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天水球
出来ない約束
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滞在十日目。
日の出と共に、リーンはミーネのもとにいた。
腰にポーチを付け、斜め掛けのバックを身体に掛け、フード付きのマントを羽織、直ぐにても出かけられる格好だ。
地中から、手のひらサイズの『天水球』を引き出し、朝日に照らす。
濁りのあった『天水球』は透き通り、キラキラと輝き、浄化されたことを証明していた。
それを袋に入れ、斜め掛けのバックの中に入れる。
「そろそろ、ココを離れる」
『どちらへ?』
珍しくミーネが聞いてくる。
「人魚の泉。そろそろ満月だ…」
人魚の泉の湖底には、水人達が住んでいる。
満月に近くなると繁殖の為、水上にも姿を現し、湖に誘って、逃げ場の無い湖底へと連れて行き、繁殖行為を行うのだ。
そんな、水人達だか、水中都市の主、竜人との契約で、『魔力の交合』をする前が、大変なのだ…。
だから、あまり行きたくは無い…。
だけど、魔力を満たしてくれる…。
それと、ちょっと気になる事もあった。
『行かれるのですね』
「ああ、また来る…」
リーンはミーネに微笑んで、宿り木を後にした。
屋敷に向かうと、そこにはルークが仁王立ちで、腕を組んで立っていた。
そして、アオと、ジェス、ガーディも、呆れた顔をして、戻って来るのを待ち構えていた。
「…。」
リーンは気まずそうに顔を歪めた。
「出ていく時、挨拶くらい、するだろ!」
「…うん。…そのつもりだった」
「…その格好でですか?」
アオが、リーンの服装を眺めて、そう言う。
「…。」
「どちらに向かって行くか、予定は決まっているのですか?」
「ココに来て、…街に行ってないから、…市場を見学して、…森に戻る…」
よく考えてみれば、屋敷から…出ていないのだ…。
唯一、オケの谷に行ったが、帰りは馬車の中で、眠っていたし、街に降りていない。
「今なら、朝一もやってますよ」
アオはそう言って微笑む。
「しばらくでしたけど、お世話になりました」
「こちらこそ。色々と教えもらえて楽しかったよ」
ジェスは嬉しそうに話す。
「『天水球』もっと訓練しておく。また、知らない魔法を教えてくれ」
「部屋に、『魔法石』が残っているから、今のが制御できるようになったら使って…」
ガーディが神妙な顔をして、リーンに頭を下げる。
「…マミヤを救ってくれて、ありがとう」
驚いていると、アオは肩をすくめて、通訳してくれる。
「…ガーディは、オケの谷の下流にある、集落マミヤの出身なんだ。知らせが直ぐに言って、避難できたから、…家は流れたけど皆、無事だったんだよな…」
「ああ。なかなか、話す機会がなく…」
ガーディは困ったように頭をかく。
…話すのが苦手なようだ。
「…市場まで、送っていこうか?」
ルークにそう言われて、リーンは首を横に振る。
未練がましく、なりたくない…。
「木々の中を、少し歩きたいから…」
「…リーン。また、来てくれ」
ルークが再来を求めて来るが無理なのだ…。
「…約束は…出来ない…」
リーンは少し悲しげに、答える。
時間の流れが違うのだ。
簡単には、約束できない…。
「ありがとう。楽しかったよ」
リーンはそう言って、彼らに見送られ、屋敷を離れ、街に向かって丘を降りていった。
さようなら…。
日の出と共に、リーンはミーネのもとにいた。
腰にポーチを付け、斜め掛けのバックを身体に掛け、フード付きのマントを羽織、直ぐにても出かけられる格好だ。
地中から、手のひらサイズの『天水球』を引き出し、朝日に照らす。
濁りのあった『天水球』は透き通り、キラキラと輝き、浄化されたことを証明していた。
それを袋に入れ、斜め掛けのバックの中に入れる。
「そろそろ、ココを離れる」
『どちらへ?』
珍しくミーネが聞いてくる。
「人魚の泉。そろそろ満月だ…」
人魚の泉の湖底には、水人達が住んでいる。
満月に近くなると繁殖の為、水上にも姿を現し、湖に誘って、逃げ場の無い湖底へと連れて行き、繁殖行為を行うのだ。
そんな、水人達だか、水中都市の主、竜人との契約で、『魔力の交合』をする前が、大変なのだ…。
だから、あまり行きたくは無い…。
だけど、魔力を満たしてくれる…。
それと、ちょっと気になる事もあった。
『行かれるのですね』
「ああ、また来る…」
リーンはミーネに微笑んで、宿り木を後にした。
屋敷に向かうと、そこにはルークが仁王立ちで、腕を組んで立っていた。
そして、アオと、ジェス、ガーディも、呆れた顔をして、戻って来るのを待ち構えていた。
「…。」
リーンは気まずそうに顔を歪めた。
「出ていく時、挨拶くらい、するだろ!」
「…うん。…そのつもりだった」
「…その格好でですか?」
アオが、リーンの服装を眺めて、そう言う。
「…。」
「どちらに向かって行くか、予定は決まっているのですか?」
「ココに来て、…街に行ってないから、…市場を見学して、…森に戻る…」
よく考えてみれば、屋敷から…出ていないのだ…。
唯一、オケの谷に行ったが、帰りは馬車の中で、眠っていたし、街に降りていない。
「今なら、朝一もやってますよ」
アオはそう言って微笑む。
「しばらくでしたけど、お世話になりました」
「こちらこそ。色々と教えもらえて楽しかったよ」
ジェスは嬉しそうに話す。
「『天水球』もっと訓練しておく。また、知らない魔法を教えてくれ」
「部屋に、『魔法石』が残っているから、今のが制御できるようになったら使って…」
ガーディが神妙な顔をして、リーンに頭を下げる。
「…マミヤを救ってくれて、ありがとう」
驚いていると、アオは肩をすくめて、通訳してくれる。
「…ガーディは、オケの谷の下流にある、集落マミヤの出身なんだ。知らせが直ぐに言って、避難できたから、…家は流れたけど皆、無事だったんだよな…」
「ああ。なかなか、話す機会がなく…」
ガーディは困ったように頭をかく。
…話すのが苦手なようだ。
「…市場まで、送っていこうか?」
ルークにそう言われて、リーンは首を横に振る。
未練がましく、なりたくない…。
「木々の中を、少し歩きたいから…」
「…リーン。また、来てくれ」
ルークが再来を求めて来るが無理なのだ…。
「…約束は…出来ない…」
リーンは少し悲しげに、答える。
時間の流れが違うのだ。
簡単には、約束できない…。
「ありがとう。楽しかったよ」
リーンはそう言って、彼らに見送られ、屋敷を離れ、街に向かって丘を降りていった。
さようなら…。
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