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ギザ王国

毒の魔法

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 ルークの中に入れられた毒を吸出して、私の中で浄化してやる! 
 と、意気ごんで、ルークの口から入った魔力に押され、逃げ場を無くした毒の魔力を、夢中になって吸取ったが、魔法で複雑に組み合わされ、体内に入って毒となると魔法の一種な為、お腹の中で暴れている。
 浄化するには少し時間がかかりそうだ。
しばらくは、安静にしてろよ。…さっさと終わらせて帰るぞ」
 リーンはそう言って微笑んだものの、この毒の魔法を何とかしなくてはいけない。
 そう思っていると、『守護の実』に守られて、絶対に誰も入られないようにした筈の、天幕の中に『魔女の抜け道』空間を渡る抜け穴が出現した。
「…ソフィア」
 彼女なら、『守護の実』の中に入ってこれるだけの、魔力を持っている。
 それに、解毒もできる。
「面白いことに、なっているじゃないの」
 魔女王ソフィアが『魔女の抜け道』を通って姿を現し、横たわるルークと、毒の魔法に耐えているリーンを交互に見た。
「リーン。その毒の魔法を解除して欲しい?」
「…そのつもりで来たんだろ」
 まるで胃もたれしているみたいに重く、お腹を押さえるリーンにソフィアは微笑んで答えた。
「そうよ。でも、ただ解除するだけでは、面白くないじゃない」
「…何の対価が欲しい」
 何か欲しいものが有るから、交渉してくる。
「…そうね。今で無くて良いの。リーンの身体を貸して欲しい」
「身体?」
 また、変わった事を言い出した。
「そう。まだ、完成していないけど、リーンの身体でないと出来ない魔法」 
「…。何をさせる気だ」
 私の身体でないと出来ない魔法とは、一体なんだ!?
「秘密」
「…。」
「だから、リーンの身体に変なものを入れておきたく無いのよね」
 ソフィアは楽しそうに笑う。
 何がしたいのか、全く検討がつかない。
「それは、リーンを…苦しめる…事に…なるのか?」
 ルークがベットから、ダルそうに口を挟む。
「まさか。長く楽しませてもらうために、そんな事をするわけ無いわ」
「…リーン」
 ルークが心配そうにリーンを見つめてくる。
 思ったより、身体を蝕む魔法がきつそうだからだろう。
 リーンは、ため息をついた。
「…分かった。必要になったとき、身体を貸すから、こいつを何とかしてくれ」
 ソフィアはフフっと笑い、手のひらに魔方陣を作り出すと、リーンの胸からお腹にかけて、それで撫でてきた。
 吸い取られるように、黒いもやが身体から出てきて、魔方陣から出てきた、金色の触手に絡め取られ、ボールのように丸く縛られていく。
 それと同時に、リーンの身体が軽くなった。
 毒の魔法が取り出されたからだろう。
「これにも、興味が有ったのよね。何を組み合わせてあるか、ほどくのが楽しみだわ」
 ソフィアは手のひらにそれを持って、真剣な表情でリーンを見る。
「何人かそっちに送ったから、ギザの残党を、一掃してしまって。私の領域周辺を荒らしているの」
「…『魔女の森』の…方もか…」
 ルークが重いため息をついて、ソフィアを見る。
「『魔女の森』は、大丈夫なの。私達と契約している周辺の村が、荒らされているの。対価を払わず奪い取る、山賊まがいの事をしているのよ」
 『魔女の森』の魔女達は、薬や魔法道具と交換に、村の野菜や果物などの作物や、材料を入手している。
 魔女の領域ではないが、魔女との契約によって守られ生活している村がいくつもあるのだろう。
「だがそれが、旧ギザ王国の者だと、何故分かる?」
「今のギザ王国に罪を擦り付けるように、自ら名乗っているわ」
 ソフィアは呆れたように、肩をすくめる。
「…奴らは、気付いて無いのだろう。『魔女王』と『森の管理者』が後ろ楯になって、内乱を起こしたことを…」
 まあ、知る筈も無いだろうが…。
「…リーン」
 ルークが初耳だとばかりに、目を見開いて驚いている。
「ルーク。後で、詳しいことは説明する」
 ソフィアが援軍を送ってくれたのならば…。
「…いつ頃ここに、たどり着く」
「明日の朝には」
「分かった。何とかしてみる」
 それまでに、ルーク達に説明して、作戦を練って、決着をつけよう。
「よろしくね」
 ソフィアはそう言って、『魔女の抜け道』へと、帰っていった。
「リーン。どういう事だ?」
「色々と複雑なんだよ。…『守護の実』を解いたら、アオ達を呼んで説明する。ギザの残党を一掃して、子供達の誕生日までには帰るよ!」
 リーンはそう言って、『守護の実』を解除した。




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