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第十五話 口論②
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呆れる俺を横目に、青髪はなおも苦しい言い訳を続ける。
「ネル様。私、寂しかったんです。ネル様はお仕事が忙しくてなかなか私に構ってくださらなかったから……」
「はぁ? ネルトニアのせいにすんなよ。お前本当最低だな」
俺が口を挟むと、青髪はギロリとこちらを睨んだ。
「黙れ! ネル様、どうか許してください。もう二度と愚かな行いはしないと誓います」
そう言ってポロポロと涙をこぼした。
普通の男だったら、駆け寄って慰めたくなるような美しい泣き顔だった。だが、ネルトニアはしらけたような表情でそれを見ている。
「……君のことは、もう本当に好きじゃないんだ。だから、いちいち俺に誓わなくていいぞ。それよりもう二度と俺の前に現れないでくれ。昔付き合っていた恋人がうろちょろしていたら、フォルンさんが気分を悪くするだろう?」
「そんな言い方……酷いです、ネル様」
あーもうイライラすんぜ! お前の方がずっと酷いことしたんだよ! グチグチ言い訳しやがって!
俺は堪忍袋の緒が切れた。
ネルトニアを押しのけて、ずいと青髪の前に立つ。
すると、敵意剥き出しで青髪が睨んできた。
俺も睨み返すと、ネルトニアを指差しながら叫んだ。
「ゴチャゴチャうるせーんだよ!! コイツは俺の男だ!! 手ェ出したらぶっ飛ばすからな!!」
俺の啖呵があまりにもデカい声だったので、その場はシーンと静まり返った。
あれ? ちょっと言い過ぎたかな? と思っていたら、ネルトニアにひしっと抱き付かれた。
「フォルンさん、カッコいいです。さすがはフォルンさんです」
いや……別にカッコ良くはないけどな……。と言うか、よく考えると恥ずかしいことを言っちまったな。
だんだん照れ臭くなってきた俺は、誤魔化すように『ふんっ』と鼻を鳴らしてネルトニアから視線を逸らした。
そんな俺たちを見ながら、青髪はギリギリと歯を鳴らす。
「ふ、ふざけるな! 貴様にそんなこと言われる筋合いは――」「アーリヤ。もうやめろよ」
青髪の言葉をさえぎって、さっきから黙っていたイリヤがポツリとつぶやいた。
イリヤはしょんぼりしながら話を続ける。
「ネル様に謝って、潔く身を引けよ。今のお前、凄くカッコ悪いぞ?」
青髪の顔が醜く歪む。
「イリヤ……! お前、どっちの味方なんだ!?」
「ネル様の味方に決まってんだろ。お前の味方なんかいねーよ」
「……!」
イリヤは俺とネルトニアの方へ身体を向けると、ペコリと頭を下げた。
「ネル様。それにフォルンさん。コイツは僕が責任を持って連れて帰ります。ご迷惑おかけしてすみませんでした」
いや……。別にイリヤは悪くねーんだけどな。
俺とネルトニアは拍子抜けしたように顔を見合わせた。
すると、イリヤが青髪の腕を掴んだ。そのままグイグイ引っ張って外に連れ出そうとする。
「離せ! 私はまだネル様にお話がある!」
抵抗する青髪に向かって、イリヤが叫んだ。
「いい加減にしろよ!!」
イリヤの大声に、青髪はビクッと身体を震わせた。
「アーリヤ……。もっとプライドを持てよ……。それでも誇り高き魔法研究所の職員か? 俺、もうお前と友達やめたいよ。これ以上情けない姿見せんなよ……」
「……。だって……だって……」
そう言って青髪はその場にうずくまった。顔に両手を当てて、シクシクとすすり泣いている。
そんな青髪を、イリヤは痛ましいものを見るような目で見つめた。
「どんなに後悔しても、もう遅いんだよ。ネル様のことは諦めろ。本気でネル様のことを愛してるなら、身を引いてあげろよ。それがネル様のためなんだ……」
「……」
イリヤの言葉が効いたのか、青髪はそれ以降口を閉ざした。ただ静かに泣きながら、イリヤに手を引かれて帰って行ったのだった。
「ネル様。私、寂しかったんです。ネル様はお仕事が忙しくてなかなか私に構ってくださらなかったから……」
「はぁ? ネルトニアのせいにすんなよ。お前本当最低だな」
俺が口を挟むと、青髪はギロリとこちらを睨んだ。
「黙れ! ネル様、どうか許してください。もう二度と愚かな行いはしないと誓います」
そう言ってポロポロと涙をこぼした。
普通の男だったら、駆け寄って慰めたくなるような美しい泣き顔だった。だが、ネルトニアはしらけたような表情でそれを見ている。
「……君のことは、もう本当に好きじゃないんだ。だから、いちいち俺に誓わなくていいぞ。それよりもう二度と俺の前に現れないでくれ。昔付き合っていた恋人がうろちょろしていたら、フォルンさんが気分を悪くするだろう?」
「そんな言い方……酷いです、ネル様」
あーもうイライラすんぜ! お前の方がずっと酷いことしたんだよ! グチグチ言い訳しやがって!
俺は堪忍袋の緒が切れた。
ネルトニアを押しのけて、ずいと青髪の前に立つ。
すると、敵意剥き出しで青髪が睨んできた。
俺も睨み返すと、ネルトニアを指差しながら叫んだ。
「ゴチャゴチャうるせーんだよ!! コイツは俺の男だ!! 手ェ出したらぶっ飛ばすからな!!」
俺の啖呵があまりにもデカい声だったので、その場はシーンと静まり返った。
あれ? ちょっと言い過ぎたかな? と思っていたら、ネルトニアにひしっと抱き付かれた。
「フォルンさん、カッコいいです。さすがはフォルンさんです」
いや……別にカッコ良くはないけどな……。と言うか、よく考えると恥ずかしいことを言っちまったな。
だんだん照れ臭くなってきた俺は、誤魔化すように『ふんっ』と鼻を鳴らしてネルトニアから視線を逸らした。
そんな俺たちを見ながら、青髪はギリギリと歯を鳴らす。
「ふ、ふざけるな! 貴様にそんなこと言われる筋合いは――」「アーリヤ。もうやめろよ」
青髪の言葉をさえぎって、さっきから黙っていたイリヤがポツリとつぶやいた。
イリヤはしょんぼりしながら話を続ける。
「ネル様に謝って、潔く身を引けよ。今のお前、凄くカッコ悪いぞ?」
青髪の顔が醜く歪む。
「イリヤ……! お前、どっちの味方なんだ!?」
「ネル様の味方に決まってんだろ。お前の味方なんかいねーよ」
「……!」
イリヤは俺とネルトニアの方へ身体を向けると、ペコリと頭を下げた。
「ネル様。それにフォルンさん。コイツは僕が責任を持って連れて帰ります。ご迷惑おかけしてすみませんでした」
いや……。別にイリヤは悪くねーんだけどな。
俺とネルトニアは拍子抜けしたように顔を見合わせた。
すると、イリヤが青髪の腕を掴んだ。そのままグイグイ引っ張って外に連れ出そうとする。
「離せ! 私はまだネル様にお話がある!」
抵抗する青髪に向かって、イリヤが叫んだ。
「いい加減にしろよ!!」
イリヤの大声に、青髪はビクッと身体を震わせた。
「アーリヤ……。もっとプライドを持てよ……。それでも誇り高き魔法研究所の職員か? 俺、もうお前と友達やめたいよ。これ以上情けない姿見せんなよ……」
「……。だって……だって……」
そう言って青髪はその場にうずくまった。顔に両手を当てて、シクシクとすすり泣いている。
そんな青髪を、イリヤは痛ましいものを見るような目で見つめた。
「どんなに後悔しても、もう遅いんだよ。ネル様のことは諦めろ。本気でネル様のことを愛してるなら、身を引いてあげろよ。それがネル様のためなんだ……」
「……」
イリヤの言葉が効いたのか、青髪はそれ以降口を閉ざした。ただ静かに泣きながら、イリヤに手を引かれて帰って行ったのだった。
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