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4 樹木再生
*再生 1
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薄闇の中、ジンは『御神木』の切り株に座り、リーンと口付けを交わしていた。
「もうすぐ、日が昇る。ロキ達は直ぐ側に来ている。人族は…まだ、来ていない」
「来るよ。きっと」
ジンはそう言って笑う。
「つっ…。『フィールド転開』」
二人を中心に光の魔方陣が現れ、切り株を陣内に入れ、大きく広がる。
「『木霊』『水霊』『風霊』開錠!」
『御神木』の二人の側に新たな三つの魔方陣が出現する。
遠くに馬車の車輪の音が聞こえてきた。
「『接続』」
ジンの中にあった『癒しの枝』と『御神木』から伸びてきた枝が絡まり繋がってゆく。
「痛く、ない?」
「あぁ、大丈夫だ」
「『水源直下』」
地下へと水の光が伸びていき地下水を探る。
辺りが明るくなり、朝日が昇り出す。
「泣いちゃダメだろ」
そう言って、ジンがリーンに手を伸ばし涙を拭う。
「『風の頂』」
止まっていた風がぐるぐると、二人を中心に周り出す。
「リーン」
分かっていたはずなのに、涙が止まらない…。
これで、ジンとお別れなのだ…。
「核を中心に…魔力の流れを更新せよ…『樹木再生』」
『御神木』だった木が光り、木から伸びてきた枝がジンを呑み込んでいく。
不意に、風霊がジンに纏わりつく。
ジンの事を教えに来てくれた風霊…。
…微笑んでこっちを見てる。
…一緒に眠ってくれるのか…。
「リーン。愛してるよ。ここから見守っているから…」
「ジン!」
みるみるジンは呑み込まれ、姿が消えてしまう。
再生の元となる核は出来た…。
これが、第一段階。
泣いてばかりもいられない。
リーンは涙を拭い、ジンが呑み込まれた木に触れる。
「大地と空と水を調和せよ…『魔力再生』」
触れた手から魔力が吸い取られていく。
このまま、魔力を注いで新しい地脈回路を更新していかなくては、いけない…。
「さすがにデカイ魔方陣だな」
「ロキ」
獣人の姿で仲間を連れて近付いてくる。
「こいつに魔力を注げば、いいのか?」
「うん。注ぐと言うより吸い取られるよ…」
ロキはリーンの顔を引き寄せ、流れ出る涙とその後を舐めとる。
「どれだけ、時間がかかる?」
「わからない。まずは地下の土壌と地下水の回復からだから…」
ロキはまだ、流れてくる涙を舐めとり、リーンが動けないことを良いことに、首筋まで舌を這わし甘噛みしてくる。
「つっ…」
「だったら交代で魔力を注いだ方がいいな」
「…よろしく」
ロキはリーンから離れると仲間に指示し、魔力注入をし始める。
そこへスバルが、やって来た。
「リーン。遅くなってすまん」
そう言って馬車の側にいた、村では見なかった若い者達が立ち尽くしていた。
「すげ~。同時に三個も魔方陣…」
「バカ、四個だって。『フィールド』転開してるだろ」
ザワザワと、こちらの様子を伺っている。
「街に行ってた若い衆うを帰省させて、連れてきた。どうすればいい」
「この木に魔力を注いで下さい。底なしなんで、倒れる前に手を離すようにして下さい」
若者達は顔を見合わ、おずおずと聞いてくる。
「…この『フィールド』は、…君が?」
「そうです。一人づつ交代でお願いします」
恐る恐る若者が一人近付き、そっと手を触れさせ慌てて手を引っ込める。
「なっ何なんだこれ!吸い取られる…」
「怖かったら早めに手を離して、交代してもらってかまわないです。木の再生の流れを停めるわけには、いけませんから…」
「あっ、ああ。分かった」
そう言って若者は再び木に手を触れさせた。
横にいたスバルが頭を掻きながら、
「俺にも魔力が有れば手伝うけど…」
「魔力を使って倒れそうな方の介抱をお願いします。そちらは得意でしょ」
そう言って目を赤く腫らしたリーンは笑った。
「…ジンは…」
「ここに居ます、…ここから見守ってるって…」
リーンは手を触れさせたまま木を見上げる。
姿、形は変わるけど、ジンはここに生きている。
「気になったんだが、ちなみに彼等は…」
木の反対側にいるロキを視線で指す。
「狼の里の、獣人のリーダーのロキです。この間、迎えに来た…」
「あっ。なるほど…。よろしく」
ロキはジロリとスバルを睨み付け、スバルは慌ててリーンの側を離れた。
そこから人族、獣人族の魔力の注入が始まった。
「もうすぐ、日が昇る。ロキ達は直ぐ側に来ている。人族は…まだ、来ていない」
「来るよ。きっと」
ジンはそう言って笑う。
「つっ…。『フィールド転開』」
二人を中心に光の魔方陣が現れ、切り株を陣内に入れ、大きく広がる。
「『木霊』『水霊』『風霊』開錠!」
『御神木』の二人の側に新たな三つの魔方陣が出現する。
遠くに馬車の車輪の音が聞こえてきた。
「『接続』」
ジンの中にあった『癒しの枝』と『御神木』から伸びてきた枝が絡まり繋がってゆく。
「痛く、ない?」
「あぁ、大丈夫だ」
「『水源直下』」
地下へと水の光が伸びていき地下水を探る。
辺りが明るくなり、朝日が昇り出す。
「泣いちゃダメだろ」
そう言って、ジンがリーンに手を伸ばし涙を拭う。
「『風の頂』」
止まっていた風がぐるぐると、二人を中心に周り出す。
「リーン」
分かっていたはずなのに、涙が止まらない…。
これで、ジンとお別れなのだ…。
「核を中心に…魔力の流れを更新せよ…『樹木再生』」
『御神木』だった木が光り、木から伸びてきた枝がジンを呑み込んでいく。
不意に、風霊がジンに纏わりつく。
ジンの事を教えに来てくれた風霊…。
…微笑んでこっちを見てる。
…一緒に眠ってくれるのか…。
「リーン。愛してるよ。ここから見守っているから…」
「ジン!」
みるみるジンは呑み込まれ、姿が消えてしまう。
再生の元となる核は出来た…。
これが、第一段階。
泣いてばかりもいられない。
リーンは涙を拭い、ジンが呑み込まれた木に触れる。
「大地と空と水を調和せよ…『魔力再生』」
触れた手から魔力が吸い取られていく。
このまま、魔力を注いで新しい地脈回路を更新していかなくては、いけない…。
「さすがにデカイ魔方陣だな」
「ロキ」
獣人の姿で仲間を連れて近付いてくる。
「こいつに魔力を注げば、いいのか?」
「うん。注ぐと言うより吸い取られるよ…」
ロキはリーンの顔を引き寄せ、流れ出る涙とその後を舐めとる。
「どれだけ、時間がかかる?」
「わからない。まずは地下の土壌と地下水の回復からだから…」
ロキはまだ、流れてくる涙を舐めとり、リーンが動けないことを良いことに、首筋まで舌を這わし甘噛みしてくる。
「つっ…」
「だったら交代で魔力を注いだ方がいいな」
「…よろしく」
ロキはリーンから離れると仲間に指示し、魔力注入をし始める。
そこへスバルが、やって来た。
「リーン。遅くなってすまん」
そう言って馬車の側にいた、村では見なかった若い者達が立ち尽くしていた。
「すげ~。同時に三個も魔方陣…」
「バカ、四個だって。『フィールド』転開してるだろ」
ザワザワと、こちらの様子を伺っている。
「街に行ってた若い衆うを帰省させて、連れてきた。どうすればいい」
「この木に魔力を注いで下さい。底なしなんで、倒れる前に手を離すようにして下さい」
若者達は顔を見合わ、おずおずと聞いてくる。
「…この『フィールド』は、…君が?」
「そうです。一人づつ交代でお願いします」
恐る恐る若者が一人近付き、そっと手を触れさせ慌てて手を引っ込める。
「なっ何なんだこれ!吸い取られる…」
「怖かったら早めに手を離して、交代してもらってかまわないです。木の再生の流れを停めるわけには、いけませんから…」
「あっ、ああ。分かった」
そう言って若者は再び木に手を触れさせた。
横にいたスバルが頭を掻きながら、
「俺にも魔力が有れば手伝うけど…」
「魔力を使って倒れそうな方の介抱をお願いします。そちらは得意でしょ」
そう言って目を赤く腫らしたリーンは笑った。
「…ジンは…」
「ここに居ます、…ここから見守ってるって…」
リーンは手を触れさせたまま木を見上げる。
姿、形は変わるけど、ジンはここに生きている。
「気になったんだが、ちなみに彼等は…」
木の反対側にいるロキを視線で指す。
「狼の里の、獣人のリーダーのロキです。この間、迎えに来た…」
「あっ。なるほど…。よろしく」
ロキはジロリとスバルを睨み付け、スバルは慌ててリーンの側を離れた。
そこから人族、獣人族の魔力の注入が始まった。
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