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2章覚醒と事件。

6話初エンカウント。

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俺は一人で歩いていた。婆さんに挨拶はしていないが、先生がうまいこと言うだろう。とにかく今は一番近いロードネス王国に向かっていた。
ロードネス王国には冒険者ギルドがあるし、治安もいい。最初の拠点として活動するにはうってつけだ。
そんなことを考えながら俺は街道を歩いていた。

「しかし、魔物が一匹も見当たらないなぁ・・・」

願わくば出会いたくないところだが。
魔物が居ない理由にも見当がついている。勇者と呼ばれる冒険者達の仕業である。
一般に勇者と呼ばれる人達と冒険者と呼ばれる人たちには大きな差はない。しいて言うなら勇者養成学校などに通っていたかどうかである。呼び方が正しいかどうかは分からないが、冒険者の中でもエリートとして位置しているのが勇者だろう。
それ故、一般の冒険者からはあまり好かれていなかったりする。なぜなら、勇者として冒険者登録をした人間は、増長することが多いからだ。その原因は授かりの儀で世界の意志から賜る武器とスキルのせいだろう。それほどまでに強力なのだ。本来は。
何で俺だけこんな武器なのかは俺でもよく分からない。

「何で俺だけ・・・」

何で俺だけ・・・このセリフを何度言ったかわからない。ゲシュタルト崩壊しそうだ。ナンデオレダケ。
新種のきのこみたいだ。
きっとろくなきのこじゃないだろう。
食ったら死にたくなるに違いない。

「しっかし遠いなぁ・・・」

街道は整えられているとはいえ、アスファルトなどと比べるとやはり歩きにくい。
もう半日は歩いただろうか?今だロードネス王国には着かない。

「最悪野宿かなぁ・・・嫌だなぁ・・・」

夜は魔物が活発になることが多いので一人では不安だ。これがパーティーなら順番で見張りの夜番をすれば良いのだが、あいにく俺にそんな仲間は居ない。
べ、別に寂しくなんて無いんだからね!?
いや、すいません。嘘つきました。めっちゃ寂しいです。

「独りぼっちは・・・寂しいもんな・・・」

なんかどっかで効いたこと在るようなセリフを吐きながら気を紛らわせる。

「いや、俺は一人じゃない。先生が付いてる。待っていてくれるんだ・・・」

空の彼方に先生がサムズアップしている気がした。

「先ずはスキルを確認しなきゃな」

スキルを確認するには冒険者ギルドに登録した上で鑑定を受けなければならない。しかしこの鑑定が存外に高いのだ。
なので冒険者は先ずは採集依頼などをして金をためてから鑑定を受けるのだ。
因みに今の俺の所持金では宿に何泊かするだけで限界が来るだろう。

「異世界転生ってもっとチートとか在るんじゃないの?」

気を抜くと愚痴をこぼしてしまうのでポジティブに行こう。

「俺はきっと良いスキル持ってる!!この武器だって何か使い道がある!!やれば出来る!!金持ちになる!!」
「有り金全部置いてきな!!」
「そう!!有り金全部・・・って・・・え?」

目の前には森から飛び出てきた盗賊が居た。
しかも一人だ。よほど自分の腕に自身があるのか。

「装備品もだよ!!早くしな!!」

女だった。それもかなりの美人だ。健康的なくすみのない小麦色の肌に明るめの腰まで在る茶髪を頭の後ろで纏めている。しなやかな四肢は長くスラっと伸びていて、細い。しかし、程よく筋肉がついており、引き締まっている。露出気味の服装により、くびれが惜しげも無く披露されており、その豊満な双丘は服の内側で窮屈そうにはちきれんばかりだ。サラシのように黒い布で胸を覆っており、同じ色のズボンを履いている。

「お前も・・・一人ぼっちなんだな・・・」
「は?おい、何だその目は?早くしな!!」
「強がる必要はないんだぞ?俺も一人だからさ・・・」
「だ・か・ら!!何の話をしてるんだよっ!?」
「そうか、じゃあ聞かせてやろう・・・」
「は?何をいきなり・・・」
「良いから聞け」
「ア、ハイ」

その後俺はいきなり現れたこの盗賊に今までのことを話し始めた。
今までみんなと一緒に頑張ってきた事。
幼なじみ二人と一緒に勇者になる約束をしていた事。
クラスメイトの事。
授かりの儀の事。
魔犬狩りの事。
裏切られた事。
話してる最中に自然と涙が流れてきて話し方にも熱が入る。
盗賊は最初は訝しげな顔をしていたが、話を聞いて行く内に、真剣な顔でうなずいてくれるように成った。

「でな?・・・仲間にな?・・・足でまといって言われて・・・それで・・・うぇ・・・うぇ・・・」
「分かった!!分かったからもう泣くなって!!ほら、もう大丈夫だから!!」
「でも・・・でもぉ・・・俺一人じゃあ・・・」
「よしっ!!ロードネス王国まで一緒についてってやる!!私がよく使う酒場があるから取り敢えず其処に行こう、な!?」
「・・・うぇ・・・ありがとう・・・」

こうして俺は出会ったばかりの知らない盗賊とロードネス王国を目指すのだった。
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