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緑の館

『物質保管庫』

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 リーンとアオは魔法石の欠片が入った箱を、ルークが剣の入ったケースを持って、リーンの滞在している部屋に運んだ。
 これだけのモノをみせてもらったのだから、こちらも、手の内を少し見せて置かないと…。
 こちらも信用していると、わかってもらう為に…。
「誰にも言わないでね」
 リーンはそう、前置きをして右手をかざした。
「『物質保管庫』」
 リーンがそう言うと、ドーナツ状態の魔方陣が現れる。
 その中心が引き出しになっていて、引き出から陶器で出来た小さな入れ物を幾つも取り出す。
 引き出しを閉め、再び引き、今度は木製の平たいケースを取り出す。
「…。」
 二人は目を丸くし、茫然と、そのドーナツ状態の魔方陣を見ていた。
「必要なモノをはコレで、運んでいるんだ。荷物が多くなってしまうから…」
 ルークは我に返り、リーンを見る。
「…俺達に、こんなもの見せて良いのか?」
 リーンは苦笑いし、欠片の入った箱の中から一粒づつ取り出し、木製の平たいケースに並べ始める。
「隠しきれるモノでもないし、色々準備してもらうのも手間だから…。知っててもらった方が、良いと思って…」
 多くの人に知られては困るが、彼等なら大丈夫。
「だから、荷物が少なかったのか…」
 ルークは不思議に思っていたことが解決し、スッキリした顔でリーンを見る。
 外から戸がノックされ、ガーディが顔を覗かせる。
「ルーク様…」
 そう呼ばれて、ルークは頷き、部屋の外に足を向ける。
「午後からの訓練、よろしく」
 ルークはそう言って部屋を出ていった。
 部屋に残ったアオは、何か言いたげにリーンを見る。
「リーンさん…良いんですか?」
「何が?」
 リーンは作業を続けながら、返事する。
「深入り…しないんでは…なかったのですか?」
 リーンは手を止めアオを見る。
「…私を、知っているんだ…」
「その…耳飾り…兄のモノです…」
 そうだったんだ…。
 世界は広いようで狭いな…。
 何時いつかは、分かることだけど…今は…。
「…。まだ、秘密にしておいて」
 リーンはそう言って作業を始める。
 今は、まだ…。
「…分かりました」
 アオはそう言って部屋を出ていった。

 
 アオの兄、アキに出会ったのは、彼が山で足を滑らせて崖下でうずくまっているのを見つけ、村に送り届けたのが始まりだった。
 砂金の出る村だったのだが、商品が盗賊に狙われたり、町で安く買い取られ、厳しい生活をしていた。
 リーンが町の知り合いを紹介し、警備をいれてもらい、生活が一変した。
 今は、平和な村になっているはず。
 別れ際に、アキが耳飾りをくれたのだ。
 本来は、一番初めに作った作品を、村の守り神に捧げるのたが、村を助けてくれたから、と、私にくれたのだ。
 あれから、一度、両方の耳飾りを手放し、片方だけ戻ってきた。
 リーンは左耳に付けてある耳飾りに触れる。
 ……ここで、その繋がりがあると言うのは、何か意味が有るのか?
 読み間違えをしないように、気付けないと…。
 だけど、こうやって魔法を教えたり、魔法石を加工したりするのが楽しく、本来の目的を忘れそうになってしまう…。


 山の奥で雨が降り始めた…。
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