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日常
花屋
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ハズキが運転する魔動車は、街中から離れ、木々が繁る郊外へと向かった。
どこに行くのだろう…。
運転するハズキの方をチラリと見る。
買い物に来たのに、本当に二人でドライブしているみたいだ。
アヤトは何となく落ち着かなくなった。
何、ドキドキしているのだろう…。
ハズキが連れてきてくれたのは、街外れの山の麓にある大きな花屋だった。
「ココは花だけでなく、苗木とか肥料とか、必要な道具とかも売っているんだ」
ハズキにそう言われて、思わずハズキを凝視する。
ハズキが連れていきたい場所って…。
アヤトはなぜかムズムズした。
もしかして、僕が喜ぶと思って…?
ハズキは、調理場の裏口から外に出て、建物の横に有る小さな花壇に、ハーブや薬味を少し植えていた。
使う量は、ほんの少しで良いし、調理中に取りに行って、収穫してすぐに調理使えるため、都合が良かったからだ。
もしかして、それを知っているのか?
アヤトは魔動車から降り、店内に入ると、種類の多さにびっくりした。
入り口付近には、色とりどりの花の苗が種類ごとに並び、左手には野菜の苗、右手には苗木が並んでいる。
「農業をしている人も買いに来るみたいだよ」
ハズキはそう言って、左手の奥に入っていく。
アヤトも並ぶ苗を見ながら追いかけて行った。
ハズキが立ち止まった場所まで行くと、目の前にいろんな種類のハーブが置いてあった。
「これ、よく食事に使って入るでしょ。裏の小さい花壇にちょこっと植えてあるの」
やっぱり気が付いていたんだ。
僕が植えて育てていたの…。
やはりムズムズしてくる。
「ここは、種類が多いし、もっと使える葉っぱがあるかなって」
ハズキが微笑む。
葉っぱねぇ…。
興味がなければ区別がつかないから、仕方ないか…。
アヤトは苦笑いしながら苗を見回す。
街中に有る花屋より種類が多く、自分の知らない植物がたくさん有る。
すごいな…。
アヤトは感嘆した。
「もう少し場所を増やして、育てれば良いかな…って思って」
「…どうして…」
アヤトはハズキを見上げる。
「うん~。昨日のお詫び?」
「えっ?!」
アヤトは昨夜の事を思い出して真っ赤になる。
お詫びと言うことは、口にしないだけで、昨日の事を反省はしているようだ。
「て、言うか、本当はもっと早く連れてきたかったんだけど、なかなか仕事の区切りがつかなくて…」
「…。」
「育てていて、分からないことが有ったら、教えてくれるよ。初心者でも簡単に育てられるものを相談とかできるから」
僕の事を思って、気遣ってくれるいつもの優しいハズキさん…。
…うれしい…。
「…ありがとう。でも、今日は止めておく。花壇の草むしりから始めないと…」
必要な分だけしか使っていないので、新たに植えようとすると、場所を作ってからだ。
でも、どんな種類が有るのかを見て回るだけでも楽しいかも…。
アヤトは無意識に笑みを浮かべていた。
「喜んでもらえたら嬉しい」
そう言ってハズキは微笑む。
アヤトは笑みを向けられ、眩しくて横を向く。
どうしてだろう…。
昨日の事を怒っていたのに、まあ、いいか…と、思う自分がいる。
あまり意識しなかったハズキの事に目を向けて、昨日の事を許してしまっている自分に戸惑っていた。
花屋の中をぐるりと一周回って、どんな物が有るのかを見て回り、二人は屋敷へと戻った。
リンゴの皮を剥いて食堂で、シャリシャリと二人でリンゴを食べていると、ハズキは思い出したかのように言う。
「ねえ、裏口だけではなく、もう少し大きい場所に野菜の苗を植えて、育ててみたら?」
「野菜を?」
「うん。家庭菜園だったかな…。ココなら場所はたくさん有るでしょう。土を運んでくるところからだから、ちょっと大変かも知れないけれど、採れたての野菜が食べられるよ」
ハズキがそう言って微笑む。
それは魅力的だ。
採れたての野菜は美味しいと聞いた事が有る。
素人の僕でも育てられる野菜は有るだろうか。
「ちょっと興味は有る」
アヤトがそう言うと、ハズキが微笑んだ。
「場所はね、食堂とは反対側の建物側。日当たりは良いし、魔動車や飛行船の邪魔にもならないからね」
「…。」
もしかして、最初から考えて決めていた?
「それで、僕の部屋からも見える場所」
「…。」
食堂とは反対側の建物側はハズキさんやカイトさんの部屋が有る側だ。
それは分かっているが…。
アヤトはハズキをじっと見る。
「…部屋、窓を塞いでいるから見えないんじゃ…」
ハズキの部屋は作業部屋になっているので、壁で仕切りを作り、窓側も棚で塞がっていると言っていたはず…。
「…一ヶ所、開いてるよ。カイトの部屋で言うと、キッチン側。水と火を使うときに換気をしたいからね」
「…。」
ソレって、ハズキさんの部屋から、僕が家庭菜園に居るのが見えるような場所にって事だよね…。
部屋の窓からハズキが見下ろして、僕が作業している姿を見ているところを想像して、アヤトの耳が赤くなって、うつ向いてしまった。
自意識過剰だけなのかもしれないが、なんかドキドキして照れくさい。
ソレに、見られて作業するのはちょっと…。
「アヤトが家庭菜園に興味が有るなら、すぐに手配するね」
ハズキはそう言って食堂を出ていった。
興味は有る。
けれど、えっと…すぐに手配って、もしかして、段取りは終わってるの?
…計画していた…?
アヤトは困惑しながらも、嬉しかった。
ハズキがどこまでアヤトの思惑を感じ取っていたのか分からないが、ハーブを育てながら、いつか野菜も育ててみたいと思っていたからだ。
どこに行くのだろう…。
運転するハズキの方をチラリと見る。
買い物に来たのに、本当に二人でドライブしているみたいだ。
アヤトは何となく落ち着かなくなった。
何、ドキドキしているのだろう…。
ハズキが連れてきてくれたのは、街外れの山の麓にある大きな花屋だった。
「ココは花だけでなく、苗木とか肥料とか、必要な道具とかも売っているんだ」
ハズキにそう言われて、思わずハズキを凝視する。
ハズキが連れていきたい場所って…。
アヤトはなぜかムズムズした。
もしかして、僕が喜ぶと思って…?
ハズキは、調理場の裏口から外に出て、建物の横に有る小さな花壇に、ハーブや薬味を少し植えていた。
使う量は、ほんの少しで良いし、調理中に取りに行って、収穫してすぐに調理使えるため、都合が良かったからだ。
もしかして、それを知っているのか?
アヤトは魔動車から降り、店内に入ると、種類の多さにびっくりした。
入り口付近には、色とりどりの花の苗が種類ごとに並び、左手には野菜の苗、右手には苗木が並んでいる。
「農業をしている人も買いに来るみたいだよ」
ハズキはそう言って、左手の奥に入っていく。
アヤトも並ぶ苗を見ながら追いかけて行った。
ハズキが立ち止まった場所まで行くと、目の前にいろんな種類のハーブが置いてあった。
「これ、よく食事に使って入るでしょ。裏の小さい花壇にちょこっと植えてあるの」
やっぱり気が付いていたんだ。
僕が植えて育てていたの…。
やはりムズムズしてくる。
「ここは、種類が多いし、もっと使える葉っぱがあるかなって」
ハズキが微笑む。
葉っぱねぇ…。
興味がなければ区別がつかないから、仕方ないか…。
アヤトは苦笑いしながら苗を見回す。
街中に有る花屋より種類が多く、自分の知らない植物がたくさん有る。
すごいな…。
アヤトは感嘆した。
「もう少し場所を増やして、育てれば良いかな…って思って」
「…どうして…」
アヤトはハズキを見上げる。
「うん~。昨日のお詫び?」
「えっ?!」
アヤトは昨夜の事を思い出して真っ赤になる。
お詫びと言うことは、口にしないだけで、昨日の事を反省はしているようだ。
「て、言うか、本当はもっと早く連れてきたかったんだけど、なかなか仕事の区切りがつかなくて…」
「…。」
「育てていて、分からないことが有ったら、教えてくれるよ。初心者でも簡単に育てられるものを相談とかできるから」
僕の事を思って、気遣ってくれるいつもの優しいハズキさん…。
…うれしい…。
「…ありがとう。でも、今日は止めておく。花壇の草むしりから始めないと…」
必要な分だけしか使っていないので、新たに植えようとすると、場所を作ってからだ。
でも、どんな種類が有るのかを見て回るだけでも楽しいかも…。
アヤトは無意識に笑みを浮かべていた。
「喜んでもらえたら嬉しい」
そう言ってハズキは微笑む。
アヤトは笑みを向けられ、眩しくて横を向く。
どうしてだろう…。
昨日の事を怒っていたのに、まあ、いいか…と、思う自分がいる。
あまり意識しなかったハズキの事に目を向けて、昨日の事を許してしまっている自分に戸惑っていた。
花屋の中をぐるりと一周回って、どんな物が有るのかを見て回り、二人は屋敷へと戻った。
リンゴの皮を剥いて食堂で、シャリシャリと二人でリンゴを食べていると、ハズキは思い出したかのように言う。
「ねえ、裏口だけではなく、もう少し大きい場所に野菜の苗を植えて、育ててみたら?」
「野菜を?」
「うん。家庭菜園だったかな…。ココなら場所はたくさん有るでしょう。土を運んでくるところからだから、ちょっと大変かも知れないけれど、採れたての野菜が食べられるよ」
ハズキがそう言って微笑む。
それは魅力的だ。
採れたての野菜は美味しいと聞いた事が有る。
素人の僕でも育てられる野菜は有るだろうか。
「ちょっと興味は有る」
アヤトがそう言うと、ハズキが微笑んだ。
「場所はね、食堂とは反対側の建物側。日当たりは良いし、魔動車や飛行船の邪魔にもならないからね」
「…。」
もしかして、最初から考えて決めていた?
「それで、僕の部屋からも見える場所」
「…。」
食堂とは反対側の建物側はハズキさんやカイトさんの部屋が有る側だ。
それは分かっているが…。
アヤトはハズキをじっと見る。
「…部屋、窓を塞いでいるから見えないんじゃ…」
ハズキの部屋は作業部屋になっているので、壁で仕切りを作り、窓側も棚で塞がっていると言っていたはず…。
「…一ヶ所、開いてるよ。カイトの部屋で言うと、キッチン側。水と火を使うときに換気をしたいからね」
「…。」
ソレって、ハズキさんの部屋から、僕が家庭菜園に居るのが見えるような場所にって事だよね…。
部屋の窓からハズキが見下ろして、僕が作業している姿を見ているところを想像して、アヤトの耳が赤くなって、うつ向いてしまった。
自意識過剰だけなのかもしれないが、なんかドキドキして照れくさい。
ソレに、見られて作業するのはちょっと…。
「アヤトが家庭菜園に興味が有るなら、すぐに手配するね」
ハズキはそう言って食堂を出ていった。
興味は有る。
けれど、えっと…すぐに手配って、もしかして、段取りは終わってるの?
…計画していた…?
アヤトは困惑しながらも、嬉しかった。
ハズキがどこまでアヤトの思惑を感じ取っていたのか分からないが、ハーブを育てながら、いつか野菜も育ててみたいと思っていたからだ。
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