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魔女の宴 ~独占欲~

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「んっ…」
 リーンが身動ぎをして目を覚ますと、ルークに抱き止められ、髪を撫でるられていた。
 さっきまでの、求めても、求めても足りない強い衝動は収まっている。
 『魔女の宴』の魔法が消えたからだ。
 急いで、ここから出なくてはいけない。
「…逃げるぞ…。服を…取ってきてくれ…」
 身体を起こすのも辛いリーンは、起き上がず、横目にルークに言った。
 ルークは脱ぎ散らかした服を着込み、ベッドから降り、脱ぎ落とされた服や靴を拾って来てくれた。
 身体を起こしてくれ、気だるい身体を何とか動かし、服を着た。
「動けるか?」
「身体が…重い…」
 リーンが立ち上がろうとしたが、ふらりと傾きルークが支えてくれる。
 ルークはマントを羽織らせてくれ、身体を包むと、靴や上着をリーンに持たせ、両腕で抱き上げた。
「首につかまってろ」
 リーンはルークの首につかまり、見上げた。
 このままでは、重くてルークの体力を奪う。
 魔女の森から出るのは、簡単ではない。
 まだ『魔力の交合』の余韻で、ルークと繋がっているはず。
「…ルーク『軽減魔法』を掛けろ。…今なら、私と同調しているから、…私を通して魔法が使える」
「…どうやって?」
 ルークは不思議そうに言う。
 魔法を使えないルークには、この感覚は分からないのかも知れない。
「私に『軽減魔法』をかける、と、思えば良い。ソレだけで、魔法がかかる」
 ルークは目を閉じ、集中して念じ目を開けた。
「『軽減魔法』!!」
 ルークが驚いて、嬉しそうな姿を見て、思わずリーンは微笑えんだ。
 それより、ここから出ないと!!
「帰り道は?」
 ルークが訪ねて来たので、リーンは右手を差し出し、小さな光を出す。
「『光の蝶』出入口に付けた印まで、導いて」
 小さな光は蝶々の姿を形どり、館の外へと向かっていく。
 リーンはルークにしっかりと抱え直され、蝶の後を付いていった。


 館を出ると、外はまだ薄暗く道は迷路のようになっていた。
 これは、魔女王の城に行くときと同じ現象だ。
 逃げ出す男がいても、帰れなくする為の迷宮。
「これは、『光の蝶』がなければ、出入口まではたどり着けないな」
 ルークはそう呟き、足早に次々と変化する街中を進んでいった。
 街中は、し~んと静まり返っているが、時折、叫び声や、うめき声が響いている。
「…日が…昇るまでに、ここを出れれば帰れる…」
 気を紛らわす為に、リーンは話し始めた。
「ソレもルールか?」
「うん。魔女の森の決まり。…入った場所からしか、出られない。日が昇れば、魔女の森の結界が張られる。次に出れるのは、次の満月の明け方…」
 初めて『魔女の森』に来たとき、わかった真実。
 『魔女の森』から、出る時の条件があり、それが出来なければ、次の満月まで出れない。
 だから、日の出までにココを出なくてはいけない。
「それまで、閉じ込められるのか?」
「…うん」
「もしかして、閉じ込められた?」
「…。」
 リーンは答えられない。
 その話をすると言うことは、白獣のユキの事を話さなければ、ならなくなってしまう。
 …そう言えば、ここに来て、ユキの所に行っている時間は無かったな…。 
 いつか、話せるときが来るのかも知れない。
 

 どれだけ歩いたのだろうか。
 辺りが少しづつ明るくなって、道や家が動かなくなり始め、外への道がはっきりと見えだし、その奧にバラのアーチがたたずんでいた。
「あれが、始めにくぐったアーチだな」
 ルークは足早にバラのアーチを抜け、木製の橋が掛けられている小川にたどり着いた。 
「ここを渡れば、魔女の領域から抜けれる」
 リーンがそう言うと、急に橋の上に『魔女の抜け道』空間を渡る抜け穴が現れ、魔女王ソフィアが『魔女の抜け道』から姿を現した。
「実を結ぶ」
 一言そう言って、『魔女の抜け道』は直ぐに消え去った。
 どう言う、意味だ!
 ワザワザ、ソレだけの為に、ソフィアは、ここへは来ない!
 何か重要な意味がある!
 ソフィアは予測能力をも、持っている。
 何に気づいた!
 何が起こる!
 リーンの葛藤をよそに、ルークは橋を渡り、小川を越え、振り向くと、さっきまで見えていたバラのアーチは消えていて、入口が見え無くなっていた。
「…戻ろう」
 ルークはリーンを抱え直し、来た道を、森の中に閉じ込めてある、ガーディの元に向かって歩きだした。


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