11 / 34
2章覚醒と事件。
11日話別れと出会い。
しおりを挟む
俺はその後何でも屋本部に帰り、床について居た。
ーーーーーーーー夢を見ていた。
『なぁ、良かったじゃないか』
ーーーー誰だお前は?
馴れ馴れしいやつだ。
『能力を手に入れたんだろう?』
ーーーーまぁ、そうだが。お前には関係無いだろ?
『おいおい、冷たいこと言うなよ。俺は今までお前のことをずっと見ていたんだぜ?』
ーーーー俺はお前のことなんて知らない。
『だろうな。俺の名前は・・・・だ』
ーーーーえ?何て?
『聞こえないのか?なら、まぁ、そういう事なんだろう』
ーーーーどういうことだってばよ・・・・。
『まぁ、適当に、好きに呼んでくれよ』
ーーーーじゃあ、姿がわからないからスキュラで
確か名前の元は何かの神話の女と魚と犬が混ざったような生き物だったか?
『お、かっこいいじゃん。いいセンスしてんねぇ!!』
ーーーーって言うか此処は何処なんだ?
『ん?まだ分かってなかったのか?此処はお前の夢のなかだ』
ーーーー夢?
『そうだ。お前あの後嬉しさのあまり酒飲みまくって何でも屋の本部に帰ってきて泥のように眠っちまったんだぜ?』
ーーーーなる程な。道理であたり一面暗闇に包まれているわけだ
『そうだ。物分りが良いじゃねぇか。そういう奴は嫌いじゃねぇぜ』
ーーーーはいはい、ありがとさん。で?なんの用だよ?
『いや、特にこれという用が有って来た訳じゃねぇんだが、今日は、その、何だ、お祝い?に来たんだよ』
ーーーーお祝い?
『お前、ようやくスキルを発動したじゃねぇか。武器の使用方法も分かったしな』
ーーーーあぁ、ステータスプレートってそいつの持っている武器の取扱説明書みたいに成るんだな。知らなかったよ。
『まぁそんな事はどうでも良いんだ。もっと効率的に話をしよう』
ーーーーうむ
『ともあれこれでお前は一人でも戦える力を手に入れたわけだ』
ーーーーまぁそうなるな
『もうお前を馬鹿にする奴なんて居ないんだ』
ーーーーそうだと良いな
『もう誰かに裏切られることもねぇんだぜ?』
ーーーーそうかな?
『そうだ。もうあんな裏切り者たちに傷つけられる事も無い。お前は・・・・そうだな、取り敢えず俺の事を信じてくれていればいい』
ーーーー出会ったばかりのやつをか?
『出会ったばかりではねぇんだがな・・・まぁ、その内分かるだろう』
ーーーーそうなのか
『あぁ、そうだ。お前はこれからこの力を使って復讐に生きることだって出来るんだぜ?出来れば俺はあの裏切り者たちに復讐してやりてぇがな』
こいつは俺の事を見ていたと言った。
俺が信じていた仲間たちに裏切られる所も見ていたのだろう。
こいつは自分の事のように怒ってくれている。
俺にとってはそれだけでも十分救われている気がした。
ーーーーいや、今はいいよ、それに、いくら裏切り者だって、この世界で共に生きたことに変わりはないんだ。でも、後悔はさせてやりてぇかな
『そうか、俺はいくらでも手を貸すぜ?どうするんだ?』
ーーーーそうだな、先ずは・・・俺が彼奴等より強くなって、彼奴等より先に魔王共を倒しちまうってのはどうだ?
『ハハッ!!そいつぁいいや!!じゃあ、先ずは強くなることだな!!彼奴等にも言っておくよ!!じゃあな!!』
ーーーーは?彼奴等って誰だ?
その瞬間にその場は崩れ去る。
足元が無くなり浮遊感を味わう。
ーーーーうおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
俺は意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うおおおおおおおおおお!!」
「うおっ!?」
俺は叫びながら飛び起きた。
俺のすぐ横には何故かロネースルがいた。
「何だお前、起きたのか?」
「あ、ローネースル・・・朝か?」
「おう、お前が起きてこねぇから起こしに来てやったんだよ」
「すまねぇな」
「気にすんな、それより、話があるんだろ?」
「あぁ、そうだな、皆んな、一階に、集まってくれ」
「おう、集めとく」
俺は素早く身支度を整えると、一階に向かった。
すると、そこにはもう既にいつものメンバーが集まっていた。
「おはようございます!!アンダー!!」
「おう、おはよう」
リフィルは何時も元気よく挨拶をしてくれるので挨拶をされているこっちも元気になるようだ。
ウィンクして返しておく。
あれ?顔を赤くして俯いてしまった。
風邪でも引いているのかな?
心配だな。
後で熱でも図っておくか。
「で?用って何でさぁ?」
「あぁ、そのことだが、俺はこのパーティーを抜けようと思う」
「「「「へ?」」」」
「ど、どういうことっすかアンダー!?」
「抜ける・・・脱退?」
「急ですねぇ」
「遂にこの時が来たのか」
「ロネースルはわかってるみたいだな」
「え?え?どういうことっすか!?」
リフィルはだいぶ混乱しているみたいだ。
ズリーも落ち着いて見せているようだが全身がプルプルと震え、フルプレートがカタカタ音を発てている。
ヤスは普通に驚き、ロネースルは察している様だ。
「はい、『鑑定』を受けました」
その一言で大体皆んな察してくれたようだ。
俺は世界の意志から授かったスキルを皆んなに見せて、一つ一つ説明していった。
「孤独・・・このスキルを活かすために一人になると?」
「あぁ、そうなるな」
「え?ってことはお別れってことっすか?」
「そうなる」
「そんなぁ・・・」
「で、でもこれでお別れってことじゃないんだ。暫く会えなくなるけど、会おうと思えば何時でも会えるし、もしかしたら依頼で一緒になるかも・・・!!」
何で俺はこんなに焦ってるんだろう?
答えは簡単。
リフィルが今にも泣きそうだからである。
どうしよう?
「で、でもぉ!!」
「いい加減にしな!!」
「!?」
「こいつとはそもそも『鑑定』をしてステータスプレートを貰うまで面倒を見るって約束だっただろ!?アタシ達はその手助けをするだけって約束だっただろ!?そこから先はこいつが決めることだ!!アタシ達が口を出していいことじゃねぇ!!」
「・・・有難う、ロネースル」
「おうよ」
「俺は、このパーティーを抜けて、この国を出て、旅をして、強くなって、また此処に帰ってくるよ。とても虫のいい話かもしれない。けど、俺はお前らのことを少なくとも俺を裏切った彼奴等に比べて仲間だと思ってるし、俺もお前らを裏切りたくない。だからこそ俺は必ずまた此処に帰ってくる。約束しよう、俺は必ずまた此処に帰ってきて、今度はお前らを助けてみせる。だから、もう少しだけ待っていてくれないか?俺は今からでも旅立とうと思う。俺は孤児だったが、それでも暖かく迎え入れてくれたお前らを本当の仲間だと思っているよ」
「気にすんなよ、アタシだって元ガキンチョの奴隷だったからな。短い期間だったが、また何時でも来いよ」
「アンダー・・・・」
「・・・分かった・・・」
「そうでやすね!!それじゃあ、最初はどの国に行くんでさぁ!?」
「そうだなぁ、アタシ的には西の・・・」
「あ、いや、最初は草原だよ」
「「「「草原?」」」」
「そう、草原」
「「「「は?」」」」
こいつら息ぴったりだな。
「そう、草原だ。先ずは強くならなくちゃな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は今ロードネス王国近郊の草原に来ている。
近くには森もある。
今日から俺は此処で魔物を狩りながらサバイバル生活を送る事に成る。
それに、此処には魔犬が出る。
魔犬は殺す。
慈悲はない。
何だかんだで俺と因縁の在る魔物だからな、絶対に許さん。
「さて、と、先ずは拠点づくりだな」
俺は近くにあった石を割り、石器を作ると、まずは拠点づくりに必要な木を切り倒していった。
スキル『効率化』が発動します。
動作が効率化されました。
お?
スキルが発動されたようだ。
試しにその辺の木を切ってみよう。
これでいいか。
「えいっ!!」
ズドオオオオオオン!!
木が切れた。
一撃で。
え?
マジで?
全然力入れてないんですけど?
「よしっ!!この調子で行こう!!」
こうして俺のサバイバル生活が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー-
サバイバル生活1週間目。
俺は今自分の建てた城で肉を食っている。
『効率化』によって効率化された動きで木を切り倒し、家を立て、魔犬を狩って暮らしている。
俺は矢印と初歩的な魔法で魔犬を楽に狩れるまでの実力に達していた。
小さい矢印を体中にくっつけて操り、ホバー移動のように高速移動をすることが出来るように成った。
矢印を直接ぶつけたりして戦ったりした。
しかし、もっと効率的に自分を鍛える方法を見つけてしまったのだ。
「お?魔犬発見!!行くぞ!!1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!!」
それは・・・。
腕立て伏せだ。
自分が危ない状況で。
一人で。
効率化された動きで。
成長促進されたこの体で。
鍛えることで俺はもっとありえないスピードで強くなる。
もっとも、ピンチにしすぎて魔犬に齧られたら死ぬのだが。
「FUUUUUUUUUU!!」
俺はホバー移動で魔犬の攻撃を交わしながら腕立て伏せを続ける。
今日は腕立て伏せの日だ。
明日は腹筋かな。
魔犬は俺の動きについて来れずに攻撃を当てられない。
イライラしているな?
フハハハハハハハ!!
そんな単調な攻撃が俺に当たるわけねぇだろ!!
「このマヌケが!!」
俺は矢印を一つ創りだすと魔犬の眉間に向かって射出する。
「キャインッ!!」
途端に魔犬は負けを悟ったのか逃げ出す。
「逃がすわけねぇだろ!!」
俺はホバー移動で追いかける。
もちろん腕立て伏せは続けたままだ。
「ミニマム・ファイアボム!!」
俺が魔法を詠唱するとその魔法陣から小さな炎が射出され、魔犬の眉間にぶつかり爆発した。
眉間を集中狙いするのは単純に弱点なのと、ストレス解消のためである。
「よしっ!!今日のノルマ終わり!!」
俺は魔犬の肉を解体すると、そのまま家に帰った。
「火を付けてっと」
俺はこの程度では魔法は使わない。
火起こしならもうとっくに効率化されているので一瞬で付く。
「肉を焼いて~♪」
俺は捌いた魔犬の肉を焼き始める。
黒い煙がブスブスと上がる。
たれた肉汁が焼けて匂いを放つ。
すると・・・。
「ワオォォオ~ン!!」
「ん?遠吠え?魔犬か?」
匂いに誘われたのか魔犬の鳴き声が聞こえる。
それはだんだんと近づいてきて。
カリカリカリカリ
扉を引っ掻いている音がする。
こいつ、中々動きが早いな。
少し用心したほうが良さそうだ。
俺は静かに扉を開けた。
「ミニマム・ファイア・・・ん?」
そこにいたのは・・・
「子犬?」
もこもこした子犬だった。
黒い毛ともこもこの毛。
クリクリとした目と。
愛らしい顔立ち。
完全に愛玩犬だ。
「お前は魔犬か?」
「ワンッ!!」
しっぽを振って鳴いている。
いや、どっちだよ。
魔犬ってことでいいのか?
でも魔犬にありがちの嫌らしい笑みは浮かべていない。
「腹が減っているのか?」
「ワンッ!!」
しっぽを振って鳴いている。
これはYESと取っても良いのか?
「ほれ、魔犬の肉で良かったらやるよ」
「ワンッ!!」
こ、こいつ・・・食ってる・・・。
同族の肉を・・・?
こいつ本当に魔犬なのか?
魔犬じゃないんじゃないか?
「おい、お前本当に魔犬か?」
「ハフッ!!ハフッ!!」
食うのに夢中かよ・・・。
こいつ、もしかして魔犬の変異体じゃないか?
だとしたら相当珍しいな。
変異種なら何かの役に立つかもしれんな。
「おい、お前」
「ワンッ!!」
「此処で暮らす気はないか?」
「ワンッ!!」
OKらしい。
「じゃあお前は今日からシャイニングデストロイマジックスター1号だ!!」
「ワンッ!?」
嫌なのか。
そうだなぁ。
カツ丼食いたいなぁ。
カツ。
勝つ。
勝利。
ヴィクトリー。
「よしっ!!お前は今日からヴィクトリアだ!!」
「ワンッ!!」
これは有りなのか。
俺はその後暫くヴィクトリアと一緒にサバイバル生活をするのだった。
ーーーーーーーー夢を見ていた。
『なぁ、良かったじゃないか』
ーーーー誰だお前は?
馴れ馴れしいやつだ。
『能力を手に入れたんだろう?』
ーーーーまぁ、そうだが。お前には関係無いだろ?
『おいおい、冷たいこと言うなよ。俺は今までお前のことをずっと見ていたんだぜ?』
ーーーー俺はお前のことなんて知らない。
『だろうな。俺の名前は・・・・だ』
ーーーーえ?何て?
『聞こえないのか?なら、まぁ、そういう事なんだろう』
ーーーーどういうことだってばよ・・・・。
『まぁ、適当に、好きに呼んでくれよ』
ーーーーじゃあ、姿がわからないからスキュラで
確か名前の元は何かの神話の女と魚と犬が混ざったような生き物だったか?
『お、かっこいいじゃん。いいセンスしてんねぇ!!』
ーーーーって言うか此処は何処なんだ?
『ん?まだ分かってなかったのか?此処はお前の夢のなかだ』
ーーーー夢?
『そうだ。お前あの後嬉しさのあまり酒飲みまくって何でも屋の本部に帰ってきて泥のように眠っちまったんだぜ?』
ーーーーなる程な。道理であたり一面暗闇に包まれているわけだ
『そうだ。物分りが良いじゃねぇか。そういう奴は嫌いじゃねぇぜ』
ーーーーはいはい、ありがとさん。で?なんの用だよ?
『いや、特にこれという用が有って来た訳じゃねぇんだが、今日は、その、何だ、お祝い?に来たんだよ』
ーーーーお祝い?
『お前、ようやくスキルを発動したじゃねぇか。武器の使用方法も分かったしな』
ーーーーあぁ、ステータスプレートってそいつの持っている武器の取扱説明書みたいに成るんだな。知らなかったよ。
『まぁそんな事はどうでも良いんだ。もっと効率的に話をしよう』
ーーーーうむ
『ともあれこれでお前は一人でも戦える力を手に入れたわけだ』
ーーーーまぁそうなるな
『もうお前を馬鹿にする奴なんて居ないんだ』
ーーーーそうだと良いな
『もう誰かに裏切られることもねぇんだぜ?』
ーーーーそうかな?
『そうだ。もうあんな裏切り者たちに傷つけられる事も無い。お前は・・・・そうだな、取り敢えず俺の事を信じてくれていればいい』
ーーーー出会ったばかりのやつをか?
『出会ったばかりではねぇんだがな・・・まぁ、その内分かるだろう』
ーーーーそうなのか
『あぁ、そうだ。お前はこれからこの力を使って復讐に生きることだって出来るんだぜ?出来れば俺はあの裏切り者たちに復讐してやりてぇがな』
こいつは俺の事を見ていたと言った。
俺が信じていた仲間たちに裏切られる所も見ていたのだろう。
こいつは自分の事のように怒ってくれている。
俺にとってはそれだけでも十分救われている気がした。
ーーーーいや、今はいいよ、それに、いくら裏切り者だって、この世界で共に生きたことに変わりはないんだ。でも、後悔はさせてやりてぇかな
『そうか、俺はいくらでも手を貸すぜ?どうするんだ?』
ーーーーそうだな、先ずは・・・俺が彼奴等より強くなって、彼奴等より先に魔王共を倒しちまうってのはどうだ?
『ハハッ!!そいつぁいいや!!じゃあ、先ずは強くなることだな!!彼奴等にも言っておくよ!!じゃあな!!』
ーーーーは?彼奴等って誰だ?
その瞬間にその場は崩れ去る。
足元が無くなり浮遊感を味わう。
ーーーーうおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
俺は意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うおおおおおおおおおお!!」
「うおっ!?」
俺は叫びながら飛び起きた。
俺のすぐ横には何故かロネースルがいた。
「何だお前、起きたのか?」
「あ、ローネースル・・・朝か?」
「おう、お前が起きてこねぇから起こしに来てやったんだよ」
「すまねぇな」
「気にすんな、それより、話があるんだろ?」
「あぁ、そうだな、皆んな、一階に、集まってくれ」
「おう、集めとく」
俺は素早く身支度を整えると、一階に向かった。
すると、そこにはもう既にいつものメンバーが集まっていた。
「おはようございます!!アンダー!!」
「おう、おはよう」
リフィルは何時も元気よく挨拶をしてくれるので挨拶をされているこっちも元気になるようだ。
ウィンクして返しておく。
あれ?顔を赤くして俯いてしまった。
風邪でも引いているのかな?
心配だな。
後で熱でも図っておくか。
「で?用って何でさぁ?」
「あぁ、そのことだが、俺はこのパーティーを抜けようと思う」
「「「「へ?」」」」
「ど、どういうことっすかアンダー!?」
「抜ける・・・脱退?」
「急ですねぇ」
「遂にこの時が来たのか」
「ロネースルはわかってるみたいだな」
「え?え?どういうことっすか!?」
リフィルはだいぶ混乱しているみたいだ。
ズリーも落ち着いて見せているようだが全身がプルプルと震え、フルプレートがカタカタ音を発てている。
ヤスは普通に驚き、ロネースルは察している様だ。
「はい、『鑑定』を受けました」
その一言で大体皆んな察してくれたようだ。
俺は世界の意志から授かったスキルを皆んなに見せて、一つ一つ説明していった。
「孤独・・・このスキルを活かすために一人になると?」
「あぁ、そうなるな」
「え?ってことはお別れってことっすか?」
「そうなる」
「そんなぁ・・・」
「で、でもこれでお別れってことじゃないんだ。暫く会えなくなるけど、会おうと思えば何時でも会えるし、もしかしたら依頼で一緒になるかも・・・!!」
何で俺はこんなに焦ってるんだろう?
答えは簡単。
リフィルが今にも泣きそうだからである。
どうしよう?
「で、でもぉ!!」
「いい加減にしな!!」
「!?」
「こいつとはそもそも『鑑定』をしてステータスプレートを貰うまで面倒を見るって約束だっただろ!?アタシ達はその手助けをするだけって約束だっただろ!?そこから先はこいつが決めることだ!!アタシ達が口を出していいことじゃねぇ!!」
「・・・有難う、ロネースル」
「おうよ」
「俺は、このパーティーを抜けて、この国を出て、旅をして、強くなって、また此処に帰ってくるよ。とても虫のいい話かもしれない。けど、俺はお前らのことを少なくとも俺を裏切った彼奴等に比べて仲間だと思ってるし、俺もお前らを裏切りたくない。だからこそ俺は必ずまた此処に帰ってくる。約束しよう、俺は必ずまた此処に帰ってきて、今度はお前らを助けてみせる。だから、もう少しだけ待っていてくれないか?俺は今からでも旅立とうと思う。俺は孤児だったが、それでも暖かく迎え入れてくれたお前らを本当の仲間だと思っているよ」
「気にすんなよ、アタシだって元ガキンチョの奴隷だったからな。短い期間だったが、また何時でも来いよ」
「アンダー・・・・」
「・・・分かった・・・」
「そうでやすね!!それじゃあ、最初はどの国に行くんでさぁ!?」
「そうだなぁ、アタシ的には西の・・・」
「あ、いや、最初は草原だよ」
「「「「草原?」」」」
「そう、草原」
「「「「は?」」」」
こいつら息ぴったりだな。
「そう、草原だ。先ずは強くならなくちゃな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は今ロードネス王国近郊の草原に来ている。
近くには森もある。
今日から俺は此処で魔物を狩りながらサバイバル生活を送る事に成る。
それに、此処には魔犬が出る。
魔犬は殺す。
慈悲はない。
何だかんだで俺と因縁の在る魔物だからな、絶対に許さん。
「さて、と、先ずは拠点づくりだな」
俺は近くにあった石を割り、石器を作ると、まずは拠点づくりに必要な木を切り倒していった。
スキル『効率化』が発動します。
動作が効率化されました。
お?
スキルが発動されたようだ。
試しにその辺の木を切ってみよう。
これでいいか。
「えいっ!!」
ズドオオオオオオン!!
木が切れた。
一撃で。
え?
マジで?
全然力入れてないんですけど?
「よしっ!!この調子で行こう!!」
こうして俺のサバイバル生活が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー-
サバイバル生活1週間目。
俺は今自分の建てた城で肉を食っている。
『効率化』によって効率化された動きで木を切り倒し、家を立て、魔犬を狩って暮らしている。
俺は矢印と初歩的な魔法で魔犬を楽に狩れるまでの実力に達していた。
小さい矢印を体中にくっつけて操り、ホバー移動のように高速移動をすることが出来るように成った。
矢印を直接ぶつけたりして戦ったりした。
しかし、もっと効率的に自分を鍛える方法を見つけてしまったのだ。
「お?魔犬発見!!行くぞ!!1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!!」
それは・・・。
腕立て伏せだ。
自分が危ない状況で。
一人で。
効率化された動きで。
成長促進されたこの体で。
鍛えることで俺はもっとありえないスピードで強くなる。
もっとも、ピンチにしすぎて魔犬に齧られたら死ぬのだが。
「FUUUUUUUUUU!!」
俺はホバー移動で魔犬の攻撃を交わしながら腕立て伏せを続ける。
今日は腕立て伏せの日だ。
明日は腹筋かな。
魔犬は俺の動きについて来れずに攻撃を当てられない。
イライラしているな?
フハハハハハハハ!!
そんな単調な攻撃が俺に当たるわけねぇだろ!!
「このマヌケが!!」
俺は矢印を一つ創りだすと魔犬の眉間に向かって射出する。
「キャインッ!!」
途端に魔犬は負けを悟ったのか逃げ出す。
「逃がすわけねぇだろ!!」
俺はホバー移動で追いかける。
もちろん腕立て伏せは続けたままだ。
「ミニマム・ファイアボム!!」
俺が魔法を詠唱するとその魔法陣から小さな炎が射出され、魔犬の眉間にぶつかり爆発した。
眉間を集中狙いするのは単純に弱点なのと、ストレス解消のためである。
「よしっ!!今日のノルマ終わり!!」
俺は魔犬の肉を解体すると、そのまま家に帰った。
「火を付けてっと」
俺はこの程度では魔法は使わない。
火起こしならもうとっくに効率化されているので一瞬で付く。
「肉を焼いて~♪」
俺は捌いた魔犬の肉を焼き始める。
黒い煙がブスブスと上がる。
たれた肉汁が焼けて匂いを放つ。
すると・・・。
「ワオォォオ~ン!!」
「ん?遠吠え?魔犬か?」
匂いに誘われたのか魔犬の鳴き声が聞こえる。
それはだんだんと近づいてきて。
カリカリカリカリ
扉を引っ掻いている音がする。
こいつ、中々動きが早いな。
少し用心したほうが良さそうだ。
俺は静かに扉を開けた。
「ミニマム・ファイア・・・ん?」
そこにいたのは・・・
「子犬?」
もこもこした子犬だった。
黒い毛ともこもこの毛。
クリクリとした目と。
愛らしい顔立ち。
完全に愛玩犬だ。
「お前は魔犬か?」
「ワンッ!!」
しっぽを振って鳴いている。
いや、どっちだよ。
魔犬ってことでいいのか?
でも魔犬にありがちの嫌らしい笑みは浮かべていない。
「腹が減っているのか?」
「ワンッ!!」
しっぽを振って鳴いている。
これはYESと取っても良いのか?
「ほれ、魔犬の肉で良かったらやるよ」
「ワンッ!!」
こ、こいつ・・・食ってる・・・。
同族の肉を・・・?
こいつ本当に魔犬なのか?
魔犬じゃないんじゃないか?
「おい、お前本当に魔犬か?」
「ハフッ!!ハフッ!!」
食うのに夢中かよ・・・。
こいつ、もしかして魔犬の変異体じゃないか?
だとしたら相当珍しいな。
変異種なら何かの役に立つかもしれんな。
「おい、お前」
「ワンッ!!」
「此処で暮らす気はないか?」
「ワンッ!!」
OKらしい。
「じゃあお前は今日からシャイニングデストロイマジックスター1号だ!!」
「ワンッ!?」
嫌なのか。
そうだなぁ。
カツ丼食いたいなぁ。
カツ。
勝つ。
勝利。
ヴィクトリー。
「よしっ!!お前は今日からヴィクトリアだ!!」
「ワンッ!!」
これは有りなのか。
俺はその後暫くヴィクトリアと一緒にサバイバル生活をするのだった。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?
初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。
俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。
神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。
希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。
そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。
俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。
予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・
だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・
いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。
神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。
それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。
この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。
なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。
きっと、楽しくなるだろう。
※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。
※残酷なシーンが普通に出てきます。
※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。
※ステータス画面とLvも出てきません。
※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。
タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる