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第十三話 告白
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メガネたちが店の中で話をしている間、俺はイリヤと一緒に外で待っていた。
十分位経った頃だろうか? 突然入り口のドアが開き、中から青髪が出てきた。俺は青髪の顔を見てギョッとした。青髪は泣いていたのだ。俺と目が合うと恥じるようにうつむき、そのまま外に走っていってしまった。
「アーリヤ!」
イリヤが慌ててあとを追いかける。
二人が見えなくなってから、俺は店内を確認する。
店内には、苦い表情をしたメガネが椅子にもたれかかっていた。
俺は店内に入っていき、メガネに声をかけた。
「話はついたのか?」
メガネはこちらを向くと、疲れたような声で『いいえ……』とつぶやいた。
「やり直したいと言われました。俺のことが好きだから諦めたくない……と」
それだけ言うと、メガネは苦笑いを浮かべた。
「すみません。フォルンさんは事情を知らないのに、こんなことを言われても困りますよね」
「いいや、イリヤから聞いたぞ。お前ら恋人同士だったんだろ? だけど青髪の浮気が原因で別れた。メガネは失恋のショックから仕事を辞めて実家に帰って来たんだな?」
メガネは知られたくなかったのが、イリヤたちが走って行った方角を睨み、『イリヤめ……。余計なことを……』とつぶやいた。
「イリヤは悪くないぞ。俺がしつこく聞いたんだ」
「そう……ですか」
メガネはそれだけ言うと、恥じるように頰をかいた。
「はは……。いい歳したおっさんが情け無いですよね。あんな若い子に夢中になって……。しかも、浮気されたくらいで別れて、仕事まで辞めてしまうなんて」
「……」
俺はメガネのところまで歩いて行き、ポンポンと頭を撫でてやった。
「恋に年齢は関係ないぞ。仕事を辞めるほどショックだったなんて、よっほど青髪のことが好きだったんだな」
「……」
「でも、立ち直ったんだろ? だってメガネ、今は俺に夢中だもんな?」
そう言ってバチンとウィンクをすると、メガネはぽかーんと口を開けた。だが、徐々に表情が緩んでゆきクスクスと笑い始めた。
「そうです。今はフォルンさんに夢中なんです。だってフォルンさんって、とても魅力的な人だから」
「へへ。そうだろう? メガネ、俺のどこが好きなのか言ってみろよ」
メガネは恥じることもなく、スラスラと言葉を口にした。
「そうですねぇ。まずは、美しいところですね。銀色に輝く髪も、宝石のような金色の瞳も、見る者がハッとするような整った顔立ちも、豹のようにしなやかな身体も、全てが美しく、俺の心を魅了します」
「なんだよメガネ。俺の見た目だけが好きなのか?」
「いいえ。まだまだありますよ。自由奔放なところ。パンケーキを作るのがとても上手なところ。明るい性格なところ。口が悪いところ。いやらしいことが大好きなところ。お喋りが好きなところ。なんでも適当なところ。……ふふ。俺はフォルンさんの全てが好きなのです。フォルンさんといると、フワフワした気持ちになります。まるで若い時にした初恋のようです」
メガネの言葉に気を良くした俺は、へへっと笑ってメガネの膝の上に乗っかった。
「メガネ本当、俺のこと大好きだな」
「はい。大好きです」
ふふ……。メガネは本当可愛いぜ。若くてもおっさんでも可愛い。こんなに愛情深い恋人がいるのに浮気するなんて、青髪はバカだなぁー。
俺ならメガネを大事にするのに。
浮気なんてしない。ずっとずっとメガネだけを見ててやるのに。
そんなことを考えて、俺は苦笑いを浮かべた。
あーあ。気付いちまったぜ、自分の気持ちに。
俺は、メガネに惚れていているのだ。
最初は面白いから揶揄っているだけだった。だけど、メガネの優しいところとか誠実なところを知るたびに、どんどん好きになっていった。もちろんセックスが上手いところも高評価だ。
メガネの性格も好き。顔も好き。セックスも好きとなれば、もう満点だろ。こんないい男、恋人にしない手はない。
俺は顔を上げ、穏やかに微笑むメガネの頰に、チュッとキスをした。
「俺の負けだ。どうやら俺は、お前のことが好きになっちまったらしい」
俺の突然の告白に、メガネは大いに驚いた。目を大きく見開き、『え? え?』とつぶやいている。
その翡翠色の瞳を見ながら、俺はニッと笑った。
「お前の恋人になってやるよ。セフレじゃない。本物の恋人同士だ。いいだろう? ネルトニア」
「な、名前っ……!」
ネルトニアの顔が真っ赤になった。
恐らく俺がメガネではなく、初めて名前で呼んだからだろう。
「そうかそうか。そんなに名前を呼んでやったのが嬉しいのか。可愛いなぁ、ネルトニアは」
俺はそう言って、わしわしとネルトニアの頭を撫でてやったのだった。
十分位経った頃だろうか? 突然入り口のドアが開き、中から青髪が出てきた。俺は青髪の顔を見てギョッとした。青髪は泣いていたのだ。俺と目が合うと恥じるようにうつむき、そのまま外に走っていってしまった。
「アーリヤ!」
イリヤが慌ててあとを追いかける。
二人が見えなくなってから、俺は店内を確認する。
店内には、苦い表情をしたメガネが椅子にもたれかかっていた。
俺は店内に入っていき、メガネに声をかけた。
「話はついたのか?」
メガネはこちらを向くと、疲れたような声で『いいえ……』とつぶやいた。
「やり直したいと言われました。俺のことが好きだから諦めたくない……と」
それだけ言うと、メガネは苦笑いを浮かべた。
「すみません。フォルンさんは事情を知らないのに、こんなことを言われても困りますよね」
「いいや、イリヤから聞いたぞ。お前ら恋人同士だったんだろ? だけど青髪の浮気が原因で別れた。メガネは失恋のショックから仕事を辞めて実家に帰って来たんだな?」
メガネは知られたくなかったのが、イリヤたちが走って行った方角を睨み、『イリヤめ……。余計なことを……』とつぶやいた。
「イリヤは悪くないぞ。俺がしつこく聞いたんだ」
「そう……ですか」
メガネはそれだけ言うと、恥じるように頰をかいた。
「はは……。いい歳したおっさんが情け無いですよね。あんな若い子に夢中になって……。しかも、浮気されたくらいで別れて、仕事まで辞めてしまうなんて」
「……」
俺はメガネのところまで歩いて行き、ポンポンと頭を撫でてやった。
「恋に年齢は関係ないぞ。仕事を辞めるほどショックだったなんて、よっほど青髪のことが好きだったんだな」
「……」
「でも、立ち直ったんだろ? だってメガネ、今は俺に夢中だもんな?」
そう言ってバチンとウィンクをすると、メガネはぽかーんと口を開けた。だが、徐々に表情が緩んでゆきクスクスと笑い始めた。
「そうです。今はフォルンさんに夢中なんです。だってフォルンさんって、とても魅力的な人だから」
「へへ。そうだろう? メガネ、俺のどこが好きなのか言ってみろよ」
メガネは恥じることもなく、スラスラと言葉を口にした。
「そうですねぇ。まずは、美しいところですね。銀色に輝く髪も、宝石のような金色の瞳も、見る者がハッとするような整った顔立ちも、豹のようにしなやかな身体も、全てが美しく、俺の心を魅了します」
「なんだよメガネ。俺の見た目だけが好きなのか?」
「いいえ。まだまだありますよ。自由奔放なところ。パンケーキを作るのがとても上手なところ。明るい性格なところ。口が悪いところ。いやらしいことが大好きなところ。お喋りが好きなところ。なんでも適当なところ。……ふふ。俺はフォルンさんの全てが好きなのです。フォルンさんといると、フワフワした気持ちになります。まるで若い時にした初恋のようです」
メガネの言葉に気を良くした俺は、へへっと笑ってメガネの膝の上に乗っかった。
「メガネ本当、俺のこと大好きだな」
「はい。大好きです」
ふふ……。メガネは本当可愛いぜ。若くてもおっさんでも可愛い。こんなに愛情深い恋人がいるのに浮気するなんて、青髪はバカだなぁー。
俺ならメガネを大事にするのに。
浮気なんてしない。ずっとずっとメガネだけを見ててやるのに。
そんなことを考えて、俺は苦笑いを浮かべた。
あーあ。気付いちまったぜ、自分の気持ちに。
俺は、メガネに惚れていているのだ。
最初は面白いから揶揄っているだけだった。だけど、メガネの優しいところとか誠実なところを知るたびに、どんどん好きになっていった。もちろんセックスが上手いところも高評価だ。
メガネの性格も好き。顔も好き。セックスも好きとなれば、もう満点だろ。こんないい男、恋人にしない手はない。
俺は顔を上げ、穏やかに微笑むメガネの頰に、チュッとキスをした。
「俺の負けだ。どうやら俺は、お前のことが好きになっちまったらしい」
俺の突然の告白に、メガネは大いに驚いた。目を大きく見開き、『え? え?』とつぶやいている。
その翡翠色の瞳を見ながら、俺はニッと笑った。
「お前の恋人になってやるよ。セフレじゃない。本物の恋人同士だ。いいだろう? ネルトニア」
「な、名前っ……!」
ネルトニアの顔が真っ赤になった。
恐らく俺がメガネではなく、初めて名前で呼んだからだろう。
「そうかそうか。そんなに名前を呼んでやったのが嬉しいのか。可愛いなぁ、ネルトニアは」
俺はそう言って、わしわしとネルトニアの頭を撫でてやったのだった。
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