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神の宿り木~再生 3~

たどり着く先に…

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 馬獣の荷馬車に乗ってリムナード山に向かっていたが、やはり山小屋『オメガ』にたどり着く前に、馬獣が前に進もうとしなくなった。
 
 辺りは暗くなり、荷馬車を引いてくれていた馬獣の荒い息づかいだけが響く。
 山小屋『オメガ』へたどり着く少し手前から、道は登りの山道に変わる。
 小さな泉で休憩を取って荷馬車を外し、馬獣に乗って山道を登っていく予定だったが、一歩も動こうとしなかった。
 ここまでだな…。
 怯える馬獣に乗って行っても、振り落とされてしまうだけだ。
 ルーク達は馬獣に乗ることを諦めて、身体の周囲に防御を纏い、歩いて進む事にした。
 最小限の荷物と食料を持ち、ルークとアオ、ヒイロとアレクは山小屋『オメガ』に向かって歩きだした。
 ここまで連れてきてくれた熊族の御者と馬獣達は、休憩を終えたら来た道を戻っていく。
 いつまでも、不安定なこの場所に止めておくわけにはいかない。
 四人は黙々と山小屋『オメガ』に向かって山道を登りだした。


 夜空の星の明かりと、ルークの魔法で作った炎の球が、四人の足元を照らしてくれる。
 離れたこの場所まで重い空気が流れて来て、山小屋『オメガ』が完全に取り込まれてしまっているだろう事を感じた。
 …リーン…。
 山小屋『オメガ』には防御魔法がかけられているから、中にいれば魔力を維持できるだろう。
 だか、ソレすら吸収しようとするのだから、どこまで保っているかわからない…。
 ルーク達は重い足を動かし急いだ。

 
 山小屋『オメガ』が見えてくる頃には、辺り一面、どす黒く、濁った空気がうごめいていた。
 こんな所に長時間いれないぞ!
 山小屋『オメガ』は無事なのか!?
 四人は山小屋に駆け込んで扉を閉め、ホッと一息付いた。
 どうやらまだ、防御の魔法は効いているようだ。
 ヒイロとアオはすぐさま防御魔法を強化し、山小屋の中だけでも自分達の魔法を解除できるようにした。
 アレクも山小屋内の空気を正常化して、息が苦しくないように循環の魔法を施した。
 そしてルークは、少し前までいたリーンの痕跡を見つけた。
 ベッドのシーンが乱れ、キッチンには使用した皿とコップが置かれている。
 水が出なくなり、片付けて行くことが出来なかったのだろう。
 それぞれの魔法を張り巡らせると、四人はテーブルを囲んで椅子に座った。
 どっと今までの疲労感が襲ってくる。
「少し前までリーンはここにいた」
「…ここから『始まりの宿り木』までは一時間ほど。日の出までには時間が有るが、準備のため、早めに出たのだろう」
 ヒイロはそう言って、どす黒く濁った空気に包まれた外を見る。
「…だが、この状態だと、それ以上に時間がかかるだろう…」
 ルークもアオもアレクも頷く。
「『再生』の魔法が始まり、大地に緑が戻れば通常の魔法も使えるようになる。『瞬脚移動』も出きるようになるはず…」
「ギリギリまで近くに行って、戻ると同時に『瞬脚移動』で向かって、リーンを連れていかれないように止める!」
 ルークはそう言って決意した。
 絶対に連れていかせない!
 ルークとヒイロは、持ってきた軽食を軽く食べ、再び防御魔法を身体に纏わせ、『始まりの宿り木』に向かって歩きだした。


*****


 アオとアレクは、山小屋『オメガ』で、留守番する事にした。
 アオはさすがに、この重たい濁った空気の中を、進んで行く勇気は無かった。
 それでもここで、やることは有る。
 消えてしまった『転移移動』の魔法陣を復活させること。
 ほんの少し痕跡が残っているが、初めから書き直しだ。
 アレクも最初は行きたがったが、二人に付いていけなくなったら、一人置いていかれるのは不安だったらしい。
 おとなしく諦めて残ることにしてくれた。
 こちらとしても、一人で山小屋に残っているのも不安だ。
 アレクと一緒に『転移移動』の魔法陣を書き直し、魔力を注ぐ。
 しかし起動してはくれない。
「…やっぱりこの周囲の影響を受けて、魔法陣が起動しないみたいだな…」
「…そうだね。…リーンの『再生』がここまで届けば、起動すると言うことだよな…」
「…そう言うことになるな…」
 アオとアレクはため息を付いた。
 今さら外に出る勇気は無いし、防御の魔法を常に張り巡らせて置かないと、外側から魔力が吸収されて消えていくのだ。
「…交代で防御をし続けるぞ」
「…ははっ…。持続魔力のすげえ訓練だぜ」
 アレクは悪態を付きながら、防御の魔法を張り巡らせる。
「…日の出まで耐えろ!」
「…わかってますよ」
 アレクは苦笑いして、アオはため息を付いた。

 


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