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<最終章:己が世界を支配せよ>
真に自分を見出したあいつらなら
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体の下から、空気が滝のように流れてくる。ビルの窓が俺達を反射しているけれど、他の景色はけたたましく映り変わっている。これが紐無しバンジーの感覚か。その新感覚を味わいながら次なる手を考えていると、風切音に紛れて優が叫んでいた。
「なんであいつらに任せた!? 相当強いだろあの竜人! 俺達がいた方が――」
「自分の友達を信じろ! 大丈夫だ、あいつらなら絶対にやり遂げる」
「――根拠は何だ?」
風にまみれてよく聞こえなかったけれど、ユウの知りたいことはよくわかっていた。友を想うからこそ心配で、だから放っておけない。そういう気持ちは理解できる。
「竜人リュウコ、あいつは確かに強いんだろう、人間離れした(半分人間じゃないけれど)戦闘能力と竜の特性を活かした攻撃は苦戦を強いる。しかしそれを操るあいつの心がまだまだ未熟だ」
「心が未熟?」
「あいつは、皆が選択しない選択を敢えてすることで、自分が特別であることを自分自身に暗示しているんだ。だからこそクルミの侵攻にもついて来なかったんだ」
「それは、確率が低いからこそ言い当てるという、あいつの能力じゃないのか?」
「多分それはあいつのパーソナリティに引っ張られた能力なんだろう。心が強ければ強いほど魔法は安定する。その強さというのは時に周囲とは違う選択になるだろうけれど、それは結果論でしかない。自分が論理的に正しいと分かっているから選択するってだけ。そもそも皆の選択なんて見ちゃいないのさ」
だが、と俺は1拍子間を開けてから言い直す。
「あいつは皆の選択を見て、そこから自分の選択をし直している。それが正しいのかどうかではなく、『皆とは違うかどうか』で選択しているに過ぎない。そしてその目的が『自分で自分を特別な存在だと思いたい』ってことさ」
「なるほど、そこに突け入る隙があり、それを突けるのが、モブだと言われていたあいつらってことか」
「そう。確かにあの竜人は強いだろう、だがあいつらならやれる。今までなら厳しかったかもしれないが、真に自分を見出したあいつらなら」
周囲に気を遣うことを止めて、自分の興味のままに魔法を探求するマサト。
人々と距離を取ることで、自分が本来したかった『武器職人』の道を見定めたナイツ。
周囲の環境、人間によって魔法使いをしいられたが、その圧力に抵抗して拳を握ったサナ。
「あいつらならやれる。俺達は俺達のやるべきことをするんだ」
俺は落ちながらビルの屋上を見上げた。炎が仕切りに飛び散るのは、今も尚戦っているということなのだろう。任せたぞ。口には出さず心で呟いていると、俺の視線を遮ってユウが顔をひきつらせた。
「なぁ、それはそうと、俺達はどうするんだ? お前まさか飛べたりするんだろうな? 竜上に置いてってったしよ」
「ん? ああ、そこは心配いらねぇ」
俺はポケットにあるアイテムボックスから、紙飛行機を取り出した。それを取り落とすまいとしっかり握りしめる。
「これを巨大化させて、ハングライダーにできる。それで飛ぶことは可能だ。そこは安心してくれていいぜ。抜かりはない」
「じゃあそろそろ飛ぼうぜ! 地面が結構近づいてきたしよ!」
あわあわと声を荒げてユウが言う。仕方がないなぁ、だが急にハングライダーを開くと、俺だけ飛んでユウを置いていくことになりかねない。だから決め事をすることにした。
「じゃあ、いっせーのーで、で開く。いいな?」
「え? いっせーの? で? の? ちょどっちか分かんねぇよ、いっせーので、のでで飛ぶのか?」
「あ? のでので? 何言ってんだよ。いやだから、いっせーのーでって」
「のなのかでなのか! わっかんねぇって!」
「あ、さっきのでは助詞のでであって、のでのので開くんだ、では助詞だぞ?」
「女子? 今は女の話なんてどうだっていいだろうが!」
「女子じゃない! 助詞だ!」
「ちょヤバいって! もう落ちるってマジで!」
「分かった開くぞ! はいせーのっ!」
俺は手に持つ紙飛行機に魔力を注ぎ込み、空気を受けて空を飛ぶ紙飛行機の本質を理解する。そして勇者に片足を掴まれながら、空をふらふらと浮いた。
「でじゃねーのかよぉぉぉーーーーー……」
* * *
ステージに向けて準備を整えるため、楽屋は煌めく光で満ちていた。鏡の前に立つ彼女は、一つ一つの仕草が優雅で、それはまるで芸術のようだった。白いドレスが優美に揺れ、彼女の輝く笑顔が鏡に映り込む。
彼女は指先で微細な修正を施す。細やかな仕上げにこだわり、髪の毛一本ひとつが完璧に整えられていく。その間、メイクアップのアーティストが彼女の肌に軽やかなタッチでメイクを施していく。
「もうすぐ出番ですよ」とスタッフが声を掛けると、彼女は自信に満ちた微笑みを浮かべる。最後の仕上げを施した彼女は、準備が整ったことを実感し、輝くための準備が整ったのだ。
彼女の目は情熱と喜びで輝き、心地よい緊張感がスタジオを満たす。彼女は生放送の画面の向こう側にいるファンの待つ喝采の中で、そのスター性を披露するため、一歩を踏み出した。
「さぁ、バズりましょう」
白き杖を携えて。
神官メアリーは立ちはだかる。
「なんであいつらに任せた!? 相当強いだろあの竜人! 俺達がいた方が――」
「自分の友達を信じろ! 大丈夫だ、あいつらなら絶対にやり遂げる」
「――根拠は何だ?」
風にまみれてよく聞こえなかったけれど、ユウの知りたいことはよくわかっていた。友を想うからこそ心配で、だから放っておけない。そういう気持ちは理解できる。
「竜人リュウコ、あいつは確かに強いんだろう、人間離れした(半分人間じゃないけれど)戦闘能力と竜の特性を活かした攻撃は苦戦を強いる。しかしそれを操るあいつの心がまだまだ未熟だ」
「心が未熟?」
「あいつは、皆が選択しない選択を敢えてすることで、自分が特別であることを自分自身に暗示しているんだ。だからこそクルミの侵攻にもついて来なかったんだ」
「それは、確率が低いからこそ言い当てるという、あいつの能力じゃないのか?」
「多分それはあいつのパーソナリティに引っ張られた能力なんだろう。心が強ければ強いほど魔法は安定する。その強さというのは時に周囲とは違う選択になるだろうけれど、それは結果論でしかない。自分が論理的に正しいと分かっているから選択するってだけ。そもそも皆の選択なんて見ちゃいないのさ」
だが、と俺は1拍子間を開けてから言い直す。
「あいつは皆の選択を見て、そこから自分の選択をし直している。それが正しいのかどうかではなく、『皆とは違うかどうか』で選択しているに過ぎない。そしてその目的が『自分で自分を特別な存在だと思いたい』ってことさ」
「なるほど、そこに突け入る隙があり、それを突けるのが、モブだと言われていたあいつらってことか」
「そう。確かにあの竜人は強いだろう、だがあいつらならやれる。今までなら厳しかったかもしれないが、真に自分を見出したあいつらなら」
周囲に気を遣うことを止めて、自分の興味のままに魔法を探求するマサト。
人々と距離を取ることで、自分が本来したかった『武器職人』の道を見定めたナイツ。
周囲の環境、人間によって魔法使いをしいられたが、その圧力に抵抗して拳を握ったサナ。
「あいつらならやれる。俺達は俺達のやるべきことをするんだ」
俺は落ちながらビルの屋上を見上げた。炎が仕切りに飛び散るのは、今も尚戦っているということなのだろう。任せたぞ。口には出さず心で呟いていると、俺の視線を遮ってユウが顔をひきつらせた。
「なぁ、それはそうと、俺達はどうするんだ? お前まさか飛べたりするんだろうな? 竜上に置いてってったしよ」
「ん? ああ、そこは心配いらねぇ」
俺はポケットにあるアイテムボックスから、紙飛行機を取り出した。それを取り落とすまいとしっかり握りしめる。
「これを巨大化させて、ハングライダーにできる。それで飛ぶことは可能だ。そこは安心してくれていいぜ。抜かりはない」
「じゃあそろそろ飛ぼうぜ! 地面が結構近づいてきたしよ!」
あわあわと声を荒げてユウが言う。仕方がないなぁ、だが急にハングライダーを開くと、俺だけ飛んでユウを置いていくことになりかねない。だから決め事をすることにした。
「じゃあ、いっせーのーで、で開く。いいな?」
「え? いっせーの? で? の? ちょどっちか分かんねぇよ、いっせーので、のでで飛ぶのか?」
「あ? のでので? 何言ってんだよ。いやだから、いっせーのーでって」
「のなのかでなのか! わっかんねぇって!」
「あ、さっきのでは助詞のでであって、のでのので開くんだ、では助詞だぞ?」
「女子? 今は女の話なんてどうだっていいだろうが!」
「女子じゃない! 助詞だ!」
「ちょヤバいって! もう落ちるってマジで!」
「分かった開くぞ! はいせーのっ!」
俺は手に持つ紙飛行機に魔力を注ぎ込み、空気を受けて空を飛ぶ紙飛行機の本質を理解する。そして勇者に片足を掴まれながら、空をふらふらと浮いた。
「でじゃねーのかよぉぉぉーーーーー……」
* * *
ステージに向けて準備を整えるため、楽屋は煌めく光で満ちていた。鏡の前に立つ彼女は、一つ一つの仕草が優雅で、それはまるで芸術のようだった。白いドレスが優美に揺れ、彼女の輝く笑顔が鏡に映り込む。
彼女は指先で微細な修正を施す。細やかな仕上げにこだわり、髪の毛一本ひとつが完璧に整えられていく。その間、メイクアップのアーティストが彼女の肌に軽やかなタッチでメイクを施していく。
「もうすぐ出番ですよ」とスタッフが声を掛けると、彼女は自信に満ちた微笑みを浮かべる。最後の仕上げを施した彼女は、準備が整ったことを実感し、輝くための準備が整ったのだ。
彼女の目は情熱と喜びで輝き、心地よい緊張感がスタジオを満たす。彼女は生放送の画面の向こう側にいるファンの待つ喝采の中で、そのスター性を披露するため、一歩を踏み出した。
「さぁ、バズりましょう」
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