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3章勇者、本格始動。
21話そう簡単に旅立たせてくれない。
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俺はあの後、本当に荷物をまとめ、旅立とうとしていたのだが・・・。
「おい!!そこのお前!!」
「はい?」
そこにいたのは息を切らしてこちらに走ってくる色素の薄い灰色の髪の女。
どこかで見たような・・・。
「私だ。覚えていないか?皮剥ぎ騒動の後に王城で合っているのだが・・・」
思い出した!!こいつS級冒険者の『断絶姫』って呼ばれてた女だ!!
俺は一目散に背を向け走り出そうとするが・・・。
「待ってくれ!!」
「キャッ!?」
その両肩に手を乗せられ、向き直させられる。
体の位置が180度変えられたことでよろめくのをしっかりと支えてくれた。
ふ~、危ない危ない。
危うく女の子みたいな悲鳴を上げるところだった・・・。
え?もう上げてたって?
HAHAHAHA、冗談よせやい。
「負け犬のアンダーだなっ!?」
近い近い近い近い、怖い怖い怖い怖い。
何でこんな鼻息荒いのこの人。
「そ、そうですけど・・・?」
「やっぱりか」
女は顔を赤くして俺の手を握ると、口を開いた。
「わ、私と・・・」
「私と?」
「け、けっ・・・」
「け?」
この流れはもしや・・・。
結婚か!?
「決闘してくれないか!?」
「はい?」
「今はいと言ったな!?では場所だが・・・」
「いやいやいやいや」
そのはいは了承じゃなくて聞き直しを求めるほうだっての!!
「今円を描く。その内側でやろう」
「ちょ」
ちょっと待て、そう言い終わる前に抜き放たれた彼女の剣は地面に振り下ろされ、そこから謎の光が走り、地面に綺麗な円を描いていた。
「・・・は?」
まるで理解が追い付かない。
今のはスキルか?
「さぁ、やろうか!!」
凄いキラキラした目でこっちを見て来る。
気付けば周りにもオーディエンスが集まってきている。
「どうした?入ってこないのか?」
「はぁ・・・」
俺は泣く泣く入場した。
「では、剣を構えろ」
「降参します」
「それは許さん、さぁ、早く!!」
「ふえぇ・・・」
俺は大会の優勝賞品の剣を構え、息を呑む。
いやでもまぁS級冒険者とは言えね?
皮剥ぎに勝てなかったみたいだし、実力的にはそう違いは・・・。
「え?」
体の横を何かが通り抜けていく感覚。
地面を見れば亀裂が走っていた。
何が何だかわからない。
「ふむ、もう始めてよいのだろ?」
「ふぇ?」
次の瞬間、目の前には肉薄した女が見えた。
その斜め上にはきらりと光る何か。
剣だ。
「やっ・・・べえええ!!」
その閃光が直撃する間際、何とか自分の剣を滑り込ませる。
手首が折れんばかりの重い衝撃。
食いしばった奥歯が嫌な音を立てて砕ける。
血の味が口の中を占拠していく。
「ほぅ、やはり中々やるな!!」
「がっ!!ふぅ・・・っくはぁ!!」
反射的に止めていた息を思いっきり吸う。
おそらく今は俺のスキル『逆境』と『孤独』も発動しているはずなのだが・・・。
「くっ」
「ふむ、何をするんだ?」
魔法の準備を整える俺に向かって興味津々な顔で訪ねてくる。
あれが余裕と言う奴か。
「これで・・・どうだ!!」
「む?」
俺はこの円の中の地面の水分を一気に吸い上げ、巨大な水の塊を作り出した。
「行けっ!!」
それを勢いよく女剣士に叩きつける。
「せぇい!!」
しかし、それもたった一閃で砕け散る。
だが、それも予想済み。
「『アイシクルニードル』!!『ミニマム・ハリケーン』!!」
双方ともに初級魔法だが、飛び散った水を即座に氷の棘に変え、それを人一人分の竜巻で巻き上げ、その中心に奴を閉じ込めた。
地面から水分を抜き取った影響で、砂も同時に巻き上げられている。
名付けて『氷砂の竜巻』と、言った所か。
「やったか!?」
「・・・っふ、ふはははははははははは!!面白い!!面白いぞ!!」
「ひぇっ・・・」
笑い声が聞こえた時点で俺は防御姿勢を取る。
アースシールドを出来るだけ分厚く、高く配置する。
完成した直後に壁に亀裂が走った。
「はぁ!?」
「ふふ、どんなに分厚い壁でもな、このように細かく削り取ればこれこの通り」
おそらく氷砂の竜巻も一瞬で吹き飛ばされたのだろう。
ガガガガガガガガガと言うゲームでしか聞かないような音がし、その直後にズモっと壁の亀裂から女剣士が顔だけを出して来た。
「見つけたぞ!!」
「ひぃ!?」
何で顔だけなんだよ!!
怖ぇじゃねぇか!!
すぐさま飛び退く。
直前まで整った顔が飛び出ていた壁の穴からは剣が飛び出ており、まるでバターを切るように壁を薙ぎ払った。
「くそ!!」
「お?またか?」
俺は再度、壁に残った水分を抜き出す。
「せぇい!!」
今度はその水を一本の槍として凍らせ、発射した。
まぁ、難無く真っ二つにされるのだが。
問題はそこでは無い。
「『ウィンド・カーテン』!!」
「お?」
乾燥してただの砂と化した元壁を広範囲の風で押し流す。
これは大会で勇者パーティーにやった戦法の強化版だ。
完全に剣を振り切った状態ならガードもできまい。
「ふむ、成程な」
予想道理完璧に顔に直撃したらしい。
しかし。
「剣士と言うのはな」
「はい?」
「たとえ目が封じられても戦わねばならん時があるのだ」
「--ちょ!?」
目を閉じたまま連続で切り付けてくる。
重さは最初の時ほどではないが、確実に両手で受けなければ、押し切られる。
驚くべきは彼女は片手しか使っていないということだ。
「私も少しは本気を見せようか」
「も、もうやめ」
「『心気斬』!!」
「う、おおおおおお!?」
受け止めた剣が一気に重くなる。
「身体・・・兵装ぉおおおおお!!」
もうなりふり構ってはいられない。
秘策である身体兵装を使い、両手を変形させる。
ただでさえ重いのに、痛みで両手が悲鳴を上げる。
変形が終わるころにはティアも目を開けていた。
「ほぅ・・・それが皮剥ぎを討ったお前の秘策か?」
「あぁ!!そうだよくそっ!!お前なら普通に皮剥ぎぐらい倒せたんじゃねぇのかよ!!」
「まぁ、あの時は丸腰だったからな」
「は?」
「丁度武器を鍛冶屋に見て貰ている最中でな。この剣があれば討伐も容易かったかな」
「じゃあ何で戦ったんだ・・・?」
「ん?もちろん手刀だが?」
「こいつ人間じゃねえ!!」
「皮を何枚か弾き飛ばす程度には戦えたが、逃げられてしまってな・・・ふふ」
見るものが見れば女神のほほえみなのだろうが、俺には悪魔にしか見えなかった。
「獣血牙!!」
「む!?」
苦し紛れにはなった一撃を叩き落しながらティアは数歩下がった。
「速度的には申し分ないな。攻撃を食らったのはいつ振りか」
ティアの胴鎧には微かに獣血牙が掠った跡があった。
「これでお前の実力は分かった。ならば後は・・・」
「?」
少し考えたようなそぶりを見せた後、ティアは細剣を構え、息を整えてこう言い放った。
「私の全力を受け止めて見せろ」
「はぁ!?」
おいおいおいおい、あの気を溜めてる感じ・・・やばくないか?
オーディエンスもざわついている。
明らかにこの円の外にも被害が出る。
「はぁ!!」
「おいおいおいおい!!嘘だろ!!」
構わず放ってきやがった!!
俺は一瞬避けようかとも思ったが、俺の丁度後ろには小さな女の子。
恐怖で動けなくなっているのか、クソ!!
「い、ぎいいいいいいい!!」
放たれたのは気の塊。
それが刃となって空気さえも切り裂きこちらに近づいてくる。
剣で受け止める物の、あまりに強い勢いを殺しきれない。
もう噛み砕いたのは奥歯だけでは無い。
ここに歯医者を建てよう!!
しかし、今ここをどくわけにはいかない。
「もっと、もっと力を!!おおおおおおおおおおおお!!」
俺は身体兵装にありったけの思いを込める。
すると、俺の体はそれの呼応したように変化を始める。
先ず、胸に大きな穴が四つほど空いた。
そこから空気をこれでもかと吸い込んでいる。
そして、肘にも穴が開いた。
こちらから吸い込んだ空気を圧縮して放出しているようだ。
これなら・・・。
「んぐぅ!?」
息が・・・出来ない!!
これはもしかしてあれか!!吸い込んだ空気を全部肘に回してるせいで、肝心な呼吸に使えていないのか!?
ああ!!ダメだ!!今一瞬でも呼吸に回したら耐えきれなくなる!!
「おお!!耐える耐える!!これを耐える奴などそうそういないぞ!!」
「--!!--!!」
声が出ないので何とも言えないが、遊ばれているようで腹が立つ。
仮面とローブで隠れてはいるが、胸から上あたりに血管が浮き始める。
頭の奥と舌が熱い。
自然と喉と口が開き、涎が垂れる。
一秒が何分にも何時間にも感じる。
あぁ、早く終わってくれ!!
「仮面越しとは言え、涎を垂らすその姿はまさに犬の様であるな」
うるせぇ!!
目の前が白くなり始めた。
ここで、今まで理性で押さえつけていた本能が暴れ始める。
「っが!!はぁ!!・・・しまっ!?」
ついに呼吸をし、攻撃の威力に耐えきれずに尻もちをついてしまった。
俺を吹き飛ばしたそれは勢いを止めず、少女のもとへーー。
届かなかった。
「へぁ?」
「ふふ、この私が周りに迷惑をかけるわけがなかろう」
いつの間にか俺の後ろに回っていたティアが自分の斬撃を切り裂いたのであった。
「だが、お前の実力は分かった。皮剥ぎを倒したのも嘘ではなかったようだな。楽しかったぞ。・・・またやろう」
それだけ言うと女は髪をたなびかせ、去ってゆく。
その後ろ姿に目を奪われながら俺は・・・俺は・・・。
「俺は・・・迷惑だったんですけど・・・!!」
そう呟きながら尻に着いた砂を払うのだった。
「おい!!そこのお前!!」
「はい?」
そこにいたのは息を切らしてこちらに走ってくる色素の薄い灰色の髪の女。
どこかで見たような・・・。
「私だ。覚えていないか?皮剥ぎ騒動の後に王城で合っているのだが・・・」
思い出した!!こいつS級冒険者の『断絶姫』って呼ばれてた女だ!!
俺は一目散に背を向け走り出そうとするが・・・。
「待ってくれ!!」
「キャッ!?」
その両肩に手を乗せられ、向き直させられる。
体の位置が180度変えられたことでよろめくのをしっかりと支えてくれた。
ふ~、危ない危ない。
危うく女の子みたいな悲鳴を上げるところだった・・・。
え?もう上げてたって?
HAHAHAHA、冗談よせやい。
「負け犬のアンダーだなっ!?」
近い近い近い近い、怖い怖い怖い怖い。
何でこんな鼻息荒いのこの人。
「そ、そうですけど・・・?」
「やっぱりか」
女は顔を赤くして俺の手を握ると、口を開いた。
「わ、私と・・・」
「私と?」
「け、けっ・・・」
「け?」
この流れはもしや・・・。
結婚か!?
「決闘してくれないか!?」
「はい?」
「今はいと言ったな!?では場所だが・・・」
「いやいやいやいや」
そのはいは了承じゃなくて聞き直しを求めるほうだっての!!
「今円を描く。その内側でやろう」
「ちょ」
ちょっと待て、そう言い終わる前に抜き放たれた彼女の剣は地面に振り下ろされ、そこから謎の光が走り、地面に綺麗な円を描いていた。
「・・・は?」
まるで理解が追い付かない。
今のはスキルか?
「さぁ、やろうか!!」
凄いキラキラした目でこっちを見て来る。
気付けば周りにもオーディエンスが集まってきている。
「どうした?入ってこないのか?」
「はぁ・・・」
俺は泣く泣く入場した。
「では、剣を構えろ」
「降参します」
「それは許さん、さぁ、早く!!」
「ふえぇ・・・」
俺は大会の優勝賞品の剣を構え、息を呑む。
いやでもまぁS級冒険者とは言えね?
皮剥ぎに勝てなかったみたいだし、実力的にはそう違いは・・・。
「え?」
体の横を何かが通り抜けていく感覚。
地面を見れば亀裂が走っていた。
何が何だかわからない。
「ふむ、もう始めてよいのだろ?」
「ふぇ?」
次の瞬間、目の前には肉薄した女が見えた。
その斜め上にはきらりと光る何か。
剣だ。
「やっ・・・べえええ!!」
その閃光が直撃する間際、何とか自分の剣を滑り込ませる。
手首が折れんばかりの重い衝撃。
食いしばった奥歯が嫌な音を立てて砕ける。
血の味が口の中を占拠していく。
「ほぅ、やはり中々やるな!!」
「がっ!!ふぅ・・・っくはぁ!!」
反射的に止めていた息を思いっきり吸う。
おそらく今は俺のスキル『逆境』と『孤独』も発動しているはずなのだが・・・。
「くっ」
「ふむ、何をするんだ?」
魔法の準備を整える俺に向かって興味津々な顔で訪ねてくる。
あれが余裕と言う奴か。
「これで・・・どうだ!!」
「む?」
俺はこの円の中の地面の水分を一気に吸い上げ、巨大な水の塊を作り出した。
「行けっ!!」
それを勢いよく女剣士に叩きつける。
「せぇい!!」
しかし、それもたった一閃で砕け散る。
だが、それも予想済み。
「『アイシクルニードル』!!『ミニマム・ハリケーン』!!」
双方ともに初級魔法だが、飛び散った水を即座に氷の棘に変え、それを人一人分の竜巻で巻き上げ、その中心に奴を閉じ込めた。
地面から水分を抜き取った影響で、砂も同時に巻き上げられている。
名付けて『氷砂の竜巻』と、言った所か。
「やったか!?」
「・・・っふ、ふはははははははははは!!面白い!!面白いぞ!!」
「ひぇっ・・・」
笑い声が聞こえた時点で俺は防御姿勢を取る。
アースシールドを出来るだけ分厚く、高く配置する。
完成した直後に壁に亀裂が走った。
「はぁ!?」
「ふふ、どんなに分厚い壁でもな、このように細かく削り取ればこれこの通り」
おそらく氷砂の竜巻も一瞬で吹き飛ばされたのだろう。
ガガガガガガガガガと言うゲームでしか聞かないような音がし、その直後にズモっと壁の亀裂から女剣士が顔だけを出して来た。
「見つけたぞ!!」
「ひぃ!?」
何で顔だけなんだよ!!
怖ぇじゃねぇか!!
すぐさま飛び退く。
直前まで整った顔が飛び出ていた壁の穴からは剣が飛び出ており、まるでバターを切るように壁を薙ぎ払った。
「くそ!!」
「お?またか?」
俺は再度、壁に残った水分を抜き出す。
「せぇい!!」
今度はその水を一本の槍として凍らせ、発射した。
まぁ、難無く真っ二つにされるのだが。
問題はそこでは無い。
「『ウィンド・カーテン』!!」
「お?」
乾燥してただの砂と化した元壁を広範囲の風で押し流す。
これは大会で勇者パーティーにやった戦法の強化版だ。
完全に剣を振り切った状態ならガードもできまい。
「ふむ、成程な」
予想道理完璧に顔に直撃したらしい。
しかし。
「剣士と言うのはな」
「はい?」
「たとえ目が封じられても戦わねばならん時があるのだ」
「--ちょ!?」
目を閉じたまま連続で切り付けてくる。
重さは最初の時ほどではないが、確実に両手で受けなければ、押し切られる。
驚くべきは彼女は片手しか使っていないということだ。
「私も少しは本気を見せようか」
「も、もうやめ」
「『心気斬』!!」
「う、おおおおおお!?」
受け止めた剣が一気に重くなる。
「身体・・・兵装ぉおおおおお!!」
もうなりふり構ってはいられない。
秘策である身体兵装を使い、両手を変形させる。
ただでさえ重いのに、痛みで両手が悲鳴を上げる。
変形が終わるころにはティアも目を開けていた。
「ほぅ・・・それが皮剥ぎを討ったお前の秘策か?」
「あぁ!!そうだよくそっ!!お前なら普通に皮剥ぎぐらい倒せたんじゃねぇのかよ!!」
「まぁ、あの時は丸腰だったからな」
「は?」
「丁度武器を鍛冶屋に見て貰ている最中でな。この剣があれば討伐も容易かったかな」
「じゃあ何で戦ったんだ・・・?」
「ん?もちろん手刀だが?」
「こいつ人間じゃねえ!!」
「皮を何枚か弾き飛ばす程度には戦えたが、逃げられてしまってな・・・ふふ」
見るものが見れば女神のほほえみなのだろうが、俺には悪魔にしか見えなかった。
「獣血牙!!」
「む!?」
苦し紛れにはなった一撃を叩き落しながらティアは数歩下がった。
「速度的には申し分ないな。攻撃を食らったのはいつ振りか」
ティアの胴鎧には微かに獣血牙が掠った跡があった。
「これでお前の実力は分かった。ならば後は・・・」
「?」
少し考えたようなそぶりを見せた後、ティアは細剣を構え、息を整えてこう言い放った。
「私の全力を受け止めて見せろ」
「はぁ!?」
おいおいおいおい、あの気を溜めてる感じ・・・やばくないか?
オーディエンスもざわついている。
明らかにこの円の外にも被害が出る。
「はぁ!!」
「おいおいおいおい!!嘘だろ!!」
構わず放ってきやがった!!
俺は一瞬避けようかとも思ったが、俺の丁度後ろには小さな女の子。
恐怖で動けなくなっているのか、クソ!!
「い、ぎいいいいいいい!!」
放たれたのは気の塊。
それが刃となって空気さえも切り裂きこちらに近づいてくる。
剣で受け止める物の、あまりに強い勢いを殺しきれない。
もう噛み砕いたのは奥歯だけでは無い。
ここに歯医者を建てよう!!
しかし、今ここをどくわけにはいかない。
「もっと、もっと力を!!おおおおおおおおおおおお!!」
俺は身体兵装にありったけの思いを込める。
すると、俺の体はそれの呼応したように変化を始める。
先ず、胸に大きな穴が四つほど空いた。
そこから空気をこれでもかと吸い込んでいる。
そして、肘にも穴が開いた。
こちらから吸い込んだ空気を圧縮して放出しているようだ。
これなら・・・。
「んぐぅ!?」
息が・・・出来ない!!
これはもしかしてあれか!!吸い込んだ空気を全部肘に回してるせいで、肝心な呼吸に使えていないのか!?
ああ!!ダメだ!!今一瞬でも呼吸に回したら耐えきれなくなる!!
「おお!!耐える耐える!!これを耐える奴などそうそういないぞ!!」
「--!!--!!」
声が出ないので何とも言えないが、遊ばれているようで腹が立つ。
仮面とローブで隠れてはいるが、胸から上あたりに血管が浮き始める。
頭の奥と舌が熱い。
自然と喉と口が開き、涎が垂れる。
一秒が何分にも何時間にも感じる。
あぁ、早く終わってくれ!!
「仮面越しとは言え、涎を垂らすその姿はまさに犬の様であるな」
うるせぇ!!
目の前が白くなり始めた。
ここで、今まで理性で押さえつけていた本能が暴れ始める。
「っが!!はぁ!!・・・しまっ!?」
ついに呼吸をし、攻撃の威力に耐えきれずに尻もちをついてしまった。
俺を吹き飛ばしたそれは勢いを止めず、少女のもとへーー。
届かなかった。
「へぁ?」
「ふふ、この私が周りに迷惑をかけるわけがなかろう」
いつの間にか俺の後ろに回っていたティアが自分の斬撃を切り裂いたのであった。
「だが、お前の実力は分かった。皮剥ぎを倒したのも嘘ではなかったようだな。楽しかったぞ。・・・またやろう」
それだけ言うと女は髪をたなびかせ、去ってゆく。
その後ろ姿に目を奪われながら俺は・・・俺は・・・。
「俺は・・・迷惑だったんですけど・・・!!」
そう呟きながら尻に着いた砂を払うのだった。
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