上 下
148 / 462
蜜月

リーンの部屋

しおりを挟む
 ルークは緊張しながら、約束通り時間を作った。 
 リーンの獣人の家族に会いに行くのだ。 
 獣人の家族は、リーンがいた、森の奥の聖域に入ることの出来る一族で、目覚めたリーンの面倒を見て、家族として迎え入れてくれた獣人達なのだと聞いている。 
 時々話のなかに出てくる森の奥の聖域とは、いったいどんな場所なのだろうか。
 魔素が強くて、魔力の弱い者は近付けないと言っていた。
 だから、これから会いに行く獣人達は強い魔力を持つ者達なのだろう。
 子供達をお昼寝させ、キリトに任せ、グオルクに繋がる魔方陣の有る小屋に、リーンと共に向かった。
 寝室の横に有る、大きな壁。
 今なら、そこに魔方陣が隠れていて、少し魔力を加えれば写し出されることが分かる。
 リーンが先に魔方陣に手を添える。
「グオルクの私の部屋へ」
 そう言うと、淡く光リーンの手が吸い込まれた。
「魔力を少し加えて、こんな風に場所を指定すれば、繋がっているところへ連れていってくれる」
 そう言ってリーンは魔方陣の中へと消えていった。
 リーンが中へ入ってしまうと、何も無かったかのように、魔方陣の光も消える。
 ルークはリーンと同じように壁に触れ、魔力を加えると、再び淡く光だした。
「グオルクのリーンの部屋へ」
 そう言うと、スッと手が吸い込まれた。
 ルークが思いきって中に飛び込むと、そこは見知らぬシンプルな部屋だった。
 辺りを見回すと、ベッドとテーブル、イス、本棚が有るが、生活感の無い殺風景な部屋だった。 
 ここがリーンの部屋…。
「良かった。これで、渡れるよね。帰りは同じように、この壁に『カザナの小屋へ』で、帰れるから…」
 側にいたリーンがそう言って微笑む。
 本当にここは、獣人の町、グオルクなのだろうか…。
「リーン。帰ってきたの?」
 部屋の外から女性の声が聞こえてくる。
「チイ、つがいを連れて来たよ」
 リーンがそう言うと、部屋の扉が開いて、声の主が姿を表した。
 ひょう族だろうか…。
 頭に金茶色の耳があり、金髪のふわふわした髪を後で結んだ、優しげな女性…。
 でも確か、獣人族は女性体は少ないと聞いていてが…。
 彼女は驚いたように、目を丸くして俺をみて、そして微笑んでくれた。
「良い好みしてるじゃないの」
「初めまして。ルークと言います」
 ルークが彼女に頭を下げると、
「初めまして。チイよ。噂には聞いていたけど、魔力のつがいなってるわね」 
 チイがそう言って、リーンは頬を染めた。
「魔力のつがいとは?」
 ルークはつがいは獣人族の伴侶の事だと思っていたが、魔力のつがいとは、聞いたことがなかった。
「…『魔力の交合』をして、最高値まで上げれる相手の事だよ…。ルークの抑制されていた魔力が元に戻ったから…出きるわけで…」
「人族で言う、生涯の伴侶になる相手の事よ」
 チイが楽しそうに答える。
「私は嬉しいの、リーンが誰かの手を握った事が…」
 …いつも一人で旅をして、森を守るリーンの拠り所…。
「立ち話もなんだから、こっちへいらっしゃい。ルナももうすぐ目を覚ますわ」
 チイはそう言って、部屋を出ていった。
「ルナとは?」
「チイの子供だよ。ちょうど同じ頃、産まれたから今は三才。かわいいよ」
 そう言ってリーンは微笑む。
 獣人の子供はあまり見かけない。
 ましてや、産まれて数年だと、親元から離さないからだ。
「楽しみだな」
 ルークはリーンに連れられて、チイのいる居間に向かった。
  

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法薬師の恋の行方

つくも茄子
BL
魔法薬研究所で働くノアは、ある日、恋人の父親である侯爵に呼び出された。何故か若い美人の女性も同席していた。「彼女は息子の子供を妊娠している。息子とは別れてくれ」という寝耳に水の展開に驚く。というより、何故そんな重要な話を親と浮気相手にされるのか?胎ました本人は何処だ?!この事にノアの家族も職場の同僚も大激怒。数日後に現れた恋人のライアンは「あの女とは結婚しない」と言うではないか。どうせ、男の自分には彼と家族になどなれない。ネガティブ思考に陥ったノアが自分の殻に閉じこもっている間に世間を巻き込んだ泥沼のスキャンダルが展開されていく。

媚薬盛られました。クラスメイトにやらしく介抱されました。

みき
BL
媚薬盛られた男子高校生が、クラスメイトにえっちなことされる話。 BL R-18 ほぼエロです。感想頂けるととても嬉しいです。 登場キャラクター名 桐島明×東郷廉

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

ヘタレな師団長様は麗しの花をひっそり愛でる

野犬 猫兄
BL
本編完結しました。 お読みくださりありがとうございます! 番外編は本編よりも文字数が多くなっていたため、取り下げ中です。 番外編へ戻すか別の話でたてるか検討中。こちらで、また改めてご連絡いたします。 第9回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございました_(._.)_ 【本編】 ある男を麗しの花と呼び、ひっそりと想いを育てていた。ある時は愛しいあまり心の中で悶え、ある時は不甲斐なさに葛藤したり、愛しい男の姿を見ては明日も頑張ろうと思う、ヘタレ男の牛のような歩み寄りと天然を炸裂させる男に相手も満更でもない様子で進むほのぼの?コメディ話。 ヘタレ真面目タイプの師団長×ツンデレタイプの師団長 2022.10.28ご連絡:2022.10.30に番外編を修正するため下げさせていただきますm(_ _;)m 2022.10.30ご連絡:番外編を引き下げました。 【取り下げ中】 【番外編】は、視点が基本ルーゼウスになります。ジーク×ルーゼ ルーゼウス・バロル7歳。剣と魔法のある世界、アンシェント王国という小さな国に住んでいた。しかし、ある時召喚という形で、日本の大学生をしていた頃の記憶を思い出してしまう。精霊の愛し子というチートな恩恵も隠していたのに『精霊司令局』という機械音声や、残念なイケメンたちに囲まれながら、アンシェント王国や、隣国のゼネラ帝国も巻き込んで一大騒動に発展していくコメディ?なお話。 ※誤字脱字は気づいたらちょこちょこ修正してます。“(. .*)

【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。

琉海
BL
 不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。  しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。  迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。  異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

悪魔の子と呼ばれ家を追い出されたけど、平民になった先で公爵に溺愛される

ゆう
BL
実の母レイシーの死からレヴナントの暮らしは一変した。継母からは悪魔の子と呼ばれ、周りからは優秀な異母弟と比べられる日々。多少やさぐれながらも自分にできることを頑張るレヴナント。しかし弟が嫡男に決まり自分は家を追い出されることになり...

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

処理中です...