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神の宿り木~再生~

水の魔法石

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 リーンとカズキが水上集落の神殿に向かうと、入口にダレスか待っていた。
 ここは以前とほとんど変わっていない。
 神殿はそのまま手を付けずに、補強だけをしたのかもしれない。
 そして中に入ると、『水中都市』と唯一連絡が取れる、通信網が起動されていて、体格の良い美丈夫、水底を思い出すような長い紺色の髪の、金色の目をしたフールシアの姿がそこに有った。
「リーン!」
 顔を見せるなり必死の形相でこちらを見てくる。
「来るなとはどういう事だ!」
「約束が有るから、フールシアが来る頃には帰っているからだ」
「…。」
 フールシアはガックリとした様子だが、リーンはさっさと本題に入った。
「それより、お願いが有ってきた。『水の魔法石』は直ぐに手に入るか?」
 フールシアは少し考え、首を傾げた。
「…直ぐには無理だ。…リーンが欲しいのは、普通のではないのだろ?」
 その辺は察しが良いので助かる。
「ああ。強力な魔力を持っている『水の魔法石』だ」
「魔力を込めるから、しばらく時間が欲しい」
 と、言うことは、出きるのだろう。
「準備出来たら、水上集落のダレスに渡して欲しい。…誰かここまで使いを寄越すから…」
「俺が持っていってはダメか?」
「ダメに決まっているだろう!湖ほど水はないし、突然竜人族が現れたらビックリするだろ!」
 竜人族は長寿なのだが、数が少ないのだ。
 一生に一度、見れれば幸運なくらい…。
 それに、魔力を制御しないまま、陸上の者達が姿を見れば、逃げ惑うのは目に見える。
「魔力を普通の魚人族の方達くらいに押えて、制御出来るようになれば、かまわないが…」
「うううっ…」
 フールシアは呻いて、頭を抱えている。
 今の魔力を赤子くらいに押えるつもりでないと、強力な魔力が漏れ出てしまう。
 フールシアに取っては酷な事だろう。
「『水の魔法石』お願いします」
 リーンは改めて、フールシアにお願いした。
 まだ、何かフールシアが叫んでいたが、ダレスに言って通信をさっさと切ってしまった。
「宜しかったのですか」
 ダレスは心配そうに訪ねてくる。
「良いんだよ。フールシアに付き合っていたら、日が暮れてしまう。…それに、後ろで誰かが書類を抱えていたし…」
 リーンはそう言って笑った。
 仕事の途中に繋いでもらったのだ。
 フールシアは良いかもしれないが、回りの者達が困るだろう。


 フールシアとの話が終わり、リーンが神殿から出ようとすると、ダレスが声をかけてきた。
「今日は、こちらにお泊まりになりませんか」
 リーンはカズキと顔を見合わせる。
 …急ぐわけではないが、週末にはリオナスにたどり着きたい。
「せっかくですし、宴を催したい。…若い者達にも、リーン様のお姿を見てもらいたいのですが…」
 そう言えば、集落にいたのは女性や子供達が多かった。
「男達は貯水槽の管理掃除に行っております。塩のおかげで生活は楽になりましたが、我々の生命線である貯水槽の管理は、集落の男達で定期的に行っているのです」
 それで男達が少なかったのだ。
 この集落には貯水槽が二つある。
 交代で定期的に掃除するとなると、集落の者達でした方が効率的には良い。
「暗くなる前には戻ってきますし、是非に…」
 ダレスは必死のようだ。
「カズキ、どうする?」
「…明日の早朝に、ここを出発すれば、夕方にはリオナスに着きますよ」
 そう言ってカズキは微笑む。
 …決めるのは、私…。
「…わかった。今夜はお世話になるよ」
 リーンはそう言って微笑む。
「皆も喜びます」
 ダレスはホッとため息をついて、質問してきた。
「…リオナスとは、獣人族と人族が暮らす、最近出来た町の事ですよね」
「そうだよ。今、ルークが中心になって町を運営している」
「ルーク様が…。我々魚人族には、なかなか行けない場所ですよね…」
「そうだね。陸地ばかりだから、川が流れているくらいで、水も少ないし…」
「…若い者達が、行ってみたいと言い出していて…陸地は大変だと言っても聞いてくれず…」
 ダレスは困った顔をして、リーンにどうしたら良いか聞いてくる。
 魚人族が陸地を旅するのはとても過酷だ。
 人族や獣人族よりも水が多く必要で、なるべく日影を移動するか、水辺を移動するしかない。
 しかしリオナスの近くに川は流れているが、元草原地帯である陸地だ。
「…そうだな…『天水球』は作れるように教えただろうか?」
「『天水球』ですか…」
「まだですよ。塩と分離して、水球は作れるようになりましたが、『天水球』を作っている者は見ていないです」
 カズキがそう補足してくる。
「それなら、『天水球』を作れるようになったら、大量の水を運べるから、リオナスに行くことが出きるかもしれない。…水を自分で確保してれば、水不足にならないから…」
 リオナスに水人族の人達が来れるようになると、また、リオナスは活気づく。
 あっ、リオナスにも水人族用の宿があった方が良いかも…。
 水が大量に欲しくなるから、場所とか考えないといけないな…。
「夕食までの間に、『天水球』の作り方を教えるよ」
 リーンはそう言って微笑む。
「そうですね。『水球』を作れる者達を集めて、男の方達が戻ってきたら、彼らにも…」
 これが、夕食をご馳走になる分の対価。
 どうしても、そう考える癖が治らない。
 …好意で夕食をと、言われているのに。
「ありがとうございます。…若い者達にダメだとばかり言うのも、可愛そうで…」
「リオナスに来るときには、役所に声をかけてください。多分、ルーク様が居ますから」
 カズキがそう言って、集落の住民にもらった物を持ち直し神殿を出る。
 リーンもその後を追いかけて神殿を出ると、水上集落の住民が集まっていて、また、拝まれ始めた。
「…。」
「『水球』を作れる方は、水際に集まってください。ワンランク上の『天水球』を教えてくれるそうですよ」
 カズキはそう言って、住民に言いながら水上集落から橋に向かい、橋を渡り出す。
 …カズキ。馴染んでるね…。
 リーンはそう思いながら、後を付いていった。



 
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