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新たなる命

同じ時間を生きよう…

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 リーンが眠りに付いてから、三年が過ぎていた。

 人族と獣人族の交流の場所として作ったリオナスの町は、ルークが常駐していなくても、揉め事なく動くようになっていた。
 急遽、水人族用に作った町外れの湖の宿も、避暑地として人族や獣人族も利用し、もしかしたら町中の宿よりも収益を上げている。
 様子を見て、今の湖か、違う湖に増築する予定だ。
 何かあれば、すぐにリオナスに行くことが出きるので、ルークはリーンの近くにいるため、カザナのお屋敷に戻ってきていた。


 ルークはカザナのお屋敷の執務室で、いつものように書類に目を通していた。
 今日は学校も休みで、ジーンとユーリもキリトと一緒に、敷地内に有る森へ、木の実や果実を取りに行っている。
 今、ユーリはお菓子を作ることに興味を持っていて、それに使う木の実や果実がどこに有るか、キリトに案内してもらって、収穫後の保存の仕方を教えてもらう予定だ。
 興味を持ったときに、教える方が覚えるのも早いので、ココ最近は毎週のようにカザナに戻ってきて、キリトに教えてもらっている。
 ジーンも植物図鑑に載っている草花の実物をできるだけ見たいと、同行している。
 …ジーンは毎年誕生日に図鑑を欲しがるようになり、一年かけて、じっくりと読み、覚えているようだ。
 二人とも、いろんな事に興味を持って、成長していくのが楽しみだ。

 ルークが執務室で、書類に目を通していると、窓ガラスがコツンコツンと叩かれた。
 ルークが振り替えると『風霊』がソワソワとしながらこっちを見て、ルークが『風霊』に気がつくと何処かに行ってしまった。
「…『風霊』…?」
 ルークは首を傾げ、ハッとして、勢いよく立ち上がり、部屋を飛び出した。
 もしかして、リーンが目覚めたのか?!
 ルークは屋敷を飛び出し、リーンの眠る小屋に向かった。
 
 リーンの眠る小屋は、屋敷から訓練所を越え、『宿り木』ミーネのそびえ立つ場所より少し奥にある。
 途中、誰かに声をかけられたような気がしたが、今はソレどころではない。
 …リーン!
 ルークは急いで小屋に向かった。
 
 小屋の前までたどり着くと、ルークは一呼吸置いて、扉を開け小屋の中に入った。
 そしてドキドキしながら寝室の扉を開いた。
「リーン!!」
 …目を開けている…!
 まだ、ぼんやりとしているが、ルークの声に反応してベッドからこちらを向いた…。
 …リーン。
 ルークは勢いよくリーンの側に駆け寄り、リーンの上に乗りかかって抱き締めた。
 …鼓動が聞こえる…温もりが…有る…。
 幻ではない…。
「「リーン!!」」
 少し遅れて、部屋に入ってきたジーンとユーリが駆け寄ってきて、ベッドの上によじ登りリーンを抱き締めた。
 子供達の、鼻をすする音が聞こえる。 
「…私は…リーンの…ままなんだな…」
 リーンがボソっとそう言った。
 …そうだ。
 …リーンは記憶を無くしていない…。
 ルークは、涙ぐんだ目で答えた。
「そうだ。ヒイロと俺とで奪われないように、リーンに魔力を与えた」
 『森の聖域』に連れていかれないように…。
 だから、ココにいる…。
 リーンの髪がふわりと揺れた。
『風霊』が嬉しそうにリーンの髪を撫でた。
「…側に…いるのを…感じるのに…『風霊』が…見えない…」
 リーンは寂しそうにそう言う。
 いつもなら、見える筈の『風霊』が見えないのだろう…。
「…今のリーンからは魔力を感じない。きっと、普通の『人』に…なっているんだ」
 魔力が無い…。
 全くリーンからは魔力を感じない…。
 ルークは、不安そうな顔をするリーンの額に口付けた。
「だから、一緒に同じ時間を生きよう」
 『森の管理者』ではなく、リーンとして…。
 俺のつがいのリーンとして…。
 ジーンとユーリの親として…人族の生活をしていこう…。
 リーンは涙ぐんで微笑んだ。
 …リーン一緒に生きていこう…。


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