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神の宿り木~再生 2~
炎の魔法石
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山小屋に向かうと、丸太小屋の中から、新緑のいい匂いが漂ってきた。
ココティーだ。
葉っぱの新芽を収穫し、乾燥させたものをお湯で戻して飲む飲み物だ。
丸太小屋を覗くとナオカがお湯を注いでいる。
炎の竜はズボンを履いて服を着て、おとなしくリビングの椅子に座っていた。
「どうぞ中に入ってください」
家の主でないナオカに言われて中に入った。
リーンとルークがリビングの椅子に座り、キリトがその後ろに立っていた。
「これは狼族のココティーです」
そう言って差し出されたのは、少し濃いめの緑色をしたココティーだった。
炎の竜は当たり前のように、茶器を手に取りズズッと音を立てて飲んでいる。
リーンもルークも茶器を手に取り、一口飲んでみる。
少し甘めの、さっぱりとした味。
「これはキラ様用に味を変えていますから、少し甘めだと思いますが飲みやすいでしょう」
「ああ。これは長距離の疲れを癒し、冷やして暑い日にでも飲むと、さっぱりとしそうだな」
ルークは飲んだ感想を素直に答えると、
「冷やして…ですか。思い付きませんでした」
ナオカはそう言って微笑んだ。
「…キラ様。落ち着かれましたか」
「…。」
…返事はない。
「…彼はリーンさんです。それだけは間違いないようお願いします」
気を取り直して、ナオカは話を続けた。
「彼らはカザンナ王国から来られました。炎の魔法石が必要との事で、キラ様にお会いしたいと」
チラリとナオカがこちらを見たのでルークが話の説明をし始めた。
カザンナ王国とギザ王国の間で、魔力が吸収され無の地になりつつある事を。
そして、始まりの木を浄化させるために炎の魔法石が必要なことを…。
炎の竜は黙って話を聞いていた。
ルークの説明が一通り終わると、炎の竜はリーンを見て聞いてきた。
「この人…何?……と、同じ魔力を…持ってる…」
それは、ルークの事だろうか?
…同じ魔力…魔力の番だからだろうか…。
リーンは炎の竜を見て言った。
「…彼はルーク。私の…魔力の番だ」
そう言うと、炎の竜は目を見開き驚いて、ルークを睨み付けた。
「…炎の魔法石をもらえないだろうか。あそこは私の始まりの場所なんだ。…私が何とかしなくてはいけない…」
リーンがそう言うと、炎の竜は複雑そうな顔をしてリーンを見る。
「…普通の炎の魔法石は有るが、最強の炎の魔法石が必要なんだろ…」
「そうだ」
その辺は分かってくれるから、ありがたいが、有るのだろうか…。
「…ナオカ」
炎の竜がナオカの方を向く。
「…炎の結晶石を噴火口に入れて、溶かして炎の魔法石を作るとどうなる?」
「それはダメです!」
ナオカは即答した。
「噴火口に入れると言うことは、火山をもう一度噴火させると言うことです!噴火しそうだった熱量を吸収して炎の結晶石を作った意味が無くなります!」
…それはダメだ。
夢で見た時、町中が灰に包まれ熱風が襲っていた…。
「…だったら…」
炎の竜はしばらく考えて言った。
「結晶石を砕いて再生させながら一つに凝縮する…だったら出来るけど…」
「…砕く…ですか…。そのまま一つにする事は出来ないんですか?」
ナオカが質問すると、炎の竜は首を横に振った。
「固くて凝縮出来ない」
「砕く方法は?」
「…一点集中みたいな強力な力が必要かな…」
一点集中の力…。
何が有っただろうか…。
リーンは記憶の中を探った。
「…例えば…雷。アレが落ちると木が真っ二つになるだろ?それくらいの力でないと砕けないよ」
そう言われて、ルークとリーンは顔を見合せ、背後のキリトを見た。
キリトはキョトンとして、リーンを見る。
「…それって…俺の事?」
…やはりキリトを連れて来なければいけない理由が有った。
あの時の直感は正しかった…。
「どういう事だ?」
ナオカと炎の竜は意味が分からず首を傾げている。
「…キリトは雷を使う」
「さすがに魔法石を砕いた事は無いですよ…」
キリトは苦笑いする。
「…それが出来れば、炎の魔法石は作れる?」
リーンは炎の竜に問う。
「…砕けたらね…」
「…では、一つやってみましょう」
ナオカはそう言って、奥の…たぶん寝室に入っていった。
そして、真っ赤な炎の結晶石を無造作に、大小三つ持って来て、キリトに差し出された。
「…ここでは無理だ」
キリトは炎の結晶石を受け取り、丸太小屋の外に出ていき、それを四人が追いかけて行って、様子をうかがう。
キリトは丸太小屋から離れた場所に有る、低めの岩の上に大きい炎の結晶石を置き、右手の二本の指を重ねて指先に雷を集めていた。
少し離れて四人が見守る中、キリトは指先を炎の結晶石に向けた。
バチンと音がして、赤いモノが飛び散り、とっさに避けた。
…炎の結晶石が砕けた…。
それだけキリトの雷の威力が強いと言うこと。
…だが、危険だ。
「…砕けましたけど…飛び散ってしまいますね…。結界をしておかないと、欠片で怪我をしてしまう…」
ナオカがそう言いながら、飛んできた炎の結晶石の欠片を拾う。
「結界を作れるものは、こちらで準備しましょう。…キラ様、炎の魔法石を作って頂けますね」
ナオカが改めて炎の竜に問う。
「…分かったよ…。でも、代わりに、…キースの…リーンの、今の話を聞きたい」
炎の竜はそう言って、潤んだ瞳でリーンを見てくる。
「…私の…話…」
リーンがどうしようかと思っていると、ルークがキリトを見て言った。
「…キリトに聞くと良い。…炎の結晶石を砕く間、ココに居ることになるからな」
「…。」
キリトはため息を付いて、ルークを見る。
「…良いですけど、どこまで話して良いんですか?」
「…皆が知っている事…かな…」
カザンナ王国の国民や、ルークが管理しているリオナスが知っている事…。
「了解しました」
キリトはそう言って再びため息を付いた。
ココティーだ。
葉っぱの新芽を収穫し、乾燥させたものをお湯で戻して飲む飲み物だ。
丸太小屋を覗くとナオカがお湯を注いでいる。
炎の竜はズボンを履いて服を着て、おとなしくリビングの椅子に座っていた。
「どうぞ中に入ってください」
家の主でないナオカに言われて中に入った。
リーンとルークがリビングの椅子に座り、キリトがその後ろに立っていた。
「これは狼族のココティーです」
そう言って差し出されたのは、少し濃いめの緑色をしたココティーだった。
炎の竜は当たり前のように、茶器を手に取りズズッと音を立てて飲んでいる。
リーンもルークも茶器を手に取り、一口飲んでみる。
少し甘めの、さっぱりとした味。
「これはキラ様用に味を変えていますから、少し甘めだと思いますが飲みやすいでしょう」
「ああ。これは長距離の疲れを癒し、冷やして暑い日にでも飲むと、さっぱりとしそうだな」
ルークは飲んだ感想を素直に答えると、
「冷やして…ですか。思い付きませんでした」
ナオカはそう言って微笑んだ。
「…キラ様。落ち着かれましたか」
「…。」
…返事はない。
「…彼はリーンさんです。それだけは間違いないようお願いします」
気を取り直して、ナオカは話を続けた。
「彼らはカザンナ王国から来られました。炎の魔法石が必要との事で、キラ様にお会いしたいと」
チラリとナオカがこちらを見たのでルークが話の説明をし始めた。
カザンナ王国とギザ王国の間で、魔力が吸収され無の地になりつつある事を。
そして、始まりの木を浄化させるために炎の魔法石が必要なことを…。
炎の竜は黙って話を聞いていた。
ルークの説明が一通り終わると、炎の竜はリーンを見て聞いてきた。
「この人…何?……と、同じ魔力を…持ってる…」
それは、ルークの事だろうか?
…同じ魔力…魔力の番だからだろうか…。
リーンは炎の竜を見て言った。
「…彼はルーク。私の…魔力の番だ」
そう言うと、炎の竜は目を見開き驚いて、ルークを睨み付けた。
「…炎の魔法石をもらえないだろうか。あそこは私の始まりの場所なんだ。…私が何とかしなくてはいけない…」
リーンがそう言うと、炎の竜は複雑そうな顔をしてリーンを見る。
「…普通の炎の魔法石は有るが、最強の炎の魔法石が必要なんだろ…」
「そうだ」
その辺は分かってくれるから、ありがたいが、有るのだろうか…。
「…ナオカ」
炎の竜がナオカの方を向く。
「…炎の結晶石を噴火口に入れて、溶かして炎の魔法石を作るとどうなる?」
「それはダメです!」
ナオカは即答した。
「噴火口に入れると言うことは、火山をもう一度噴火させると言うことです!噴火しそうだった熱量を吸収して炎の結晶石を作った意味が無くなります!」
…それはダメだ。
夢で見た時、町中が灰に包まれ熱風が襲っていた…。
「…だったら…」
炎の竜はしばらく考えて言った。
「結晶石を砕いて再生させながら一つに凝縮する…だったら出来るけど…」
「…砕く…ですか…。そのまま一つにする事は出来ないんですか?」
ナオカが質問すると、炎の竜は首を横に振った。
「固くて凝縮出来ない」
「砕く方法は?」
「…一点集中みたいな強力な力が必要かな…」
一点集中の力…。
何が有っただろうか…。
リーンは記憶の中を探った。
「…例えば…雷。アレが落ちると木が真っ二つになるだろ?それくらいの力でないと砕けないよ」
そう言われて、ルークとリーンは顔を見合せ、背後のキリトを見た。
キリトはキョトンとして、リーンを見る。
「…それって…俺の事?」
…やはりキリトを連れて来なければいけない理由が有った。
あの時の直感は正しかった…。
「どういう事だ?」
ナオカと炎の竜は意味が分からず首を傾げている。
「…キリトは雷を使う」
「さすがに魔法石を砕いた事は無いですよ…」
キリトは苦笑いする。
「…それが出来れば、炎の魔法石は作れる?」
リーンは炎の竜に問う。
「…砕けたらね…」
「…では、一つやってみましょう」
ナオカはそう言って、奥の…たぶん寝室に入っていった。
そして、真っ赤な炎の結晶石を無造作に、大小三つ持って来て、キリトに差し出された。
「…ここでは無理だ」
キリトは炎の結晶石を受け取り、丸太小屋の外に出ていき、それを四人が追いかけて行って、様子をうかがう。
キリトは丸太小屋から離れた場所に有る、低めの岩の上に大きい炎の結晶石を置き、右手の二本の指を重ねて指先に雷を集めていた。
少し離れて四人が見守る中、キリトは指先を炎の結晶石に向けた。
バチンと音がして、赤いモノが飛び散り、とっさに避けた。
…炎の結晶石が砕けた…。
それだけキリトの雷の威力が強いと言うこと。
…だが、危険だ。
「…砕けましたけど…飛び散ってしまいますね…。結界をしておかないと、欠片で怪我をしてしまう…」
ナオカがそう言いながら、飛んできた炎の結晶石の欠片を拾う。
「結界を作れるものは、こちらで準備しましょう。…キラ様、炎の魔法石を作って頂けますね」
ナオカが改めて炎の竜に問う。
「…分かったよ…。でも、代わりに、…キースの…リーンの、今の話を聞きたい」
炎の竜はそう言って、潤んだ瞳でリーンを見てくる。
「…私の…話…」
リーンがどうしようかと思っていると、ルークがキリトを見て言った。
「…キリトに聞くと良い。…炎の結晶石を砕く間、ココに居ることになるからな」
「…。」
キリトはため息を付いて、ルークを見る。
「…良いですけど、どこまで話して良いんですか?」
「…皆が知っている事…かな…」
カザンナ王国の国民や、ルークが管理しているリオナスが知っている事…。
「了解しました」
キリトはそう言って再びため息を付いた。
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