ラテアート

ミユー

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ラテアート

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会社員の女性、森実果もりみかは疲れていた。
仕事は残業続き。
年齢的に、上と下にはさまれ、しっかりしないといけない。
下には頼られ、上にはもう甘えられない。
疲れで、いらいらしやすくなり、自分にかける時間がなくなり、心もからだもずたずただった。
そんな姿を見られ、恋人にふられてしまった。
恋人はイケメンで仕事ができて誰からもうらやましがられる人だった。
実果は有頂天になっていたので、まわりの人に恋人にふられたと言えず、まだつきあっているふりをした。

ある日、会社帰りに新しくできたカフェに寄った。
家に帰る前にちょっと休みたかったのだ。
カフェに入って、メニューを見ると、ラテアートの飲み物があった。
実果はラテアートのなかの動物の絵を選んで注文した。
運ばれてきた、熊のかわいい絵が描かれたカフェラテを見ると、心が癒された。
飲むのがもったいないくらい、と思いながらカフェラテを飲むと体が芯からあたたまり、仕事の疲れや恋人にふられた心の傷が癒された。

実果は仕事帰り、カフェに毎日通うことにした。
すると、翌日、笑顔で出社できるようになった。
いつもたいへんだと思うことも軽くかわせるようになり、仕事は苦労が多いけれど自分と一緒に働いてくれる人達にはめぐまれているな、と感謝の気持ちも沸きあがってきた。
まわりに恋人にふられたと言える勇気もでてきた。
にこにこして過ごすうちにすごくもてるようになった。
けれど、有頂天にならずに、冷静を保った。
イケメンの恋人にふられたときに得た教訓だった。

実果はカフェに通ううちに自分もラテアートができるようになりたいと思うようになった。
自分が癒されて、人生が楽しくなったように、人を癒したいと思うようになってきたのだ。
ラテアートのスクールに通い、カフェを開く夢もでてきた。
生き生きして生活していると、新しい恋人もできた。
恋人は誰にもやさしく接する、明るいタイプの男性だった。
数年後、恋人の応援もあって、夢が叶いラテアートのカフェのオーナーになることができた。
カフェは連日、お客さんでいっぱいになった。
実果は思った。
ラテアートに出逢えてよかった。
つらいこともあったけど、それは偶然ではなくて、こうなるための必然だったんだ、と。



END
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