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魔女の宴
ちょっと休憩
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謁見のあと、ルークとリーン、ガーディ、アオは馬車に乗って、カザナのお屋敷に向かった。
兄のローレンス一行は、北の街道の宿場町に向かった。
と、言っても、王族御用達の高級宿のほうだ。
その方が、カザナのお屋敷の者達が、慌てずに済むだろうと言う配慮のためだ。
やはり、ギザ王国の印象があまりにも強すぎて、これが、普通なんだよな…と、思い直すことにした。
夕方にはカザナのお屋敷にたどり着き、待っていたのはカズキとジェスだった。
「お帰りなさい。ルーク様」
リーンがお屋敷を出るとき、出掛けていていなかったカズキは、嬉しそうにリーンを見る。
「…お帰りなさいませ。ルーク様」
王城に行かなくては行けなかった為、同行しなかったジェスが静かにリーンを見る。
「…お客様と、思えば良いのですか?」
「…。」
リーンはどう答えて良いのか分からず、ルークを見た。
「旅する仲間で、良いんじゃないか?これから『人魚の湖』周辺の集落に、一緒に向かうんだし…」
ルークがそう言うと、カズキとジェスは顔を見合せ微笑んだ。
「「お帰りなさい。リーン」」
そう言われて、最初はキョトンとして、徐々に頬に赤みがさした。
…言われ馴れていないから、恥ずかしい…。
獣人の家族には、言われていたけれど、それ以外の者には言われたことかない…。
それも、久しぶりだ…。
こう言う時は確か…。
「ただいま。って、言うんですよ」
横からアオが耳打ちしてくる。
リーンは頬を染め、ジェスとカズキを見上げる。
「…た…ただいま…」
すると二人は頭を押さえて、天井を見上げる。
…どうしたんだ?
「…色気が増して、ヤバイんですけど…」
「…この数日間で何が…」
ぼそぼそと呟いて、正気を取り戻し、リーンに微笑みかけてきた。
「お帰りなさい。リーン」
「俺達は?!」
アオが、二人を睨む。
「あぁ、お帰り。アオとガーディも」
「扱いが雑だぞ!!」
アオの反論に反応したのはルークだった。
「…帰って来たって、感じがするな…」
そう言って笑いだした。
…何故だろう…。彼らといる、この空間が好きだな…。
リーンはそんなことを思っていた。
その日、お屋敷に泊まり、翌日、もう一泊する事になった。
宿り木ミーネの側なら、『杭の枝』に出来そうな、小枝を見付けれるかもしれなかったからだ。
朝からしとしとと雨が降っていて、リーンとアオ、カズキは、宿り木ミーネのもとに向かい、挨拶をして森の中に入った。
『杭の枝』に出来るのは、命の尽きていない枝だ。
風によって自然に折れたり、動物によって折られた枝で、人的に切った物ではない。と、言う条件と、魔力を宿せるくらいの強度があるかが問題だ。
森の奧の魔素の多い『聖域』では、多く魔素を取り込んでしまった木々が、枝を差し出してくるから直ぐに集められるが…。
だから、人の住む場所では、なかなか条件に合った枝がないため、ミーネの側なら有るかも知れないと言う期待もあった。
リーンは空の壁で屋根を作り、雨に濡れないよう、歩いていた。
アオも練習を兼ねて、空の壁で屋根を作り、屋根が小さいので縮こまりながら、歩いていた。
カズキは雨ガッパを着て、雨と汗で濡れながら歩いていた。
唯一、『木霊』の見えるカズキには『杭の枝』の見つけ方と、作り方を教えるために同行している。
一時間ほど歩くと、山頂に程近い場所が、集中して枝が折れていた。
風の通り道なのか、枝の根本から折れていて、かろうじてぶら下がっている物もあった。
「こう言うのの事か?」
「そうだね。最近折れたみたいだ」
リーンが木に手を触れさせると、ほんのりと光、根本から折れ落ちてきた。
「木に触れて、枝までの繋がりが切れているか確認して、枝をもらう。こうすれば、木の負担が少ないからね。カズキはそこの枝でやってみて」
まだ、根本から折れている枝が有るので、カズキは挑戦して、少し時間がかかったが、枝をもらうことが出来た。
「繋がりを探るのが難しいな」
「そうだね。木の中に流れる水を追って…アオもやってみる?」
「やってみたいが、『水の壁』を作るだけで限界です。同時に二つは…」
「屋根は作ってあげるよ。何処まで出来るか試すのには、いろんな魔法を使ってみた方が良いからね」
リーンは手をかざし、周囲一体に『空の壁』を張り巡らせ巨大な屋根を作り、大地に手を触れさせ濡れた大地を乾かす。
アオと、カズキはその光景を呆然と見ていた。
「…さすが、リーンさん。俺もこれくらい出来るようになりたい!」
「…すごすぎる」
リーンはにっこりと微笑み、『杭の枝』を説明しながら作り出した。
思ったより『杭の枝』の補充が出来き、リーンはホッとして、アオとカズキと共に屋敷に戻った。
今日、一晩泊まって、明日の朝には出発する予定だ。
ガーディは馬車の荷物の点検と、食料の補充をしていて、ルークとジェスは王城に行っている。
ジェスは『風霊』を扱えるので、転移魔法を使って、王に報告をしに行ったそうだ。
そして、ジェスの魔力が回復しだい、…夜には帰ってくる。
リーンは今の状況が不思議だった。
いつも一人で旅をしていて、時々そこで知り合った者達と過ごし、別れて、また、別の人々と出会い、一緒に過ごし、また、別れる。
それの繰り返しだった。
だけど今、出会って、一緒に過ごして、人魚の湖まで行って、帰ってきて、また、一緒の人達と、集落巡りを始める…。
長い時間、一緒にいるのは、獣人の家族以来、久しぶりだだった。
「ただいま。久しぶりに王に会ったら、なかなか帰してもらえなくて…」
ルークは苦笑いしながら屋敷に戻ってきた。
「ただいま。王城に寄り付かないルーク様が悪いんですよ。王だって、心配なさってるんですから…」
ジェスが困ったように、肩をすくめる。
「お帰り」
リーンは微笑んで彼らを出迎えた。
明日からは、『人魚の湖』の集落巡り。
また、何が起こるか分からないので、用心に越したことはない。
けれど、頼もしい彼らと旅をするのも悪くないと、リーンは思うようになっていた。
兄のローレンス一行は、北の街道の宿場町に向かった。
と、言っても、王族御用達の高級宿のほうだ。
その方が、カザナのお屋敷の者達が、慌てずに済むだろうと言う配慮のためだ。
やはり、ギザ王国の印象があまりにも強すぎて、これが、普通なんだよな…と、思い直すことにした。
夕方にはカザナのお屋敷にたどり着き、待っていたのはカズキとジェスだった。
「お帰りなさい。ルーク様」
リーンがお屋敷を出るとき、出掛けていていなかったカズキは、嬉しそうにリーンを見る。
「…お帰りなさいませ。ルーク様」
王城に行かなくては行けなかった為、同行しなかったジェスが静かにリーンを見る。
「…お客様と、思えば良いのですか?」
「…。」
リーンはどう答えて良いのか分からず、ルークを見た。
「旅する仲間で、良いんじゃないか?これから『人魚の湖』周辺の集落に、一緒に向かうんだし…」
ルークがそう言うと、カズキとジェスは顔を見合せ微笑んだ。
「「お帰りなさい。リーン」」
そう言われて、最初はキョトンとして、徐々に頬に赤みがさした。
…言われ馴れていないから、恥ずかしい…。
獣人の家族には、言われていたけれど、それ以外の者には言われたことかない…。
それも、久しぶりだ…。
こう言う時は確か…。
「ただいま。って、言うんですよ」
横からアオが耳打ちしてくる。
リーンは頬を染め、ジェスとカズキを見上げる。
「…た…ただいま…」
すると二人は頭を押さえて、天井を見上げる。
…どうしたんだ?
「…色気が増して、ヤバイんですけど…」
「…この数日間で何が…」
ぼそぼそと呟いて、正気を取り戻し、リーンに微笑みかけてきた。
「お帰りなさい。リーン」
「俺達は?!」
アオが、二人を睨む。
「あぁ、お帰り。アオとガーディも」
「扱いが雑だぞ!!」
アオの反論に反応したのはルークだった。
「…帰って来たって、感じがするな…」
そう言って笑いだした。
…何故だろう…。彼らといる、この空間が好きだな…。
リーンはそんなことを思っていた。
その日、お屋敷に泊まり、翌日、もう一泊する事になった。
宿り木ミーネの側なら、『杭の枝』に出来そうな、小枝を見付けれるかもしれなかったからだ。
朝からしとしとと雨が降っていて、リーンとアオ、カズキは、宿り木ミーネのもとに向かい、挨拶をして森の中に入った。
『杭の枝』に出来るのは、命の尽きていない枝だ。
風によって自然に折れたり、動物によって折られた枝で、人的に切った物ではない。と、言う条件と、魔力を宿せるくらいの強度があるかが問題だ。
森の奧の魔素の多い『聖域』では、多く魔素を取り込んでしまった木々が、枝を差し出してくるから直ぐに集められるが…。
だから、人の住む場所では、なかなか条件に合った枝がないため、ミーネの側なら有るかも知れないと言う期待もあった。
リーンは空の壁で屋根を作り、雨に濡れないよう、歩いていた。
アオも練習を兼ねて、空の壁で屋根を作り、屋根が小さいので縮こまりながら、歩いていた。
カズキは雨ガッパを着て、雨と汗で濡れながら歩いていた。
唯一、『木霊』の見えるカズキには『杭の枝』の見つけ方と、作り方を教えるために同行している。
一時間ほど歩くと、山頂に程近い場所が、集中して枝が折れていた。
風の通り道なのか、枝の根本から折れていて、かろうじてぶら下がっている物もあった。
「こう言うのの事か?」
「そうだね。最近折れたみたいだ」
リーンが木に手を触れさせると、ほんのりと光、根本から折れ落ちてきた。
「木に触れて、枝までの繋がりが切れているか確認して、枝をもらう。こうすれば、木の負担が少ないからね。カズキはそこの枝でやってみて」
まだ、根本から折れている枝が有るので、カズキは挑戦して、少し時間がかかったが、枝をもらうことが出来た。
「繋がりを探るのが難しいな」
「そうだね。木の中に流れる水を追って…アオもやってみる?」
「やってみたいが、『水の壁』を作るだけで限界です。同時に二つは…」
「屋根は作ってあげるよ。何処まで出来るか試すのには、いろんな魔法を使ってみた方が良いからね」
リーンは手をかざし、周囲一体に『空の壁』を張り巡らせ巨大な屋根を作り、大地に手を触れさせ濡れた大地を乾かす。
アオと、カズキはその光景を呆然と見ていた。
「…さすが、リーンさん。俺もこれくらい出来るようになりたい!」
「…すごすぎる」
リーンはにっこりと微笑み、『杭の枝』を説明しながら作り出した。
思ったより『杭の枝』の補充が出来き、リーンはホッとして、アオとカズキと共に屋敷に戻った。
今日、一晩泊まって、明日の朝には出発する予定だ。
ガーディは馬車の荷物の点検と、食料の補充をしていて、ルークとジェスは王城に行っている。
ジェスは『風霊』を扱えるので、転移魔法を使って、王に報告をしに行ったそうだ。
そして、ジェスの魔力が回復しだい、…夜には帰ってくる。
リーンは今の状況が不思議だった。
いつも一人で旅をしていて、時々そこで知り合った者達と過ごし、別れて、また、別の人々と出会い、一緒に過ごし、また、別れる。
それの繰り返しだった。
だけど今、出会って、一緒に過ごして、人魚の湖まで行って、帰ってきて、また、一緒の人達と、集落巡りを始める…。
長い時間、一緒にいるのは、獣人の家族以来、久しぶりだだった。
「ただいま。久しぶりに王に会ったら、なかなか帰してもらえなくて…」
ルークは苦笑いしながら屋敷に戻ってきた。
「ただいま。王城に寄り付かないルーク様が悪いんですよ。王だって、心配なさってるんですから…」
ジェスが困ったように、肩をすくめる。
「お帰り」
リーンは微笑んで彼らを出迎えた。
明日からは、『人魚の湖』の集落巡り。
また、何が起こるか分からないので、用心に越したことはない。
けれど、頼もしい彼らと旅をするのも悪くないと、リーンは思うようになっていた。
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