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独占欲

変調

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 ユーリにつがいになりたいと言われて、キリトは答えを出せないまま、日々が過ぎ去っていた。
 ユーリは相変わらず子供達と遊び、魔法を教え、楽しそうにココへ通ってきている。
 クロも時々、チロルさんに連れられて、旧館の二階に張り付けた魔方陣を使って遊びに来ている。
 イヤイヤして、グズるクロにユーリが一生懸命、言い聞かせたおかげだ。
 『もう一つのクロのお家がチロルさんの所だよ』と言って、クロを何とか説得し、チロルさんの元に帰るのに駄々をこねないようになった。
 少しはクロも成長したのだろう。
 …けれど俺は変わらない…。
 キリトは苦笑いしながら、旧館の窓から広場で楽しそうに遊ぶ子供達とユーリを見ていた。


 ある日、キリトは身体のだるさに寝坊しそうになった。
 めったに無いことだ。
 体内時計がしっかりとしているキリトは、休みの日でも同じ時間に起きて、旧館の窓から元気に学校に向かう子供達を見送っている。
 通常の生活に戻ったのに、起きれない事など今まで一度もなかった。
 起きて来ないキリトにラビが呼びに来てくれたので、子供達の朝食の準備は何とか間に合ったのだが…。
 久しぶりの変調だ。
 クロを預かってから、侵入者対策や捕縛作戦などをして、追われる日々を過ごしていたから、全てが終わり、ホッとして体調を崩してしまったのだろう。
 そう思っていたら、学校組を送り出した後、ラビが難しい顔をして言ってきた。
「…キリ兄、薬飲んでる?」
 ラビにそう言われて思い出す。
 …まさかと思ったが、この怠さは発情期の前兆だ。
 しばらく忙しくて発情期が来ていなかったので、忘れていた…。
 気が抜けた証拠だ。
「薬…飲んでくる…」
 キリトは、そう言って旧館の自分の部屋へと戻った。
 発情期を押さえる抑制剤があれば、身体の怠さは二、三日有るが、普通に生活することはできる。
 子供達の世話をすることになって、支障がないように抑制剤を常備するようになっていた。
 カザンナ王国にいたときは、グオルクのヒイロさんから抑制剤をもらったり、屋敷の外で、獣人の相手をしてくれる一夜の者の所に行って、済ませてきた。
 が、ココに来て、発情期の兆候が現れると思わなかった。
 薬を飲んで、しばらく旧館にこもって、事務的な仕事を中心にやり過ごそう…。
 キリトはそう思っていたが、時間がたっても発情期の抑制剤は、全く効かなかった…。

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