を伸ばした。
 …抱っこして欲しいのだ。
 魔女王は少し驚いて、微笑んで手を伸ばし、ミーナをリーンから受け取った。
 わかってはいるが…。
「…そうやって見ると、親子にしか見えない」
 ルークが思っていたことを、リーンが口にして苦笑いした。
 実際、ミーナを作っている母子なのだから、当たり前の事なのだが…。
 ミーナはペタペタと魔女王の頬に触れ、ニタリと笑う。
「…ソヒア…」
「なあに…」
 魔女王がミーナに答えると、ミーナが言った。
「…同じ…」
 …同じ…?
「何が同じなの?」
 魔女王が聞くと、ミーナは「わかんない」と答えた。
 魔女王には見えないのかもしれないが、二人の魔力の質感が同じなのだ。
 ミーナは無意識に感じ取っているのだろう…。
「また、来て良いかしら」
「良いよ」
 リーンに戻されたミーナを抱えたリーンの腕の中から、ミーナはじっと魔女王を見ている。
「またね」
 魔女王はそう言って、微笑むと『魔女の抜け道』を閉じて姿を消した。
 ミーナは驚いて目を丸くして、そして涙目になって泣き出してしまった。
 リーンはミーナをあやして、部屋の中を歩いていると、寝ていたニーナとキースも目を覚まし、きょとんとしてミーナを見ている。
 これは当分、泣き止まないな…。
 ルークはキリトと一緒にニーナとキースを連れて、リーンの部屋を出た。
 そして食堂に行き、少し早いがおやつにした。
 二人の事は、キリトと後から来た侍女に任せて、ルークは執務室に戻った。
 まずは、キリトに説明してだな…。
 いずれミーナは魔女の魔力に目覚めるだろう。
 その時、魔女王のもとへ預けるべきなのだろうが…今はまだ…。



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