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3章勇者、本格始動。

25話オーブエン野外活動

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「国が違うだけでこうも環境が違うものか・・・」

ロッドは現在オーブエン近郊の森の中に来ていた。
目的は二つ、一つは依頼にあった薬草の採取、そして、もう一つは、ここら一帯の環境や魔物の種類を調べるためである。
オーブエンに寄ったものの、あまり長居する気はないのだが、それでもここでいくつか依頼をこなすならば周辺環境を調べたほうが今後が楽になるだろう。

「何て言うかジメジメしてるな・・・」

オーブエン近郊は木や地面が水の魔力を含んでいるのか常にジメジメしている。
そのため、水属性の装備品を作るならここの木はなかなかいい材料だと言えるだろう。
幸い、気温はさほど高くないので暑くは無いが、肌にまとわりつくようなジメジメした空気が流れていた。

「魔物も小型のカエルみたいなやつ以外は全然見かけないな」
「ワフッ!!」
「いや、食うの早いだろ・・・」

口の端に変えるの足をぶら下げて吠えるヴィクトリアを撫でながら周囲を見渡すも、目に入る生き物と言えば小指ほどの大きさの小さな角の生えたカエルの様な魔物だけ。
森の奥深くに入ればまた違うのだろうか。
どちらにせよ、この辺りならばさほど危険ではなさそうだ。

「実はこのカエルがとんでもない猛毒持ってたりしてな」
「!?」
「冗談だよ・・・半分な」

震えるヴィクトリアを更に脅かしながら先に進む。
そうするとちらほら薬草のようなものが見えて来た。

「しかし、この薬草、どこにでも生えてるよな」

正確に言えばこれは緑魔草、主にヒールポーションなどに使われる三角形の葉が特徴の植物だ。
味はほうれん草に似ていて、料理に使う事もある。
見渡す限りに生えているのはこの緑魔草のみ。
ロードネス王国の周りとはえらい違いだ。

「麻痺草が一本も見当たらないな・・・?」

そう言えばロードネス王国でも麻痺草だけが重点的に無くなっていたっけ。
あれは皮剥ぎが・・・勇者の皮を剥ぐために使ったのだと思っていたが・・・。

「やっぱりここでも摘まれた跡があるな」

どうせ麻痺草を採取するぐらいなら緑魔草も採取して依頼を達成してくれればいいのに。
と、考えるとこの麻痺草を摘んでいったのは冒険者では無い可能性が出て来たな。

何となく面倒事の気配を感じつつ、ロッドは緑魔草を摘んでいったんギルドに変えることにした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「また絡まれたりしないよね・・・?」

ロッドは恐る恐るギルドの扉を押し開く。
仮面のせいで人の注目を引くのには慣れたが、特定の個人に因縁を付けられるのは初めての事なので少々戸惑う。
なるべく他の人と目を合わせないようにして受付へ・・・。

「わーお・・・」

いるよいるいる目の前に!!
受付に向かおうとしていたロッドの目の前にはいつの間にかあの時絡んできた四人組が行く手を遮るように立ちふさがっていた。

「す、すいませ」
「すまなかった」
「は?」

すいません通りますと言おうとしたロッドにリーダー格っぽい男がかぶせてくる。

「あの時はすまなかった。俺たちはお前を見誤ってたみたいだ」
「な、何で」
「いや、実はな・・・俺たち、もとい、このギルドにはな、『負け犬』はS級冒険者の手柄を横取りしただけの奴だって噂が流れててな・・・そんな奴が俺達と同じC級に昇格したと思ったら腹が立ってな・・・すまなかった」
「そ、そんな噂が・・・」
「あぁ、負け犬は人の金で飯を食いスリもすればやばいブツの運び屋まがいの事もするし酒を飲んでは寝ゲロをすると・・・」
「言い過ぎだろ!!泣くぞ!!」

何かある事無い事言われているが後半はヤスとリフィルだろ・・・。

「まぁ、それも嘘だとわかったしな。噂通りの屑野郎ならあそこまで動けるわけがねぇ・・・もっとも、わざと自分の悪評を流して相手の油断を誘うって方法もあるっちゃあるが・・・まさかお前さんがそんな事をするとは思えねぇ」
「はははは、倒した後に謝りながら逃げるような奴だもんな」
「言えてる、見るからに気が弱そうだもんな」
「う、うっせえし!!やめろよ、褒めるんなら褒めてくれ!!そんで貶さないでくれ!!」
「そーゆーとこだと思うぞ」

くっ・・・!!
まだ出会って二回目の奴にここまで言われるとは・・・くっ、悔しい!!

「まぁそんなわけで済まなかった。俺達にも軽く自己紹介させてくれ」
「お、おう」

順番にリーダーがカシラ、狩人のカリュード、戦士のファイ、盗賊のトゥーザク・・・。
まんまじゃね?

「ってわけで疑って悪かったよ、今度なんか奢らせてくれや」
「ありがとう」
「あ、それと、何だかんだで一人じゃ大変そうだからな。この国で活動するときに人手が足りなくなったらいつでもうちのパーティーに加入してくれてもかまわないぞ」
「あ、それは助かるな」
「おう、じゃあな」
「これから依頼なのか?」
「あぁ、何でも最近森の奥の方に魔物が沸いてるらしくてな」

森の奥、俺はまだ奥深くまで行っていないがどんな魔物がいるのだろう?

「森では小さなカエルしか見かけなかったんだが」
「あぁ、そりゃ入り口だからだ。あの森のもっと奥の方に行くとな、馬鹿でけぇ湖があってな。今回魔物が沸いてるのはその付近から奥の辺りらしいんだ。歩く魚とかがうじゃうじゃしてる」
「へぇー」
「着いて来るか?」
「いや、良いよ。何か今日は疲れた」
「はは、まぁ、あの森に行くには湿気対策が万全じゃねぇとな。俺達なんかはこいつを服の中や靴の中に入れてるぐらいだ」

カシラが渡してきたのは一枚の小さなスポンジのような板だった。

「これは?」
「それは砂漠の地方にいる魔物の素材なんだが、周りの湿気を吸ってくれるんだ。一枚やるよ」
「あ、ありがとう」

ロッドはそれをヴィクトリアが食べないように皮袋に入れて胸ポケットにしまうと、礼を言って歩き出した。

「宿探しか?」
「あぁ」
「それならこの通りをまっすぐ言った所に青い看板の宿屋がある。あそこは安いし綺麗だから便利だぞ」
「おぉ、ありがとう」

ロッドは背を向けてギルドを出て歩き出す。
こうしてロッドは目まぐるしいオーブエン滞在初日を終えたのだった。
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